精神論に頼らない目標達成の為の仕組み作り/ビギナーズ・ハック最終回

カテゴリー: ビギナーズ・ハック



最後の夏の約束

あれは遠い夏の夜
山間の小さな町で行われるささやかな夏祭り
小学校のグランドから、ほんの数十発だけあがる打ち上げ花火を見ながら
4人の少年が語らっていた

友人A:ベック向こう行っても頑張れや!

ベック君:うん。

友人B:何くらい顔しとんねん。元気ださんかい!

友人C:東京やったらいつでもいけるしな。新幹線にはな「のぞみ」なら東京~新大阪は2時間半やからな。

友人B:出た、鉄道オタク!

夏休みが終わるまで後1週間。
父親は転勤が決まり、家族総出で東京へ行くことになった。
この日はこの町で過ごす最後の夜だった。


友人A:ベックはなんか夢とかあるんか?

ベック君:俺はコンピュータ関係の仕事したいな。

友人B:ちっこい夢やなぁ。俺はなプロ野球選手やぞ!

友人C:お前の体格でどうやったらプロになれんねん。俺は・・

友人A:Cは電車の運転手やろう! わかっとるわ。

ベック君:で、Aは何なりたいん?

友人A:俺はこの町が好きやから、この町で先生にでもなるかな。この先みんながバラバラになっても、この町に帰ってこれるやろう。

夏祭りの終わりを告げる2尺玉が打ち上がる。
ひときわ大きな音と光に、4人は会話を止めた

友人A:まぁ、これが今生の別れっちゅーわけでもないし、また会おうや。

ベック君:うん。また10年ぐらいしたらみんなで集まりたいな。

友人C:10年後に集まった時にみんな夢叶ってたらええな!

友人A:そやな。

友人B:じゃーーーん、俺、家から花火持ってきたんよ! やろうや!

友人C:俺、連発花火! ベック、勝負や!

ベック:お前、花火人にむけんなや。

むせ返るような暑い夜、少年達の笑い声が山間の町に木霊していた。

翌日ーーー
ベック君は父親が運転する車に乗り込んだ。
少し周りを見渡したが、友人達の姿はどこにもなかった。

そう広くはない見慣れた町の景色が通り過ぎていく。
堤防の上を走る道にさしかかった所で、ベック君は誰かに呼ばれた気がした。
窓を開けると今度ははっきりと友人Bの声が聞こえた

友人B:べーーーーっく!

対岸の堤防の上で手を振る3人の姿があった。
へたくそな字で「ガンバレ、ベック」と書かれた模造紙が広げられていた。

友人A:元気でなーー!また会おうなーー!

友人C:寂しなったらいつでも電話してこいよ!

ベック君:絶対会おうな!向こうついたら手紙書くわ!

時間にして十数秒。ベック君は3人の姿が見えなくなるまで手を振り叫び続けた。

10年後ーーー
ベック君はST電機という会社に入社し、まがいなりにもコンピュータ関係の仕事についている。

Cは新幹線の運転手になり、Bはプロ野球チームのトレーナーになって全国を飛び回っている。

結局地元に残ったのはA一人で、今年念願の教員採用試験に合格した。

ある日、「4人でまた集まろう」とAから誘いがあり、ベック君は地元への道を車でひた走っていた。

あの堤防の道を、今度は自分が運転する車で走っていることが何故か痛快だった。

ベック君は息を切らしながら神社の石段を駆け上る。
石段を登りきる直前、懐かしい笑い声が聞こえてきた。
石段を登り切り、鳥居をくぐった先には懐かしい3つの笑顔があった。

再会した4人は「よぉ」とだけ言うと、少し照れくさそうに笑いあった。

精神論に頼らない目標達成の仕組み作り

詳しくは最後にで説明致しますが、今回の記事でビギナーズ・ハックはしばらく休載致します。ビギナーズ・ハック第一部の最後を締めくくるのは「精神論に頼らない目標達成の為の仕組み作り」です。

先にネタバラししておくと、この記事でお伝えしたい事は「目標達成の方法論」についてではなく「精神論に頼らない目標達成の為の仕組み作り」という考え方の方だったりします。

というのも、この連載「ビギナーズ・ハック」に入っているハック、即ちライフハックの僕なりの定義が「物事をスムーズにするための改善・仕組み作り」であって、その対極に位置するのが「物事を気合いや根性と行った精神論で片付けてしまう」ことだからです。

目標達成のアプローチについてはシゴタノでも過去に以下の記事がアップされていますのでご参考までに。

■精神論・根性論から脱却

「気持ち」とか「気合い」という言葉を子供の頃に聞かなかった人は殆どいないのではないかと思います。ともすれば、物事がうまくいかない理由は我々の「意志が弱い」とか「精神力が足らない」からという訳の分からない理由に求められがちです。

勿論、世の中には強靱な「精神力」というのを持って成功を収めている人がいるのも事実ですので、あながち間違いとは言えないのですが、実際の所「お前は意思が弱い」と言われて解決する問題など何一つ存在しません。せいぜいが「頑張ります」とか「反省します」と言って、一時的に精神的な落ち込みや悔しさから「やる気」を引き出して頑張るぐらいのもので、時が経てばやがて悔しさを忘れ、また同じ失敗をくり返してしまいます。

■仕組み作り=ライフハック

物事には原因と結果の2つが存在します。「消費カロリーが摂取カロリーを上回った」から「痩せる」わけであって、決して「気合いを入れて運動をした」から「痩せた」わけではないのです。一緒じゃないかと思うかもしれませんが、例え「気合いを入れて運動をした」としてもそのやり方が間違っていれば「痩せる」ことなどないわけです。

