私がずいぶんと長くTaskChuteを使っているのはやはり「これを使えば物事が進む」からです。物事が進むという一事こそ、得がたいと思うのです。
自分が行動しないと何も起こらないのがフリーの世界だ。
日常から色が消えモノクロ画面のようになっていくのを感じた。
奇妙にのっぺりした、変化のない一日が、猛烈な勢いで過ぎ去っていくのだ。
先日『ノマドワーカーという生き方』を刊行されたばかりの立花岳志さんのブログからの引用です。私は同じように感じたことはありませんが(会社員生活をほとんど送ったことがないせいかもしれません)、言わんとする意味は分かる気がします。
ノマドワーカーという生き方 | |
立花 岳志
東洋経済新報社 2012-06-01 |
先送りしても「ベター」にはなり得ない
用事でも仕事でも、時によってはデートでさえも(!)物事が先に「進まない」最大の原因は「やらないこと」です。足がむくんでいるとか上司が気に入らないとか、彼氏が鼻をほじくるのを何度言ってもやめてくれないとか、気の進まない原因はたくさんありますが、「やる!」と決めていないことをリストで見てもやらないのです。
意外に思われるかもしれませんが、人はタスクリストに書き込む時点ではまだそのタスクをやる気になっていません。やるつもりもないのです。この仕事をやらないといけないなあ・・・くらいの気持ちで書き入れているのです。その仕事に遭遇したとたん「これやりたくないなあ」と思うだけです。仕事はしません。
私自身、そのことにうすうす気がついては今した。しかしはっきり分かったのは、TaskChuteを使い出してからです。TaskChuteには「やること全部」を入れるので、書かれていることはたいていやるのです。「食事」など苦労せずにできますからやります。
しかしふと、「やりたくないことがリストのトップに現れると、やろうとしない」ということに気がつきました。ここで決断を促されます。なぜならそのタスクを「なす」ことが「終了予定」をベースに「最適化」されているリストの構成を維持することになるからです。
わかりにくい表現で恐縮です。これは使い込んでみた人以外には伝わりにくい話なのです。
1日の始めに「タスクシュートを組む」時、慣れてくれば「このリストにあることは今日中に全部やれる」という直感が働きます。しかしその順番には、それほど自由度があるわけではありません。3度の食事を立て続けにとることはできませんし、私の場合ですと、都内に出て取材があるとなれば、午後の大きな時間帯が使えなくなります。
「今日中に3本の原稿を書ける」ということは言えますが、「3本をいつどの時間帯に書いてもいい」ということにはなりません。朝食は朝に、昼食は昼に、夕食は夜に食べるように、どの時間帯を使って原稿を書くべきかということには相当の制約があります。
他の細々とした用事についても同じです。朝の8時30分までであればゴミ出しをするのはいつでもいいのですが、11時過ぎではダメです。収集車が去ってしまう。娘の相手をするのは、まず起きた直後にはしてあげなければなりません。散歩はできれば早朝にしたい(これは個人的な気分の問題)。郵便物は郵便局の開いているうちに扱う必要がある。
非常に多くのアクションが、1日のいろいろな時間帯に分散します。もちろん原稿3本を立て続けに書くよりは、間に散歩を挟んだりした方が気持ちがいい。そんな気持ちの問題まで考慮に入れると、1日のタスクの並べ方はほとんど決まってくるのです。
これは何を意味するか? 各タスクがそれぞれの時間帯に終了し、終了予定がたとえば夜の9時などになっていたら、そのタスクの組み合わせも順番も「動かさないほど理想に近い」ことを意味するのです。
気が乗らなければ先送りにすることもあります。割り込みタスクも入ります。ただ確実に言えるのは、そのたびに理想的な状態が少し崩れるのです。先送りとは単に気の乗らないことを後に送るというだけでは済まず、TaskChute上の文脈においては「理想的な状態を自ら壊す」という意味にもなるのです。
先送りしても、何もベターにならないのです。それがあまりにも目の前で明らかに見えているとき「それでも先送りするほどの理由はあるか?」と自問せざるを得なくなります。そんな理由はめったにないのです。
- 後でマッサージに行く
- 後で本を読む時間もある
- 後でプロジェクトのことを考える時間もある
- 散歩にはもう行った
- 後で娘と遊ぶ時間もたっぷりある
- 全てのタスクがこのままいけば終わる
- 現在の時間帯に関しても順調だ
「それでもシゴタノ!を別の時間帯に回して時間調整をかけたいか?」
これに「イエス!」と答えるのは非常に難しい。だから仕方がなくシゴタノ!を書き始めてしまう。その結果が出て、それでよかったと思うことができる。この繰り返しが私のセルフ・マネジメントなのです。
みんなに1度、体験して欲しい
7月15日 第3回 タスクセラピー 仕事を着実に進めたい人のために(東京都)
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ここにも書きましたがTaskChuteに魔法はありません。TaskChuteは細部に、口では容易に説明できない、心理的な適合状態を何度も再現する機能があります。
特別なことは何一つありません。(だから言葉で説明しがたいのですが)。もしも特別に見えるとしたら、やったことのないことを想像で考えるときには、感情的な計算違いをたくさんおかしてしまうせいです。
毎朝1分でも長く寝ていたいという人にしてみれば、毎朝マラソンしている大橋さんのような人は異常に見えるかもしれませんが、毎朝走っている普通の人はたくさんいます。やったことのない行動をとれている人のことを想像で考えてしまうと、細部に関する実態が一切見えないため、それが普通の能力と感覚でできるということが分からないのです。
ですから「なぜ毎日なにもしないうちにどんどん過ぎてしまうのだろう?」という人に、ぜひ1度「タスクシュートによるセルフマネジメント」を体験して欲しいと思います。どう思われているにせよ、思うほど大変なことではありません。必要なことは、「先に送らない方が賢明だ」というごく自然な判断を、何度も何度もすることだけだからです。