1月25日に発売となりました『スマホ時代のタスク管理「超」入門』。
発売を記念して、本書の内容の一部を抜粋にてをお届けします。
今回は、第1章より「タスクリストを持つことの7つのメリット(完全版)」です。以前も1つめと2つめについては書いていますが、今回はまとめの意味で7つすべてご紹介します。
タスクリストを持つことの7つのメリット
タスクリストを持つことには次の7つのメリットがあります。
- タスクリストを持てば、事前に準備ができるので人から好かれるようになり、自信もつく
- タスクリストを持てば、見通しが立つので生産性が向上してやる気もわく
- タスクリストを持てば、プロジェクトの管理ができる
- タスクリストを持てば、繰り返し作業の管理ができる
- タスクリストを持てば、悪癖を絶ち、よい習慣を形成できる
- タスクリストを持てば、夢や目標を管理できる
- タスクリストを持てば、ログが残るからタスクリストをより容易に作れるようになる
1.タスクリストを持てば、事前に準備ができるので人から好かれるようになり、自信もつく
タスクリストを持っている人は完全に忘れていたことを、ベストのタイミングで思い出せますから人に好かれるようになります。人に好印象を与えられると、その人は自信を持ち始めます。
例えば同僚の結婚式に呼ばれていたとしましょう。
タスクリストを持っている人は、結婚式の前日までに、同僚に渡す花束と、同僚の好きだったモンブランを用意しておくことができます。
タスクリストを持っていない人は、当日買うつもりだった花束を買い忘れ、同僚がモンブラン好きだったことを会ってから思い出します。
この二人は、善意や親切心における違いはないのです。結婚式の前日まで、花束のこともモンブランのことも忘れていた点で、両者になんの違いもありません。しかし花束とモンブランを買っていった方がずっといい印象を残すことができます。タスクリストを持っている人はこのようにして、一生の間あちらこちらで「好印象」を振りまくことができ、持っていない人はそのつど差をつけられてしまうのです。
一生の間にその差はきわめて大きなものになるでしょう。その差がどうしてつくかといえば、タスクリストを持っているかどうかによって決まってしまうのです。
2.タスクリストを持てば、見通しが立つので生産性が向上してやる気もわく
私達のタスクリストには「今日一日にやることだけ」でも50個から70個の項目があります。私達は「朝起きてから夜寝るまでにやること」の全てをタスクリストに書き加えているので、ふつうの人よりはだいぶ多いでしょう。読者の場合にはここまで多くはならないかもしれません。
それでも「一日にやること」の全てを書き出したら、最低でも10個から20個にはなるはずです。このくらいの数でも、やるべきことを書き出すべき十分な理由になります。
タスクリストを作ることは「記憶を外部化すること」です。
外部化された記憶の代表例がメモです。メモのようなツールがないと私達のアタマはすぐにパンクしてしまうのです。
7プラスマイナス2という有名な数字があります。心理学者によると人間が1度に覚えておくことのできる項目数は、だいたいその程度だという意味です。
10や20となりますと、1度に覚えておくことのできる項目数を明らかに突破しています。記憶に頼って仕事をしていれば必ずモレが発生するわけです。
よほど無責任な人でない限り、毎日モレが発生していても気にならないということはないはずです。やり漏らしていることがないかどうかが心配になるでしょう。タスクリストがあればその心配は無用です。やり漏れの心配事から完全に解放されるのです。その結果頭の中がスッキリし、ストレスレベルが大きく低下します。
見通しがハッキリすればやる気もでます。やる気とは、見通しがハッキリしていることをやろうとしているときにわいてくるものです。見通しの悪い濃霧の中を運転しているようなときには、そろそろと手探りで進むしかありません。やる気にもなれませんし仕事に押しつぶされるような気がしてくるものです。
3.タスクリストを持てば、プロジェクトの管理ができる
「プロジェクト」とは完了に2日以上は必要な企画です。
例えばこの本を書く仕事も1つの「プロジェクト」です。もちろん1日で全部は書き終わりません。毎日全体の1断片を少しずつ作り、時間をかけて最終的な1冊にまとめ上げるのです。「クリエイティブ」とはこうしたコツコツとした作業を安定して進められることです。「プロジェクト」を実際に仕上げるために、実際にとる行動が「タスク」なのです。
パニックになったら作業は停止してしまいます。一冊の本にまとめ上げるといったような、最終的な目標を手元で管理しているからこそ、人はクリエイティブたり得るのです。
プロジェクトを管理するためのタスクリストは、もっとも人気がある一方でもっとも扱いが面倒なものです。プロジェクトというものはだいたい、生き物のように形を変えます。最初は絶対にやるべきだと思ったことでも、手がけてみると絶対にやるべきでなかったということが分かってきたりします。
