Evernote のタグをさらに使い込む「疑似階層タグ」ハック

カテゴリー: Evernoteの育て方

Evernote に流れ込む膨大な情報を整理するには「ノートブック」あるいは「タグ」を利用します。この二つの使い分けについては以前ご紹介しましたね。

それでも「タグが理解できない」という意見はよく耳にします。それはタグが自由すぎるために、どの情報の粒度でタグ付けをすべきなのか、どのていど記述すべきなのかについて、不確定要素が大きいからでもあります。

一枚のノートをタグ付けするのにたとえば「小説」という大きなくくりにすべきなのか、それとも「推理小説」にすべきなのか、はたまた「小説」と「推理」という二つのタグにすべきなのか…。ちょっと考えるだけで混乱しそうです。

放っておくと、私たちはみな Evernote を使うのにオントロジー(存在論・本体論)を気にしなくてはいけなくなってきます。みんな気づけば哲学者というわけです。

幸い、Evernote のタグにはちょっとした工夫を加えるだけで概念が混じらないように整理して、見通しをよくするハックがあります。それが知る人ぞ知る、「疑似階層タグ」というハックです。


階層タグの特徴と限界

Evernote にはすでにタグを階層化する機能がありますが、この機能はタグを意味で階層化するというよりは、整理のために利用するものです。たとえば以下のように「fruit」というタグのしたで「apple」「orange」といったタグを整理していたとしても「tag:fruit」という検索は「apple」「orange」にヒットしません。階層化されていても、タグはそれぞれ個別に扱われているのです。



整理整頓のためだけに利用するならいいのですが、もっと高度なタグ付けをしたいときにはこれでは機能が十分ではありません。本来なら、「fruit」という上位概念で検索した際には下位概念を一網打尽にしたいわけです。そこで、ちょっと手間ではありますが疑似的な階層を作ります。

疑似階層タグのしくみ

擬似階層タグのしくみは簡単で、下位のタグを作る際に「fruit::apple」といったように上位タグを名前空間のように付け加えるだけです。「::」というセパレータは別になんでも構いません。

こうした場合、それぞれのタグは上の階層のタグをすでにふくんでいますので、検索の時にワイルドカードを利用してここだけにマッチさせることができます。



このような細工を施すだけで、上位概念で検索する際には「tag:fruit*」で検索し、下位概念で検索するときには「tag:fruit::apple」で検索すれば任意のレベルで検索することが可能になります。これらのタグは名前で階層化しているだけですので、実際に Evernote の階層化タグにしてもしなくても機能するというのもポイントです。

残念ながら、現在のところ Evernote の検索では「tag:*::apple」のように検索することはできませんので、上位概念が異なる擬似階層タグを拾い集めることはできません。ただ、こうした検索が必要になるケースは少ないでしょう。

疑似階層タグをつかってみる

こんな仕組みはどんなときに使えるでしょうか? すべてのタグを擬似階層タグにするのは面倒すぎますが、いくつか重要なタグ群についてつくっておくことで、任意の情報レベルで検索を行うことができます。

たとえば私の場合「研究」という大きなくくりの下に、「プログラム」「テンプレート」「事務書類」「アイディア」といったように、下位のタグを用意しています。そのときの気分によって「研究」で検索することも、「研究::事務書類」で検索することもできますので、探しているものを見つけやすくなります。

また、「研究::事務書類」というタグは「家庭::事務書類」というタグと混じり合いませんので、研究と家庭とをすっきりとわけて情報を管理したい場合に利用できます。

たとえば「tag:研究:*」という検索を「保存された検索」に登録しておけば、まるでスマートノートブックのように、大きな概念でタグ付けされたノートがすべてそこに反映されるという仕組みを作ることもできます。

タグには一度しか使わないものと、何度も利用するものがあります。擬似階層タグは何度も利用するものに対してしっかりとした構造を与える便利な方法なのです。

今週の本

書いている文章はお行儀がよいのですが、私はかなりのへそ曲がりで、ルールを額面通りに守ってばかりの人はどうしても茶化したくなる悪い性分があります。生い立ちのせいか、私は Conform 「習慣に従う」ことが苦手なのです。

でもそんな風に「世界とのずれ」に苦しんでいる人は多いはずです。どうしてもそのずれを解消できずに悩むくらいなら、こちらから打って出て世界を変えてみるのはどうでしょう?

そんな人が参考にしてほしいクリス・ギレボー氏の『 The Art of Non-Conformity 』はいわゆる「普通」の職業から脱却してブログや執筆業で生計を営んだり、少ない予算で世界中を旅したりといった、「普通じゃない生き方」への実践的な手引きです。

しかしその根底にあるのは「人は自分の情熱で生きるべきだ」「情熱にひとを巻き込み、世界を変えることは可能だ」という真摯なメッセージでもあります。

書かれていることはそのまま日本で適用することができないこともありますが、日本へもちこむための具体的な方策を考えるのも楽しみのうちです。

洋書ですが、人生と世界の新しいルールを書きたいと考えている人にはちょうどよい年末の読書となることでしょう。

Chris Guillebeau
Perigee Trade ( 2010-09-07 )
ISBN: 9780399536106


▼編集後記:
Evernote に情報をいれるのはさがすときがくるときまで忘れるためですが、本当に忘れてしまうと嫌なものもあります。たとえば娘の生まれた頃の声などが音声ノートの形で保存してあるのですが、こうしたノートはときどき呼び出せるように娘の名前でタグ付け、保存された検索を作成して、iPhone / iPad 上ではお気に入り登録までしています。

忘れないのはいいですが、ときどきそれを効いてばかりだと仕事の手が止まるのがいけませんね。記憶はときとして酔いしれてしまいますのでご注意!


▼堀 E. 正岳:
Evernoteエバンジェリスト。「Evernoteハンドブック」の執筆や「Evernote日本語掲示板」のモデレータを通して、愛してやまないEvernoteの育て方を伝道中。Lifehacking.jp主宰。

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