余裕をもって仕事に臨むことの効用

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個人で仕事をしていると、企業間以上に個人の信用が要(かなめ)になることに気づきます。

もちろん、どんな仕事も実質的には人間同士の信用で成り立っているのですが、最近あった次のエピソードによって改めて個人の信用の大切さを思い知りました。
デザイナーのMさんとは知り合って2年ほどの付き合いで、主にデザインワークで力を貸していただいています。アートな感覚の中にも優れたビジネスセンスを合わせ持った、絶妙なバランスがウリで、クライアントからの、ともすると曖昧で漠然とした要望からも

という評価を引き出してしまう、まさにプロフェッショナルと呼ぶにふさわしいクリエイターなのです。

そんな彼のデザインセンスや技術力は私にはとても真似できないのですが、ふと数日前にメールのやり取りをしていたときに、「なるほど、これは見習わなくては!」と感じたことがあります。

余裕をもって仕事に臨むこと

それは、急な依頼の時でも、彼から送られてくるメールには常に、

という言葉を一切使っていないのに、そういう雰囲気が漂っているのです。一朝一夕には真似のできないことではあるのですが、デザインセンスや技術力と比べたら、まだとりつく島がありそうです。

それから数日間、このことを反芻し続けてようやく思いついた仮説は、

です。

もちろん、常に余裕を確保することは簡単ではありません。でも、余裕がなくても相手に懐の深さを感じさせ続けることは、個人におけるブランディングという意味では欠くことのできない心がけと言えるでしょう。

物理的・時間的に余裕があってもなくても、相手から見たら余裕があるようにふるまう力を余裕力と名付けてみます。どのようにしたらこの余裕力を鍛えることができるでしょうか?

それは、自分の事情を差し置いて、とにかく相手の現状と要望を知ることに集中することでしょう。

Mさんとのやり取りを振り返ってみると、いつでも彼は、とことんこちらの要望について知ろうとするのです。それでいて彼自身の忙しさや事情は、こちらが訊くまでほとんど言い出しません。

忙しければ、相手に有無を言わさず、

などと言いたくなるものですが、彼からそのような言葉を聞いたことがありません。いや、だからこそ、安心して頼めるのでしょう。

「どうせヒマでしょ? すぐにやってよ」などという横柄な頼み方をする人はほとんどいないはずです。そうとわかっているのに、忙しくなるとついつい「今バタバタしているんで…」という反応を返してしまうことの背景には、「私はヒマじゃないんだからっ!」という感情が伏せられているような気がするのです。

言い換えれば、

とでも言いたげな勢いを感じます。

言葉に出さなくても、そういう雰囲気というのは相手にしっかり伝わってしまうものです。つまり、図らずも心の余裕がない状態を相手にさらけ出していることになります。

一方、Mさんの場合は、むしろ積極的に、

というムード満点の演出を心がけているかのようです。仕事を頼む側としては、これほど心強いことはありません。
つき合いが長いからとは言え、Mさんにはかなり気軽に仕事を頼んでしまうのですが、このように相手に気軽さを感じてもらえるかどうかで、自身の余裕力の多寡がはかれるのではないか、と考えています。

合わせて読みたい:

『「残業ゼロ」の仕事力』(2007年刊行)の文庫化ですが、末尾に佐々木常夫さん(東レ特別顧問)との対談が追加されています。

改めて読んでみると、

という流れがくっきりと浮かび上がってきて興味深いです。

「残業ゼロ」は目的ではなく何かのための手段。たとえば、それによって余裕を作ることができます。でも、「余裕を作ること」もまだ手段です。突き詰めていくと、著者の吉越浩一郎さんの以下のくだりに収斂するでしょう。

私は組織で長年トップを務めていました。トップですから自由度は高いのですが、外資系でしたので海外の本社の意向などを気にする必要もあり、これがけっこうなストレスでした。そのストレスが、仕事の喜びを少なからず減じていたと知ったのは、社長を退いて一人になってからです。組織のストレスから解放され、誰からも口をはさまれずに、自分で一から十まで仕事をデザインできるというのがこんなにも楽しいこととは、正直それまでにはわかりませんでした。(p.205)

というわけで、余裕をつくり、仕事の自由度を上げたい人にはおすすめの一冊です。
» 君はまだ残業しているのか (PHP文庫)

 

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