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東浩紀
幻冬舎 2014-08-01 |
表題のようないらだちを感じたから読んだ、というわけではなくて、Twitterで紹介されていた次の記事を読んだのです。
» キーパーソンインタビュー:「弱いつながり」出版 「偶然である出生から考えたい」 東浩紀さん
私は東浩紀さんという方を今までまったく存じ上げませんでした。Twitterでフォローしたことはあったのですが、あまりのタイムラインの数に圧倒され、そのまま静かにフォローを外したような気がします(よく覚えていないのですが)。
それが、上記インタビューを読んでみて、言葉の使い方が自分のそれとちょっと違っているので、よく理解できないところも多かったのですが、そのわりに同意できない部分はほぼなかったので、これなら本を読んでもすんなり読めると思って買って読んでみたところ、すんなり読めました。
さすがに文章がうまいです。達人というようなレベルのため、あっという間にスイスイ読み進めていくことができてしまい、読む速度があまりに速くなるため、何となく考えずに読んでしまうという難しさがあります。
しかしよくよく考えてみると、もっと時間をかけて考えてみないと、必ずしも納得できないところが出てきます。そういうところが概して文の読みやすさと比例せず、難しいことが書いてあるので、再読してむしろ深みにはまります。
誤解もあるようですが、僕はこの本の中で、たしかに旅が大事だと主張していますが、「百聞は一見にしかず」だから旅が大事だという話はしていません。ネットよりもリアルを見るほうが大事だよね、という話は実は一切していないのです。現地を見ても、ネットと大して変わらないこともあるし、単に事実関係を調べたいだけなら今後もグーグルアース(http://www.google.co.jp/intl/ja/earth/)のような技術が発展するだろうし、現場までわざわざ行く必要はない。
そうではなくて、僕が大事だと言っているのは、現地に行くというプロセス=「経路」なのです。旅をするとは時間の投資です。一定の時間が投資され、その間無駄なことを考える。実はそれこそが大事だということなのです。だから、ネットの発展で究極のバーチャルリアリティーが実現されたとしても、僕は旅に行くべきだと思っています。行くことそのものが目的だからです。
ネットは本質的に距離を無くすメディアです。だからネットの裏をかくためには、経路を確保し、距離を作り出す必要があるのです。
ここで言っていることは確かに明瞭ですが、そうは言っても今はネットもたいていの人にとって相当ノイズだらけです。聞いてみないと分かりませんが、調べていることとまったく関係ないところに行き着いて、そこで大量の時間を費やしているという人がかなりいるはずです。
ただ「ネットサーフィン」というのは非常に不思議な活動で、自身の精神的状態と精神的傾向を、奇妙なくらいよく反映しがちです。一見いろんなノイズに導かれていろんなところを飛び回っているようでも、気がつくと似たようなところをグルグル回っている感覚に陥ったことは、たぶん1000回はあります。
東さんが言っているのは、そういう閉ざされたネットの迷宮から自力で抜け出すのはとても難しいということなのだろうと解釈しました。自力で抜け出せないから、他力、つまり環境の変化を利用して、同じ堂々めぐりをするのでも別のところでやったらどうかと提案しているのです。
国境を越えると、言語も変わるし、商品名や看板を含めて自分を取り巻く記号の環境全体がガラリと変わる。だから、海外に行くと、同じようにネットをやっていても見るサイトが変わってくる。最初の一日、二日は日本の習慣でツイッターや朝日新聞のサイトを見ていても、だんだんそういうもの全体がどうでもよくなっていく。そして日本では決して見ないようなサイトを訪れるようになっていく。
つまり環境を変えればこれといった努力なしに(海外に行くのは1つの努力だという気はしますが)「別人」になることができ、しかも別人になったことをすばやく簡単に強烈に自覚することができる。それはインターネットを通してできるようになった、新しい現象なのです。
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東浩紀
幻冬舎 2014-08-01 |
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