Trunk というと、旅行用の大きなトランクを思い出されるかもしれませんが、Evernote のロゴは象ですので、ここではなんでも器用に拾うことができる象の鼻(英語ではやはり Trunk)のことを指しているのかもしれません。
7月に Evernote が Trunk 機能を公開したとき、なぜクライアントやサービスに対する大きな機能追加ではなく、iTunes App Store みたいな機能をここまで大きく宣伝しているのだろうかと思ったものでした。
しかし Trunk の公開から1ヶ月が経って、さまざまなサービスが追加されるにつれて、これが「Evernote のプラットフォーム化」という次の進化であることが見えてきました。今日はこの Evernote Trunk のもつ意味と、Trunk で見つけた有用なアプリ・サービスについてご紹介します。
Trunk は Evernote の未来
Evernote Trunk は Evernote と連携して利用できるウェブサービスや iPhone アプリ、書籍、Tシャツなど、Evernote に関連するものだったらなんでも公開されている場所です。
Evernote Trunk はクライアントの大きな茶色のアイコン、あるいは iPad なら右下のアイコンでアクセスすることができます。
「なんだものを売っているのか」と思って興味を失われた人もいるかもしれませんが、よくよく考えてみるとこれはすごいことだということがわかります。
1. アプリとサービスの集約
たとえばいくら Word や Excel が大勢の人に利用されていると言っても、その上で動く便利なプラグインやテンプレートは別のサイトにいかなくては手に入りません。それとて、そもそもそのサイトを知っていればの話です。
Evernote が Trunk にこうした情報をまとめてくれているおかげで、「ちょっとスキャナーと Evernote を一緒に使いたいけどどういう選択肢があるだろうか?」と思ったときに探すのが簡単になるのです。
2. Evernote がプラットフォーム化した
Evernote はこれまでブラウザか、クライアントを通して利用するだけのサービスでした。しかし API を通じてさまざまなアプリやサービスと連携するようになったことで、Evernote は急速に「記憶のプラットフォーム」と変貌したといえます。多くのウェブサービスはまだこのレベルに到達していません。
むかし Palm という携帯デバイスではカレンダーや住所録といった「基本アプリ」にも代替のアプリが制作されていましたが、同じように今後 Evernote のクライアント自体の代替アプリ、あるいはもっと専門化したアプリが開発されることも多いにあり得ます。
Evernote がプラットフォームとなったことを如実にしめしているのが、この Trunk なのです。
Trunk で公開しよう
もしあなたが開発者であったり、著者であったり、特異なノートの収集をもっているなら、今後 Evernote Trunk で公開できる可能性があります。
すでに iPhone アプリやウェブサービスについては優先的に追加され、書籍なども(拙著の Evernote ハンドブック、黒本も含めて)次々に追加されています。
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アップルが iPhone / iPod Touch を通して iTunes ストアのものをプロモーションできるのと同じように、Evernote に関して何か制作した人はすぐにでも Evernote にコンタクトをとることをおすすめします。
Trunk でみつけたちょっと便利なアプリ・サービスたち
Egretlist
すでに多くのユーザーを獲得している Egretlist は Evernote の Todo チェックボックスを利用したタスク管理ツールです。
よくタスク管理アプリというと「やること」が表になっているだけで味気なく思われる人もいるようですが、Egretlist を使えば Evernote の側でノートのなかの好きな部分にチェックボックスを挿入しておけば、Egretlist がそれを収集して、完了しているかどうかも含めて同期をまかなってくれます。
Evernote にできないことをアプリが実現する、とてもよい例ですね。
» Egretlist
Nobze
Egretlist と同様、タスクを管理するサービスである Nobze は GTD を強く意識して設計されています。
Egretlist が iPhone アプリにとどまっているのに対して、Nobze はブラウザ・iPhone・iPad のどこからでも使うことができるという長所もありますね。
Evernote のチェックボックスをつかって GTD を実践したい人はぜひチェックしてみてください。
» Nozbe
ぐるなび
アプリではなくても、Evernote との連携をしているサイトなら Trunk でそれを紹介することができます。
たとえばグルメサイト「ぐるなび」の右タブに「Evernote にクリップする」というボタンが追加されていたことに気づいてましたか?
このボタンを使えば店の情報をウェブクリッパーを経由して一発で取り込むことができます。
» ぐるなび
PDFPen
Mac OS X のプレビューには最低限の PDF 編集機能がありますが、もうちょっと高度な編集を行いたい、文字の追加や削除、あるいはサインを PDF 上に直接行いたいというときに利用できるのが TextExpanderで有名な Smile 社の PDFPen です。
Evernote に取り込まれている PDF は Evernote のなかから開いて直接編集しても変更が Evernote に反映されます。プレミアム機能を利用している人はこれが履歴にも残りますので、PDF を Evernote 内で編集するというのはよいワークフローでもあるのです。
» PDFPen
まとめ
まだ Trunk に含まれているサービスはそれほど多くありません。また日本語化されているアプリやサービスも限定的ですので、Evernote がプラットフォーム化した恩恵をフルに享受できそうなのはもうちょっとあとです。
それでもときどき Trunk をのぞいてみれば、これまで使ったことのなかった新しいアプリやサービスが追加されているかもしれません。Evernote について最小限の手間で最大限情報を集める場所としても、Trunk は要チェックです。
今週の本
今週は英語の本ばかり読んでいましたのでなかなか紹介しづらいのですが、洋書をよむために最近取り入れているアプリについてご紹介します。
Amazon の傘下に入って洋書のオーディオブックでは並ぶものがない Audible から、iPhone アプリが提供されています。
通常オーディオブックは iPod アプリの中に入れて利用していましたが、Audible アプリはこの iPod 内のオーディオブックも検索するうえに、自前でサーバーからオーディオブックをダウンロードする機能もついています。
また iPod ではできない「30秒進める」「ブックマークを追加する」といった動作を単純なスワイプで可能にしています。
すでに日本語訳で読んでいる本などだと、Audible で聞いてみると面白いくらいに理解できますので英語のヒアリングにも利用することができます。洋書好きな人はぜひお試しください。
» Audible
東京の実家に帰るたびに驚くのは父親がどんどんと IT 化して、iPad や Evernote も使いこなしつつあるということです。そうかと思っていると、先日は母から「Facebook って、入っても問題ないの?」と聞かれて耳を疑ったということがありました。
両親は地元で多くの人と交流する機会が多いので、情報をメモしたり、ウェブでつながるというチャンスも多いと思うのですが、その一方でどれだけウェブサービスの裾野が広がってきたかという証拠でもあるようです。
そんなことを言っていたら義理の妹夫婦もそろって iPhone に乗り換えるときいて、もしかして自分なのか? 自分が何か伝染させているのか? と自問自答する晩夏です。