私はこのシゴタノ!以外にも自分のブログを毎日更新していたり、毎週発行されるメルマガの原稿を書いたりと、一日の間にどこかしら「文章を書く」という作業が発生しています。
基本的に「文章を書く」という作業が好きなので、苦痛というものはないのですが、時々「文章が書けない」状況が発生します。職業柄、それはなかなかまずいシチュエーションです。会社員的状況に置き換えるならば「出勤したくない・・・」という気持ちに似ているかもしれません。
さすがにそれが頻繁に発生する避けたいので、その状況を観察してみました。すると、いくつかのパターンが見受けられます。例えば、
- ネタ不足
- 着手できない
- 時間がない
- スキルが不足している
というようなものです。
それぞれへの対処方法は異なるわけですが、今回は「着手できない」にフォーカスを当ててみます。
着手できない3つの状況
「着手できない」というのは、書くネタもあって、書く時間もあるけれども、なぜか書き始められない、という状況です。その状況を引き起こしているのは、かなりの部分が心理的な要素です。
ありがちな状況を3つあげるとすれば、
- 「書きたいテーマが多すぎる」
- 「書きたい内容が大きすぎる」
- 「書きたい文章が完璧すぎる」
があります。
それぞれみていきましょう。
「書きたいテーマが多すぎる」
ネタが無いのではなく、ネタがありすぎる状況です。
書きたい欲求があちこちに分散しすぎて、結局何一つ手を付けられない状況とも言えます。
行動経済学関連の本、例えば『経済は感情で動く』などでも「選択肢が増えることによって、判断できない状況が生まれる」という事例が紹介されています。ネタは潤沢にストックしておく方が安心ですが、書くときに「どれを書こうか」という迷いも同時に発生させることになります。特にネタ帳が厚みを増せば増すほど、こういう状況が起こる可能性は増えてきます。
これに対応するには、「テーマを減らす」というのが一番手っ取り早い方法です。
「今日はこれについて書く」「今週はこれについて書く」「今月はこれについて書く」という風に、期間限定のテーマを先に決めておくと、ネタ帳の中に眠っている在庫の多さに圧倒されることは少なくなるでしょう。
「書きたい内容が大きすぎる」
「なんか、すげぇことを書きたい」みたいな欲求が先走りすぎると、実際に書き始めるのがとても困難になります。
大きなテーマに取り組む精神は重要ですが、行動が伴わなければ意味はありません。やりたいことが大きければ大きいほど、実際にやるのが面倒に感じられます。このあたりはタスクの処理とまったく同じですね。
対処方法もタスク処理と同様に、「小さくはじめる」というのが一つの方法です。テーマを小分けにしてみる、原稿用紙5枚だけ書く、概要だけでも書いてみる、といった感じで、実際に取れるレベルまで書く作業を細分化してみるのが良いと思います。
「書きたい文章が完璧すぎる」
本を読んでいる人ほど、「こういうレベルの文章を書きたい」という欲求は高いでしょう。それがいつのまにか「こういうレベルの文章を書かなければ」に変換されてしまうというのはよくあることです。
そういう気持ちが大きくなりすぎると、いくら書きたいことがあっても書き始めることができません。理想が高すぎる状態です。
この状況には、「不完全な文章から書く」というアプローチしかありません。
もともと、はじめから完璧な文章が書ける人などめったにいないでしょう。それは、技術というのは少しずつ上昇するという意味でもありますし、一つの文章も不完全な状態から、推敲を重ねて少しずつ良い状態へ持っていく、という意味でもあります。
どちらにせよ、最初は「完璧ではない文章」から始めるしかない、ということです。
「文章の良し悪しなんて気にするな」というアドバイスが一番簡単ですが、それがどうしても気になる方は、書き始める時ではなく、推敲するときにそのこだわりを発揮されると良いでしょう。
たくさん本を読んでおられる方でしたら、「自分が読み返して読みにくくない文章」まで推敲すればよいでしょう。それで、ある程度の水準の文章にはなると思います。
さいごに
ネタもあって、書きたい気持ちもあるのに書けないというのは、なかなかもったいない状況です。
基本は「小さくはじめること」。
タイトルだけ書く、見出しを立ててみる、書き出しを書いてみる、書けるところから書く、書けるように書く、などいろいろなトピックスがありえます。大いなる目標は、細かく刻んで実際に手に取れる行動に調理してしまうのが一番です。
「書きたいけどなかなか書けない」という人は、「どうやったら自分は小さく始められるか」を考えてみるのがよいでしょう。
▼参考文献:
「行動経済学」のわかりやすい入門書。やや厚みはありますが、実験結果の事例を紹介しながら、読みやすく展開されています。
タイトルは「論文の書き方」ですが、文章の構成法や、文章を書く際に気をつけるべき点などが紹介されています。
論文という大きなテーマにどのように取り組むのかという流れの組み立て方、あとは実際の作業のトピックスがまとめられています。
▼関連エントリー:
▼今週の一冊:
タイトルに「反哲学」と付いていますが、「哲学」の流れをぎゅっと掴まえた一冊です。なぜ「反哲学」なのか、というのはニーチェ以前とニーチェ以後を同じ「哲学」という言葉でくくるのには無理がある、という著者の思想によるものです。それがどういった考えなのかは、実際に本書を参照してください。
個々の哲学者の思想に深入りするのではなく、哲学史を俯瞰するための本です。まさに「入門」として良書だと思います。
iPad2を購入して、ノートアプリ購入しまくっている日々です。
iPhoneだとあんまりアプリ買わないんですが、iPadだと急にアプリが欲しくなるんですよね。不思議です。私の中で、iPadがアナログガジェットに近い感覚があるのかもしれません。ノートとかペンとか「ついつい」買っちゃうような、そんな感覚でポチポチしています。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。