新しい製品をPRするためにイベントを開催するというプロジェクトを考えてみましょう。
最初は有名人を呼んだり、軽食を用意することが絶対に必須のリストになっていたかもしれませんが、震災などが発生して会場を変更したりする必要に迫られると、それらは絶対にできない、むしろやってはならないことに変わったりします。小さな変更まで含めるなら、プロジェクトのためのタスクリストは毎週のように変わります。
ですからプロジェクトを頭の中だけで整理しようという人はさすがにめったにいません。プロジェクトを管理するためだけでも、タスクリストを用意するべきです。覚えておけないほどたくさんの項目があって、それを毎週のように更新しなければならず、しかも全部の項目をやるべきでないとなれば、記憶になど頼りようがないのです。
幸いにも今は、スマートフォンだけでもプロジェクトのリストができるほど高機能のツールがあります。
4.タスクリストを持てば、繰り返し作業の管理ができる
これに関しては「できる」ということに疑いを抱く人は少ないでしょう。
イメージしやすくするために「月・水・金」のゴミ出しを例にとります。毎週月曜と水曜が生ゴミを出す日、金曜が資源ゴミを出す日だとします。
この種のルールは慣れてしまえばどうということのないものですが、新しく引っ越してきた市や町のルールに慣れるには、5週間ほど必要になります。
しかし5週間生ゴミを出し忘れたりすると、いやなことになります。夏真っ盛りではたまりません。
タスクリストにルーチン機能がついていれば、冷蔵庫に貼ってあるような「月曜日には生ゴミ」などといった紙は不要になります。毎週日曜夜に「生ゴミをまとめる」というタスクをセットし、月曜日に「生ゴミを出す」というタスクがセットしてあるだけですみます。後はゴミのことは忘れていられるのです。
仕事や生活にはこの種のルーチンにあふれています。ルーチンを徹底的にスマホに管理させている人と、そうでない人とでは、仕事の速度にも、ストレスレベルにも大きな差が蓄積されていきます。ゴミ出しのような毎週決まり切ったルーチンでさえ、努力して思い出したり忘れたりしている人をよく見かけます。世の中にはもっとずっと複雑でイレギュラーなールーチンにあふれています。
そうしたパターンに合わせてタスクをどんどんルーチン化していけば、ストレスは確実に減らすことができ、やる気もそんなにはいらなくなります。このメリットは極めて大きいので、一見面白くないようでもタスクでルーチンを管理すべきなのです。
5.タスクリストを持てば、悪癖を絶ち、よい習慣を形成できる
この項目にはちょっと違和感を覚えるかもしれません。タスクリストというのは仕事をするためのツールであって、習慣を作るためにどうして役に立つのかイメージしにくいでしょう。
例えばマラソンの習慣を例にとりましょう。そうした習慣を形成するためには、特に初めのうちは特定のルールを自分に守らせる必要があります。その際タスクリストが大いに役立つのです。
私達はやることであれ買うものであれ言うべきことであれ、あっという間に忘れます。新しい習慣を形成するためのルールなど、すぐに忘れてしまいます。
たとえばマラソンをするのには都合のよい時間帯があります。都合のよい服装もあります。持っていった方がいいものがあります。使った方がいいアプリもあります。忘れない方がいい準備は他にも色々あります。
そうした準備を毎回スムーズに終えてからマラソンを始めるのとそうでないのとでは、走ったときの爽快さが違います。走ったときいちいち不快になるのといつも愉快であるのとでは、マラソンの体験と印象を全然違ったものにしてしまいます。この爽快さと不快さの際を生み出すのが準備であり、準備を保証するのがタスクリストなのです。
そして以上の効果はマラソンだけにもたらされるものではなく、貯金にもダイエットにも語学学習にも当てはまる効果なのです。
タスクリストを作ることで身につけたい習慣を形成してみましょう。あるいは浪費や禁煙などついやってしまう悪癖を断ち切りましょう。
6.タスクリストを持てば、夢や目標を管理できる
私の友人に音楽で生きていきたいという夢を持ったサラリーマンがいます。
この人は一見すると理解しがたいくらい細かく時間を管理することで、毎日作曲に取り組んでいます。
1つの作品を作ることを「プロジェクト」とし、ひらめきから構想、実際の作曲、アレンジメントに至る全行程を「タスク」としてツールで管理しているのです。そのために朝早く起きて毎日「作曲のための時間」を1時間以上とっており、作曲を毎日進めてから会社へ通勤しています。
まさにこれが「夢を達成するためのタスク管理」です。音楽で生きるという大目標を、毎日作曲するという中目標に分解し、さらに作曲という中目標を、いくつかの行程というタスクに分解する。そしてそのタスクに取り組むための時間を朝の最初に用意して、タスクを実行していく。
