前回はスタートとしてノートの選び方について紹介しました。今回からは、実際にノートを使っていく上で気をつけたいポイントについて触れてみたいと思います。
「ノートをうまく使えるようになるための3つのコツ」というエントリーでノートを使う上での3つのコツを紹介しました。そのうちの一つが「ノートを見返す習慣を身につける」です。
この習慣を身につける上で「見返しやすさ」というのはとても重要です。
では、どうすれば見返しやすいノートにすることができるでしょうか。いくつかのノート術の本から要点をまとめてみると、次のような感じになります。
- バッファーを設ける
- スタイルを意識する
- メタ情報を加える
- 牽引を作る
それぞれ見ていきましょう。
バッファーを設ける
バッファーとは緩衝器の事ですが、ノートの使い方でのバッファーは余分なスペースといえます。バッファーの作り方としては、
- 項目と項目の間にスペースを設ける
- 1ページ1コンテンツで書く
などが考えられます。実際のやり方はいろいろありますが、「余白部分」を確保するような使い方をするということです。
バッファーを設ける理由として第一に、詰めて書きすぎると見返すときの心理的な負担が非常に高いという理由があります。詰め詰めで書いた文章は書くときは良いかも知れませんが、後で読み返す際には苦痛の材料でしかありません。
第二に、追記できる余地を残しておく、という事があります。読み返した時に気になること、追加しておきたい情報を書き込む余地がないのは不便です。読み返すことが前提の場合、これらの余白はスペースの先行投資といえるかも知れません。
つい詰めて書いてしまうという方は1ページ1コンテンツのルールを決めてしまうか、あるいは「コーネル式」のノートを使ってみる方法があるでしょう。コーネル式は初めから「余白」の部分が設定されているので普通に使っているだけでバッファーができます。最初ごちゃごちゃ書いてしまっても、余白に整理したものを書き出しておければ、その部分だけを見返すことでノートの情報を活用することができるようになります。
スタイルを意識する
スタイルというのは、この場合「文章の書き方」と「デザイン」の二つです。
「文章の書き方」として気をつけるべきは「ダラダラ書かないこと」。ダラダラ書くと詰め詰めの文章になりがちです。そうなると見返しにくいノートになってしまいます。できるだけ要点を押さえて書き込んでいきましょう。
自分が他の誰かに説明するように、少し先の「自分」に向けて説明するような感じで書き込めればベストです。一週間後の自分は忙しくてとても書き込んだ内容をつぶさに読み返す暇は無いかも知れません。要点だけまとめておけば、未来の自分の手助けになります。
要点をうまくまとめられない、という方は箇条書きのスタイルや5W2Hの形式でまとめる方法を試してみればよいでしょう。箇条書きというのは
- 一つが短いフレーズ
- 重要な部分をピックアップ
- リスト形式
こんな感じの書き方です。書き出す内容が並列ならば上のリストのように黒丸を先頭に。時系列や順番に意味があるならば1、2、3と番号を振っていく事もできます。5W2Hは、Why、Who、What、Where,When、How、How muchの7つの要素を押さえて内容を書き込むという方法です。こういったフォーマットを意識しておくとダラダラ書きせずにすみます。
見た目にも気をつける
「デザイン」も重要です。といっても大げさなものではなく、「文字の大きさ」と「色」あたりに気をつければ良いでしょう。デザインに気をつける理由は、格好良いノートを作るためではなく、見返した際に重要度が直感的にわかるようにするためです。
重要な要素を大きな文字で書く。こうしておけば見返したときにすぐにその箇所に目がいきます。アナログのノートはこういう作業がとても簡単にできるので便利です。活用しない手はありません。
同じように日常的に多色のペンを使っているならば、重要度によって色分けするという書き方もあります。
どのようなツールを使ってもいいですが、見た目で重要度をすぐに分けられるようにしておけば見返す作業の際に便利です。
メタ情報を加える
単に内容について書くだけではなく、いくつかの情報も書き加えておくと便利です。重要なのは「見出し」と「日付」。これは多くノート本で「必須」とされています。
「見出し」は内容の要約です。タイトルといっても良いでしょう。後から見返す際にこれがあると無いとでは大きく使い勝手が変わってきます。また、人が記憶をたどる際に「いつごろ」というのは強力な検索キーになっています。それをたどれるようにするためには「日付」を書いておく必要があります。この二つは最低限書くべきでしょう。
あるいは「場所」や「状況」といった情報を書き加えておいても良いかも知れません。「会議」「新聞」「相談」「商談」・・・といった情報です。
もう一点付け加えるとすれば、内容に関しての情報。「企画」「アイデア」「資料」といった内容についての情報を書き加えておくと、次の牽引作りに役立ちます。
ちなみに、牽引作りを意識するならばノートにページ数を割り当てておいた方がよいでしょう。あるいは日付だけではなく時間も書いておく、という方法もあります。1つのページに複数の内容を書き込む場合は、内容ごとに番号を振っておく必要があります。
牽引を作る
牽引、あるいは目次作りです。これは少々手間がかかりますが、一度作ればノートに書き込んだ情報へのアクセスが一気に便利になります。作り方としては、ノートに直接書き込むものと、パソコンを使う方法があります。
ノートの場合は、最初の数ページをあらかじめ空けて使い始めるか、最後の数ページを残して使い終えるか、このどちらかで牽引用のスペースを確保します。綿密に作り込むならば、全てのページの見出しをリスト化していく、という方法があります。が、これはなかなか手間がかかります。
特に重要そうな部分だけをピックアップするか、あるいは「プロジェクトAに関するデータ」という項目を設けて、それについて書いてあるノートのページ数なり、項目の番号なり、日時をまとめて書き出すという方法が現実的でしょう。
パソコンであれば、テキストファイルに日付や内容についてのメタ情報を書き込んでいくだけで簡単に牽引が作れます。テキストファイルを検索して実際のノートを探すという手順も取れますし、あるいは印刷してノートに貼り付けておき目次代わりに使うという方法もあります。
まとめ
今回はノートの「見返しやすさ」について考えてみました。「見返すためのノート作り」というのは未来の自分に情報をパスする行為です。そのパスルートをうまくつくることができれば、情報の活用度は一気に上がるでしょう。
単純に「見やすい」ノートを作るという事と、牽引などで「探しやすい」仕組みを作ること。この二つが「見返しやすいノート」を作る上でのポイントになってくると思います。いきなり牽引作りまではハードルが高いかも知れませんのが、最初の3つだけならば普段のノートの書き方に少し注意を払うだけでできます。まずは、その3つから意識してはいかがでしょうか。
▼参考文献:
基本中の基本が一冊にまとまっています。ノートの使い方も基本もこの一冊でほぼ抑えられます。
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メタ情報、牽引の作り方などの参考に。
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パソコンでの牽引作りの参考に。
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▼関連エントリー:
・ノートの種類と選び方のコツ/ノート術企画第一回
・ノートをうまく使えるようになるための3つのコツ
・講義ノートの取り方と復習のコツ(誠Biz.ID)
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