その.mdファイルは、中身は普通のテキストファイルです。データベースではなく、ごく普通のテキストエディタから開けるファイルです。
たとえば、それはどのような違いを生み出すでしょうか。
答えは、Summonです。
情報のSummonに違いが生まれます。
たとえばSpotlight
MacのSpotlightは、設定しておけばアプリケーションだけでなく書類やPDFファイルも検索してくれます。
で、Obsidianが作るのはテキストファイルなのでした。
つまり、それも検索対象になりえます。
ファイル数が多いとさすがに少し待たされるものの、何一つアプリケーションを切り替えることなく、ダイレクトに情報を取り出せます。
テキストファイルという情報単位を作るからこそ、OSの標準的な機能と親和性が高いのです。
でもって、このことは「情報は即座に入れられるだけでなく、即座に取り出せることもまた重要」という別の論点を立ち上げます。
その検討は別の回に譲るとして、まずは、他のアプリケーションの介在なしに保存した情報が取り出せることは、かなり快適である、という点は述べておきます。
たとえば検索
以下は、Obsidianでキーワード検索したときの結果です。
キーワードを含む行が抜粋され、それをクリックすると、該当行にジャンプします。
「show more context」ボタンを押せば、該当行に加えて前後2行の表示もしてくれます。
それをババーっと読んでいくだけで、自分のメモの──内容を含んだ──ブラウジングが可能です。
一方で、Evernoteでキーワード検索すると、以下のような結果になります。
エディタ内で該当する箇所をハイライト表示してくれるものの、それはエディタでノートを開いてみるまでは見えてきません。
一つのノート内に複数のキーワードがあり、それがウィンドウ内に収まらなければスクロールが必要です。
少なくともこれは「一覧」ではありませんし、快適なブラウジングも難しいでしょう。
特定の情報が書かれたノートを、しかも「あれについて書いたはず」という認識があるノートを探す場合なら、Evernoteの検索で良いでしょう。
タイトルさえ見れば、なんとなく目星がつきます。
一方で、「このキーワードについて自分は過去に何を書いたかな」ということをザッピングしたい場合は、Obsidianの検索結果の方が便利です。
少なくとも、検索結果が100以上返ってくる場合は、圧倒的にObsidianの方が手早いでしょう。
やはり、情報の呼び出し方に違いがあるわけです。
Obsidian + VS Code
さらに言えば、Obsidianで情報を保存するフォルダを、VS Codeのワークスペースに取り込んでおけば、他の情報(たとえば原稿ファイル)なども含めてgrep検索できます。
Obsidianで作ったデータだからといって、Obsidianでしか扱えない、ということはありません。
特殊な加工やデータ変換などせずとも、そのままテキストファイルが扱える他のアプリケーションで操作できます。
そう。操作できるのです。
単に閲覧・検索できるだけでなく、他のアプリケーションでファイルの中身を編集してもまったく問題ありません。
特殊なデータの形式を使わず、単にテキストファイルである、ということはそのようなアプリケーションの移動を容易にする、という大きなメリットを持ちます。
ツールを越境できるのです。
他のツールでも容易にSummonできる。
これもまた大きな違いの一つだと言えるでしょう。
さいごに
もちろん、特殊な形式でデータを保存する情報ツールは、それをするだけのメリットを持っています。
何も無意味なことをしているわけではありません。
しかし、そこで提供されるメリットがそれほど必要でないのならば、そして、メリットのトレードオフとして失われている別のメリットが必要ならば、脱データベースアプリケーションしてみてもよいでしょう。
その解がObsidianだけということはありません。
むしろ、もっと原始的にテキストファイルから情報管理を始めてみるのが、案外新しい発見を導くこともありそうです。
特に、パソコンを使い出したときからクラウドツールが当たり前だった世代には、新鮮な発見がたくさん眠っているかもしれません。
Follow @rashita2
まさか2020年になって、プレーンテキストで情報管理するのが良い、みたいな話を書く事になるとは想像もしていませんでした。
もちろん、最新ツールは便利なのでそれは有効に使っていきたいのですが、そもそもとして「パソコンでは何ができるのか」を確認する上でも、この辺の技術に触れておくのは悪くなさそうです。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。