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毎年このぐらいの季節になると似たようなことを書いています。つまり、自分のインプット周りの環境を見直そう、という提案です。
世の中をぐるっと見回すと「捨てるための方法論」にはいつでも一定の人気があります。それは、何もしなければ人は自然に増やしてしまう生き物だ、ということでしょう。情報のインプットに関しても同じことが言えます。
ついつい、情報を拾い上げたくなりますし、有益な情報ソースを増やしたくもなってしまいます。
情報というのはなかなかやっかいなもので、それ自体は目に見えません。デジタル化によってその傾向はより強くなっています。なので知らず知らずにうちに、増えていった(増やしてしまった)情報が、心なり時間なりを押しつぶしてしまう、なんてことも起こりえるかもしれません。
どこかの時点で、それを整理してみることも必要です。
師走だからこそ
「しかし、なぜ師走のくそ忙しい時に、そんな生産性の上がらないことをやらなければいけないのか」
そう思われる方もいるでしょう。確かに、他にやることはいっぱいあります。しかし、逆説的ですが、そういう時にこそ見えてくるものがあります。
ようは、忙しくて読まないようなものは、普段も読まなくても問題ないかもしれない、ということです。
少なくとも、読まなくても日常が進行していて、かつ物足りないような気分もしないのならば、限りなくその情報ソースは不要に近いでしょう。
ただ、情報を読むことにはそれなりの満足感がありますので、普段はそういうことに気がつきにくくなっています。そういう意味で、忙しい年末は、惰性でやっていることを見直す良いタイミングではないでしょうか。
何かが入れば、何かが出て行く
最初は、空き時間の暇つぶしに始めたことが、いつの間にか日常化してしまい、やがて隙間時間にも入り込んできて、しまいにはそれをやるために時間を作る、なんて状況になっていないでしょうか。
本末転倒、とまではいいませんが、何か優先順位を決めるコンパスがおかしくなっているかもしれません。
私はどちらかというと「Twitter中毒」に属する部類です。ちょっとした空き時間があれば、すぐにTwitterアプリを立ち上げてしまいます。
そうした行動が習慣化してはっきり変わったことを以前発見しました。それは、いつも持ち歩いている手帳(ミニノート)を見返す時間が明らかに減った、ということです。
以前であれば、電車の待ち時間などには手帳を取り出し、過去に書いたことを読み直したり、何か新しく書き付けたりしていました。今では、そういう時間の大半はほぼTwitterに吸い取られています。
結局、週末に時間を作って「手帳を見返す」なんてタスクを実行することになっています。
もちろんタイムラインを眺めていれば、他の人の考えやアイデアや新しい情報に触れられるわけで、それはそれで良い時間の使い方と言えるでしょう。問題はバランスです。
自分の頭を使って考える時間や、自分の心の奥底にあるものを見つめる時間が減ってしまっていることには、注意する必要があるでしょう。
何をチェックしようか
皆さんがどのようなインプット環境に囲まれているかはわかりませんが、たとえば、
- Twitterの時速は適切だろうか
- ブログを読み過ぎてはいないだろうか
- メール・メールマガジンの数は多すぎないだろうか
- アプリ、本、新聞、雑誌を買いすぎていないだろうか
というようなことをチェックしてみるとよいかもしれません。
Twitterであればフォローをはずしたりリストを作るなどしてタイムラインを調整する、あるいはチェックする時間に制限を加えるというのもありでしょう。
RSSやメールなども、登録を解除するなどして、目に触れないようにしておくのが精神安定的に望ましいかと思います。目に触れると読みたくなってしまうものです。逆に言えば、目に触れなければ、それほど「読まなきゃ」という気持ちにもなりません。
「アプリ、本、新聞、雑誌」は時間だけではなく、お金も使います。これらにも気をつけたいところ。ちなみに、使っている時間(及びお金)の記録を残しておくと、「この辺までは大丈夫」「これ以上は危ない」という基準が作れます。
さいごに
もちろん、今回のお話は「無駄な情報をインプットするな」ということではありません。「情報の量を見極めよう」であり、「何に時間を使うのかを考えよう」というお話でもあります。
惰性でやっていることは、その渦中にいるときは惰性でやっていることにすら気がつきません。環境が変わるタイミングでそれらを見極めて、一度切り捨ててみるのもよいでしょう。不足を感じればまた戻せばよいだけです。
年末にはもう一つ整理したいもの__Evernote__があるのですが、その話は次回に譲ることにしましょう。
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▼今週の一冊:
読んだからといって、知的生産の技術が大いに高まることはありませんが、梅棹忠夫氏がどのような研究者人生を歩んできたのかをグッとつかみ取ることができる一冊です。
尽きぬほどの好奇心とそれをバックグラウンドにした行動力も驚嘆すべきものがありますが、本書を読んでいて痛烈に感じたのは「アジテーター」としての活動の偉大さです。
煽動者というとあまり響きはよくありませんが、先導し、発破をかけ、道具を作り、場を整える、といった活動が後に続く人の歩みを引っ張ってきた事実は確かにあるでしょう。偉大な研究を成し遂げることと同じぐらい、大切なことだと思います。
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いよいよ年の瀬が迫って参りました。そして原稿作業が佳境(の一歩手前)です。というわけで、年末であろうが、年始であろうが相変わらず原稿を書いて過ごす日々を送っているかと思います。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。