たとえば、以下のような図(ないしマップ)を書くのです。
こうしたものを書き下ろすことで、脳の短期的な記憶領域ではカバーできない対象を捉えることができるようになります。
二つのポイント
手書きは自由です。定まったフォーマットはありません。従わなければいけない規則が緩いのが手書きの最大のメリットだと言ってもよいでしょう(これはアナログでも、デジタルでも同様です)。
よって、この図を書き下ろすときも、基本的に自由にやればよいのですが、いくつか気をつけたいことはあります。
- 関係性を明示する
- 一枚にまとめる
ポイント1:関係性を明示する
単に要素を列挙するだけならリストを作ればよいですし、それを階層関係に落とし込むならアウトライン(≒再帰的リスト)を使えばよいわけです。こうした図を作ることは、そのような記法(フォーマット)では表せない要素同士の関係性を示すことが目的としてあります。
よって、「線」を活用します。
まず要素を線で囲みます。その囲み方(円なのか楕円なのか四角なのか)によって、要素を分類できます。色を変えることでもそれは可能ですが、黒一色でも分類が可能なわけです。
さらに、要素同士を線(またや矢印)でつなぎます。線だけならば同等の、矢印ならば片方からもう片方への展開(あるいは発展)を、両矢印なら相互作用があることを示せます。点線を使えば、弱い関係性を示すこともできます。どれも、リストやアウトラインでは難しい表現です。
矢印の上に言葉を乗せることでどんな関係性があるかも示せますし、複数の要素を大きく括ることで、中分類・大分類を示すこともできます。
このように、言葉に加えて線をうまく使うことで、要素同士の関係性を図の上で表現できるようになります。
ポイント2: 一枚にまとめる
もう一つのポイントが、可能な限り一枚の紙に収めるように書くことです。
こうした図は、全体の詳細を把握するために書いているわけではありません。あくまで、要素同士の関係性を俯瞰するために書いています。そして、俯瞰において「一覧できること」はきわめて重要です。紙が、8×8枚の巨大なサイズになれば、もはや「一覧している」感覚は薄れるでしょう。
よって一枚に収めるのがベストですが、最初はうまくいかないかもしれません。そうしたときは、まず何枚になってもいいからまとめてみて、その後でそうしてまとめたものを、さらにまとめるという再帰的な手順を踏むとよいでしょう。それを繰り返していくうちに、徐々に思考の粒度が上がっていきます。
もちろん、紙の限られたスペースを活用するために、詳述するのではなく、単語かせめてフレーズまでに言葉を収めておくのも大切です。もっと言えば、その事象をある単語に代表させるという知的操作がここでは大切になってきます。
図化の参考になるもの
同様の手法は、立花隆さんの『「知」のソフトウェア』では材料メモとして紹介されています。
また、川喜田二郎さんの『発想法』の中では、KJ法A型図解がこれに相当するでしょう。
どちらも、たくさんの要素を平面上に配置し、その関係性の全体像を捉えるために行われるメソッドです。
さいごに
今回紹介したのは、一枚の紙と鉛筆(と消しゴム)だけを使うきわめてシンプルな手法です。実際はここに、色ペンと付箋が加わることで、さらに広い表現力を持たせることが可能です。
とは言え、最初に必要なのは一枚の紙と鉛筆だけです。それだけあれば、自分のアイデアの整理、読んだ書籍の内容理解、会議の内容などを俯瞰できるようになります。もちろんこれは、デジタルツールを使った「手書き」においても同じことが言えます。
▼今週の一冊:
先週から引き続いて読んでいます。思った以上にボリュームがある本なのでじっくりじわじわと読み進めております。
Follow @rashita2
よ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜やく、第一章のリライトが終了しました。ほかにもやることはありますし、そもそもあと6章残っているわけですが、それでも長らく書きあぐねていた第一章が完成したのはかなり気分が良いものです。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。