ここで登場するのが具体的方法論である「ライフハック」です。精神論には再現性はありませんが、方法論には再現性があります。「ライフハック」というのは「原因」に対する対処を行うことで「結果」を変えることに他ならないのです。

例えば、「ゴミ出し」を忘れる理由が朝一に「ゴミの日を思い出せない」であれば、「前の日にゴミをまとめて玄関に置いておく」という対策を打つなり、「Googleカレンダーのリマインダーに登録する」という対策を打つなり、何らかのアクションを行うことで結果を変えることができるのです。

■目標達成に必要な事

目標達成の為に必要なのは強靱な意志でもなければ、やり遂げることを心に決めることでもなく、ただ単に目標を達成するために必要な仕組みを構築することなのです。例えば、とてもシンプルですが私が考える目標達成の仕組みは以下の3点を仕組み化して回すことです。


目標を書き出す、見返す

まず大前提として、人の脳というのは立てた目標に関する「記憶」と「モチベーション」を一年中キープできるようにはできていません。目標そのものを忘れてしまっては達成どころの話ではないのは言うまでもありません。

まずは忘れても思い出せるように「目標」を書き出しておき、折に触れて見返すことが必要となります。折に触れてをもう少し具体的に書くと、GTDをやられている方であれば週次レビュー、7habitsをやられている方であれば週次計画のタイミングなどが適しています。

書き出す先は手帳でもEVERNOTEでも良いと思いますので、自分が一番見返すであろう場所に目標を書き出して頂ければと思います。



目標を行動に落とし込む

もちろん目標を眺めているだけで達成できるわけではなく、行動に落とし込み、行動を起こす必要があります。

例えば「マラソン大会に出て完走する」ことが目標であれば、マラソン大会に出るためのトレーニング量として最低限必要とされる「月100kmのランニング」から「週25kmのランニング」、更には「平日に3km/休日に5km走る」という行動が導き出されます。

私の場合はこれを週の初めに行う「週間計画」の中で実施しています。



行動を確実に実行に移す

行動を確実に実行に移すためには「予定・タスク化」することが第一です。私の場合はいつやるかを決めないとずるずるとやらない傾向があるので、Googleカレンダーに繰り返しの予定として登録してしまいます。(できなくて夜走る場合もあるのですが。。)



また、ダイエットや健康増進と言った他者と共有できる目標の場合は、facebookグループで一緒に頑張る仲間を募ったり、Twitterで「xxをやる」と宣言してしまって衆目に晒されるというのも非常に有効な手段です。

私の場合、ダイエットの為にランニングを習慣化しようと思い「東ラ研Health Hack部」というグループを立ち上げました。毎日緩い感じで「今日は朝ランしました!」などと報告するとそれを見た仲間がイイネ!してくれたり、コメントを投げかけてくれたりします。シンプルな仕掛けですが、意外にこれがやる気につながるのです。



最後に、継続性を高めるためには行動を記録し続ける事も有効です。連続記録が続いているときは「ここまでやったんだから、やらないと勿体ない」という心理(コンコルド効果というらしい)が働きますし、単に「俺最近頑張ってるな♪」とニヤニヤするだけでも十二分にやる気が供出されます。



Streaks – Motivational Calendar 3.3(¥85)
カテゴリ: 仕事効率化, ユーティリティ
販売元: Fanzter, Inc. – Fanzter, Inc.(サイズ: 7.5 MB)
全てのバージョンの評価: (254件の評価)



行動を確実に実行するための参考書としては佐々木正悟さんの以下の2冊が参考になります。


また、この2冊の本を読むと、やりたいと思っていることが「なぜできないのか?」という理由(原因)と「どうすればできるようになるのか?」という改善するための行動/仕組み化の両方を知ることができます。やろうと思っているのになかなか実行できない人は是非この2冊を読んでみてください。

最後に

冒頭にも述べましたが、しばらく「ビギナーズ・ハック」の連載を休止します。

休止と言うことは、また戻ってくるということなのですが、次に帰ってくるときにはもう少し仕事術やライフハックの入り口に立っている皆さんのお役に立てる連載にすべく、ちゃんと体系立てたものにしたいと考えています。

これまで1年と少しの間散々好き勝手書かせて頂きましたが、私の寒いストーリーも、前後でかみ合っていない展開も、どこがビギナー向きやねんみたいなネタのチョイスも、笑って許してくれるだけでなく「楽しみにしてますよ!」なんて優しい言葉を書けてくださったシゴタノ!ファンの皆様にはとても感謝しています!ありがとうございました!

#その他、ネタにさせて頂いたシゴタノ!執筆陣の皆さん、ごめんなさい。

ちなみにですが、お休みしている間は「Toodledoの使い方」という(まじめな)連載を佐々木正悟さんと一緒に行います。

こちらの連載が一区切りする頃に、装いも新たに「ビギナーズ・ハック」を復活させたいと思いますので、そのときはまたよろしくお願いいたします。

 

▼編集後記:




晩夏と言えば、ZONEの「Secret Base~君がくれたもの~」ということで、今回はSecret Baseを下敷きにストーリーを書いてみました。晩夏ってなんだか切ないですよねぇ(>


▼北真也:
仕事術をもっとカジュアルに! わかりやすさ重視の「ビギナーズ・ハック」をお届け。Blog「Hacks for Creative Life!」と勉強会「東京ライフハック研究会」主宰。


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