もちろん会社で仕事をする時間が圧倒的に長いのですから、作曲に取り組むことのできる時間はそう長くはないでしょう。作曲を一気にこなしたくても、時間に限りがあります。小さなタスクに落とし込んで、日々ちょっとずつ実行していくわけです。全行程をもれなく無駄の内容につぶしていくのはまさにタスクリストの得意とするところです。
こういった人は一見「啓示」とか「無意識からのひらめき」に頼って、直感的に作曲を行っているとイメージしがちですが、みながみなそうしているわけでもないということです。専門的な知識は必要でしょうが、一見もっともタスクリストと縁遠い分野にもタスクリストは役に立つのです。
7.タスクリストを持てば、ログが残るからタスクリストをより容易に作れるようになる
この点はあまり強調されることがなくて残念なのですが、タスクを実行してチェックボックスに完了マークをつけたら、それはそのまま仕事のログになります。
だからログからチェックマークを外せば、それがタスクリストになるのです。
リストの作り方がわからないという人がいますが、リストを作るなど簡単なのです。自分が行動した記録をとります。それを箇条書きにします。それをタスクリストにすればいいのです。
もちろん一度行動したのとまったく同じようにすればいいというわけでもないでしょうから、若干の修正は必要でしょう。しかしすでに下書きがあってそれを修正するのと、白紙に一から作り始めるのとでは、難易度がまったく違います。白紙から作るのはとても難しいことなのです。
タスクリストを作るのが苦手だという人は、作りたいリストの行動記録をまずとるようにしてください。最初は大ざっぱでもかまいません。それがリストの原型になり、やがて立派なタスクリストを用意できるようになるのです。
ログが残れば自信もつく
それにログが残っていれば自信にもつながります。
ずいぶんたくさん仕事をしたつもりなのに「今日一日何をしてたんだろう?」と思うことはありませんか?
これは不思議な感覚ですが「注意をあまり向けなかったことは記憶に残りにくい」という心理学的な原因があります。忙しすぎると自分のやっていたことに注意を向ける余裕がなくなるため、行動の後の記憶が急速に薄れてしまうのです。
人は自分のやったことを振り返ってみて始めて達成感を得られることがあります。
佐々木には2歳になる娘がいますが、気が向くと突然階段を上り始めます。段差は彼女の足の短さに対して大きいので、足下にしか注意が向きません。駅の階段などを上りきると息切れを起こします。その時抱きかかえてあげて上ってきた階段に注意を向けてあげると大はしゃぎしてその場で踊り出します。自分が登り切った段数に驚いて喜ぶわけです。
タスクリストをタスクのログとして残すのは、まさにこの「段数を一望する」行為そのものです。読者は小躍りはしないでしょうが、自分が子供の時に使っていた脳は、大人になっても奥の方に残っていて、やっぱり大いに喜びます。その達成感を実感することが、仕事をする上で自信につながるのです。
その上他人から信頼されるようになる
それにタスクリストを使っている人は独りよがりに自信を持っているわけではないのです。タスクリストは自信に対する裏付けとなっているだけではなく、信頼に対する裏付けにもなっているからです。
タスクリストといえば紙にでもスマホにでも用事を書き付けて書いてあることを後でやるやり方です。これによってうっかり忘れが減るのはいうまでもないでしょう。
大事なのはただ減るのではなく激減するところです。なぜ激減するかというと、タスクリストを持っていない人はそれほど忘れていることが多い上、忘れていることすら忘れているからです。
例えば妻は在宅して仕事をしている私のiPhoneへ、買い物先から電話してきます。何を買うかを忘れているから冷蔵庫の中身をチェックさせるのです。これが少なくとも月に2度はあります(私はそういう記録を残しているから分かるのです)。しかし妻にメモを持ち歩くようにいうと「私はそんなこと忘れません」と断言します。忘れていることを忘れているのです。
あなたもタスクリストを持っていないなら、これとまったく同じことをしています。あなたがしょっちゅううっかり忘れすることを他の人は知っているのですが、あなたは忘れているから知りません。そして「リストなんかなくても忘れないよ」と高笑いしていることでしょう。
そういう人がタスクリストを作るようになると、他の人からの信頼度は急上昇します。周囲の人にしてみれば、あなたが忘れることを前提にして働いていますから、うっかり忘れが減るだけでもとても助かるのです。
ここまで第1章では「タスクリストを作るメリット」を紹介してきました。
読者の中には「こんなことはすでに手帳でやっている。わざわざクラウドという技術でタスク管理などするほどのことではない」と言う人もいるでしょう。
しかしクラウドでタスク管理することをマスターすれば、手帳で仕事を管理するよりも圧倒的に楽になれ、ミスなども大きく減らすことができるはずです。時間も今よりはるかに有効活用できるでしょう。
クラウドを使ったタスク管理のメリットと実践的な方法を、次の2章でまとめて説明します。