Evernote を捨てよ、町へ出よう

カテゴリー: Evernoteの育て方


ここ最近、「Evernoteをいかに使いこなすか」「Evernoteがいかに便利か」という記事が続きましたので、こうなるとちょっと偏屈な私などは時にはEvernote を使うのをやめてみてもいいのではないかと思うようになります。

もちろんEvernoteをやめて別のサービスやアプリを使おうという話ではありません。時にはキャプチャーすることから離れて、私たちをとりまく情報の流れについて意識してみるのも一興だと思います。

それがひるがえって「何をキャプチャーすべきか」という大事な視点を照らし出すことにもつながります。ちょっとEvernoteクライアントをとじて、私と一緒に町に出てみせんか?

いま、何が気になっている?

試してみましょう。ノートパソコンを開いてはいけません。もちろん携帯電話もiPhoneもiPadを触ってメールやツイッターをチェックしてもいけません。

心がざわついてきて、何らかの情報に触れたいという気持ちが高まるまでに何分かかったでしょうか? 情報に対する飢餓感なしに一時間を過ごせたならあなたは健全といっていいかもしれません。でも私のような人なら、きっと数分でiPhoneの電源ボタンを押したくなる誘惑に駆られるのではないでしょうか。

このとき、私たちはなにか明確な「これ」という情報を探すために端末に手を伸ばすわけではありません。「メールか何かがきているかも」という当てもない情報摂取の行動をしているに過ぎないのです。すばらしい景色を前に、手元の袋からポップコーンをとりだして無心に食べているようなものですね。

では同じ実験を、こんどは当てもない状態ではなく、「いま、何が一番気になっているか」という考えを胸にやってみましょう。

「ああ、あの仕事をするんだった」「あの本を買いたいと思っていたんだ」というように、記憶の空白が急に埋められてゆくことに気づくかもしれません。焦りのあまりぱっと立ち上がりたくなるかもしれませんが、ここが辛抱です。

この二つの実験の結果あなたが思い浮かべたことに、あなたにとって最も大切なキャプチャーのヒントがあるかもしれないのです。

本当の情報をキャプチャーする

iPhone を経て飛び込んでくる膨大な横槍に注意を乱されなければ、実際に町にでて書店の本棚を眺めたり、風景をただ見たりしているだけでも、気づいたり、考えたりすることがつぎからつぎへと浮かんできます。

この「関心のフィルター」はあなたのアンテナの受信周波数といってもよいあなただけの個性ですので、「どうも自分はこの本のことがいつも気になる」「どうも先程から自分は同じテーマのことばかり考えている」ということが意識できたなら、これこそがEvernoteにキャプチャーすべきものだといえるでしょう。

『それは情報ではない』の著者、リチャード・ワーマンによれば「何かを学ぶというのは、興味を抱いたことについて記憶するプロセスである」のだそうです。逆にいえば「興味のフィルター」を意識化できなければ学ぶこともありえないということでもあります。

情報に溺れている気がする、何が重要で何が重要でないかわからないという方は、どこかで自分の「興味のフィルター」を他の人のフィルターと混乱させていることはないでしょうか?

時には Evernote にただ手当たりしだいにファイルをいれるのではなく、自分の興味と価値観のフィルターの目づまりを掃除してみるのもいいでしょう。

今週の本

不幸ビジネスが本当に嫌いです。たとえば「あなたは○○ができていない」とテーマを立てて、なんとなく不幸な気持ちや飢餓感を産み出して、それに対して商品やセミナーを売りつけるといったスタンスの人のことを指しています。

本当に人のお役に立とうというのなら、「あなたは実は○○ができる」ということに気づかせるのではないか。それが私の信念でもあります。

福嶋麻衣子さんといしたにまさきさんの『日本の若者は不幸じゃない』はまさにこうしたエンパワーメントの本といえます。この挑発的なタイトルに反感を感じる人もいるかもしれませんが、そうした気持ちをおさえてこの本を読んでみてください。

いま日本で始まっている一つの社会的な流れに対する理解とともに、実は自分が属している小さな幸せの世界(クラスタ)の姿がみえてきます。

会社、仕事、組織といったものが「幸せ」という形であなたの人生に応えてくれないとき、きっとヒントを与えてくれることでしょう。自分は実は「不幸」ではないのだと。


▼編集後記:

 船からおりて船酔いから解放されたと思ったら、こんどはなかなか陸酔いが治りませんでした。

そして下船してもう3週間になるのに、ときどき思い出したようにじわりと頭の奥がしびれるような感覚に襲われます。海が呼んでいるのでしょうか? しばらくはごめんなのですが…。


▼堀 E. 正岳:
Evernoteエバンジェリスト。「Evernoteハンドブック」の執筆や「Evernote日本語掲示板」のモデレータを通して、愛してやまないEvernoteの育て方を伝道中。Lifehacking.jp主宰。

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