「関係を断ち切る!」前に踏みとどまる

カテゴリー: グッドバイブス


「躁的防衛」というかなり専門的な用語があります。

難しい話ではありません。

組織であれ家族であれ、恋人同士であれ、人間関係には「不安」がよぎるときがあります。

不安は不快ですから、不快になったとき私たちはごく自然と

と考えがちなのです。

「ずっと既読スルー。あの人はちょっと最近冷淡になってきていない? それとも私、何か悪いことした?」

この類いの不安に耐えきれないので、雲行きがあやしくなって、行き詰まりの感覚に耐えがたくなると、積極的に関係を壊してしまうある種の「悪習慣」があるのです。それが「躁的防衛」と名づけられているわけです。

なぜ「躁的」かというと、変に明るく元気すぎるからです。躁病的なのです。

要するに、いっくら女に振られても平気だと思っている男とかいるでしょう? ワッハッハみたいな。「あいつはどうしようもないやつだからいい」という、そういう世界ですね。そういう失うことについての痛みをごまかすための防衛が躁的防衛なわけです。これが性格の一部になっている人がいますよね。絶えず元気な人。

本当はもっとしょんぼりするのが自然な状況なのです。恋人を失ったり、仕事を失ったり、家族を失ったりするかもしれないわけですから。でも「そんなの、相手が決めればいい」と平然としていたいという気持ちがあっても不思議はありません。

なんらかの理由でそういう気持ちが非常に強まると、失う辛さを自覚するまいとして相手の悪事を見つけ出すか、なければねつ造してでも「相手を切り捨てる」わけです。

このような「性格」だと、もちろん孤立無援に陥っていくという問題がひとつにはあります。

苦労して築いた関係を、自ら一瞬で破壊してしまう

本当は「切り捨てる」必要などない関係者を即決で切り捨てていく。怒らなくてもいいところで怒りのメッセージを発するのです。

「関係を築く」には時間がかかる一方、切るのは1時間とかかりません。切るほうが容易で速いのです。

差し引きすれば恋人も親友も友人も取引先も、およそ関係する人の数は減るはずです。

もうひとつの問題は、共同作業による創造を壊してしまいがちな点です。

複数人で仕事をしていると、どうしてもいろいろと、人間関係における「面白くない小事件」が発生するものです。これははっきり言って避けられないと思います。

その際、上に述べたとおりの「不安」に駆られてしまう性格がわざわいします。既読スルーに不安になったり、会議を欠席する人を見て不安になったり、時間どおりに待ち合わせ場所に現れない相手に不安になったりするのです。

不安になるのは誰もが同じかもしれません。しかしそんな不安に耐えられないときに決まって「悪を切り捨てる」のが躁的「防衛」なのです。自分の不安という認識で止められればいいのですが、不安をかかえたまま生きるのに耐えられないため、不安にした相手を悪人認定し、罰として切り捨てたくなります。

他に女を作っているのかもしれないし、そうでなくてもそう思われるようなふるまいをする男なんてごめんだ。

会議に出ないなら事前に連絡をするべきだし、もしかしてそうできない事情があるのかもしれないが、いつも体調を崩すとかいったやむを得ない事情にせよ、そういう人とは仕事をしないほうがうまくいくものだ!

もっと健康な人は他にいくらでもいるのだから。

なにもいつもいつも時間ぴったりにきてほしいというわけではない。

でも私がいつも先に来ているというのは不公平ではないだろうか?

もしかして私を見下しているのかもしれない。

意識的ではないにせよ、そういうふうに私が思うことにすら気づかないようなら、もう関係は打ちきったほうがいい。

仮定としての理屈が正しいかまちがっているかは、これらのケースではまったく問題ではないのです。この種の理屈を持ち出そうとする「心の中に潜む自分」が、苦労して築いた関係を、一瞬で破壊するのに大いに役立ってしまっている点こそが問題なのです。

いろいろな倒錯的、ナルシシズム的な組織によって、物事と本当の接触をして、本当に何かよいことが生み出されるような、そういう交わりを妨害していくような、破壊していくような、そういう在り方というものが描き出されていきます。

それが、結局、「家族のないこころ」を生み出します。要するにエディプス的な、お父さんとお母さんのカップルを最終的には尊敬して、自分がその世界をちゃんともう一度自分のこころのなかにつくり出していって家族として再生産していこうみたいな、そういうことを邪魔するわけです。

引用はすべて次の本からです。

▼編集後記:



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これまでに50冊以上の書籍を出版している佐々木正悟と、執筆だけでなく、雑誌や書籍の編集経験もある倉園佳三が講師を務めます。
 
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