知的生産をライフハックする

カテゴリー: とらえなおす

By: Gideon Strauss


知的生産の技術 (岩波新書)
梅棹 忠夫

岩波書店 1969-07-21
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今さらこの本か、と言われそうですが、ライフハックが好きならばこの本は、だいたいいつ読んでも面白いのです。

今はその上、本書に書かれているようなことをいよいよ手軽に、誰でも、ちょっとした投資できるようになったのですから、ある種の部分を読み替えて興奮することもできます。

いわば知的生産のためのハードルがグッと、本書が出た頃に比べれば途方もなく、下がったと言えるのです。今後ますます下がっていくのですが、どのように「下がっていく」のかをちょっと考えてみましょう。

知的生産をライフハックする

本書を読み直してまた1つ発見がありました。以前この本を読んだときにはかなり漠然と

というとらえ方をしていたのですが、それはかなり大ざっぱすぎたのです。

正しくは、

なのです。したがって本書はライフハックの第一の古典と言っていいでしょう。

知的生産とはなんでしょうか? 本書ではわりとあっさり「知的生産とは知的に情報を生産すること」と述べられています。知的生産がしたければ、自分で考えて情報を生産すればいいのです。これはそう難しいことではありません。たとえば妊娠した人がここ半年で必要になるものをリストアップしたら(これ自体は簡単なことではないのですが)、それも一種の知的生産です。著者の梅棹さんはそのことをちゃんと書いています。

ひとびとは、情報をえて、整理し、かんがえ、結論をだし、他の個人にそれを伝達し、行動する。それは、程度の差こそあれ、みんながやらなければならないことだ。今日においては、家庭の主婦さえもが、日常の生活のなかで、知的生産をたえずおこなわなければならないのである。(p12)

ここでの「今日」とは1969年のことです。21世紀の「こんにち」であれば、「みんなが日常の生活のなかで、知的生産をたえずおこなわなければならない」のは言うまでもないでしょう。

ではなぜ、「知的生産をライフハックする」必要があるのでしょう。
知的生産とは繰り返しになりますが「知的に情報を生産すること」です。これをもう少し分解してみましょう。

これでもかなり大ざっぱですが「情報をえて、整理し、かんがえ、結論をだし、他の個人にそれを伝達し、行動する」をとりあえず網羅できていると思います。また繰り返しになりますが、分量が少ないなら、これはそう難しくないことです。みんなが日々、やっていることです。

しかし、分量が極端に増え、千単位・万単位となってくると、手に負えなくなってきます。そこを手に負えるようにするのがライフハックであり、「知的生産の技術」なのです。

戦争ちゅう、わたしはモンゴルで遊牧民の調査をしていた。終戦後、その調査資料をかかえて、日本にかえってきた。ぎっしりかきこんだ数十冊の野帳をまえにして、さて、これをどう処理しようかと思案した。(p41)

ここで「技術」、ライフハックを必要とするわけです。なぜなら「数十冊の野帳」を人前に置いて「さあこれが私の研究成果です。みんな真剣に読むように」と言ってもなかなか通らないからです。(大学生にこうしたことを告げて事実上スルーされている大学の教官はきっとたくさんいらっしゃるでしょう)。どうしても資料を整理し、研究の意味を考え、結論をまとめて、わかりやすく呈示する必要があるわけです。

でもそれはとても面倒なことです。面倒どころか、実際可能なことかどうかすら定かではない。だから梅棹さんでも「さて、これをどう処理しようかと思案」することになるわけです。

ある人に言わせれば、そもそも「野帳」なんかにぎっしり書き込むから整理が大変になるのだ、ということになるでしょう。そこであの有名な「カード」の登場となるわけです。これはまさにライフハックです。情報収集時点でのライフハックです。

情報収集時をライフハックできるなら、整理時、発信時のライフハックも何かできそうです。実際そうした意図として、たとえばEvernoteのプレゼンテーションモードというものが提供されてくるわけです。

つまりライフハックは、やれば便利かもしれないが、気が乗らないならやらなくても済む、といったものではないわけです。野帳にとった記録ですら丹念に集めたものだと「さて、これをどう処理しようかと思案」しているうちに人生が終わってしまいます。または、数年の成果を押入にしまっておいて、なかったことにするという悲しい結末を迎えます。

まして今のように、膨大な資料を一週間で集められる(それ自体がライフハックですが)時代に「知的生産をする」となれば、ライフハック抜きには考えられないのです。

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