もし、メモが習慣になっていないなら、ぜひ今年からそれを習慣にしてみましょう。毎日少しずつ残すメモがあるかないかで、知的生産の幅はぐっと変わってきます。ぜひとも身につけたい習慣です。
最終的には、次のような状態に到ればよいでしょう。
- 思いついたことは即座にメモする
- 書き終えたメモは一か所に集める
- そのメモを見返し活用する
文句のつけ所はありません。理想気体ならぬ理想メモ習慣です。
では、どうしたらそのような状態に至れるのかといえば、上に挙げたようなことをとりあえずは目指さないことです。
あまりに高すぎる負荷
思いついたことはなんでも即座に書き留め、そうしたメモを一か所に集めて、折に触れて読み返して活用できたら実に素晴らしいことですが、どう考えても、これまで一切メモしてこなかった人間にその状態にいきなり至ることを求めるのはハードルが高すぎます。
理想メモ習慣は、目指すべきゴールであって、一歩目を踏み出すスタートではありません。では、スタートはどこなのでしょうか。
それは「とりあえず、メモすること」です。
メモをはじめる
対象はなんでも構いません。書くツールだって、書き方だってまったくの自由です。とりあえず、何かをメモしてみること。何かを書き留めてみること。まずは、そこからウォーミングアップしていった方がよいでしょう。
よくよく考えてみてください。これまでほとんど運動をしたことがない人間に、「さあ、マラソンを走ってみましょう」というのがどれだけハードなことなのかを。あるいは「さあ、マラソンの練習をしてみましょう」でも同じでしょう。土台無理な話なのです。
それよりも、ウォーキングや軽いジョギングから始めるのがまっとうなやり方ではないでしょうか。メモ習慣だって同じです。まず、「何かを書き留める」ことに慣れることから始めるのです。
軽めの一歩
もう一度言いますが、ツールはなんでも構いません。ノートでも手帳でもTwitterでもEvernoteでもなんでもOKです。一つのツールに固執する必要もありません。手近なツールに書きつけましょう。
内容だって、なんでも構いません。読んだ記事の感想やちょっとイライラしたことや感動した映画の感想など対象はなんでもありえます。ただ、「なんでもいい」という自由すぎる形だと結局うまく書けないことが多いので、最初はワンテーマについて限ってみるのも手でしょう。
- ダジャレを思いついたらメモする
- トラブルが起きたらメモする
- 読みたい本があったらメモする
こういうテーマを設定しておき、思いついたたびに書き留めるようにします。慣れてきたら、徐々にテーマを増やしていけばいいでしょう。
段階的レベルアップ
そんな風にバラバラにメモしたら、うまく活用できないんじゃないか? と心配になられるかもしれません。安心してください。その通りです。
バラバラなツールにメモするようにすると、「あれっ、どこに保存したっけな?」という事例が必ず出てきます。また、メモするテーマが限られていると、「あっ、あれについてメモしておけばよかった」という事例も出てきます。
それがメモ習慣をレベルアップさせるタイミングなのです。
メモが散逸していると利用しにくいと体感したら、それをまとめようとする行為に意義を見いだせるようになります。また、メモしなかったことを後悔するなら、次回からは誰かから言われなくてもメモするようになります。習慣がバージョンアップしていくのです。
そのようにして、少しずつメモの理想状態に近づいていけば、超えるべきハードルは一塊の大きなものではなく、小分けされた階段のようになるのです。
さいごに
この話は、「失敗を経験せよ」と言っているように聞こえますが、まさにそう言っています。ただし、少し言い換えれば、「小さな壁に何度もぶつかれ」と言っているのです。
最初から、誰かが整えた「完璧な方法」を実践しようとすると、運動不足の人がマラソンに出場する結果になりかねません。それよりも、段階的にメモに「慣れて」いく方がはるかに現実的でしょう。
加えて言えば、そのように徐々に階段を上っていくことで、自分が登りたい地点に近づけるようになります。たとえば、メモの一元化は必要なことですが、絶対に必要というわけではありません。自分の環境で使いやすい二つのメモ場所があって、その二つを探すことができるなら、二元管理でも問題ないのです。
そういう塩梅については、実践を重ねて確かめてみるしかありません。だからこそ、小さな階段を少しずつ上っていくのです。
とりあえずは、理想型をスタート地点にしないことです。それは、はるか先にある、うっすらと見えているくらいの状態で問題ありません。
▼今週の一冊:
今回は知的生産寄りの話でしたが、それをタスク管理寄りにしたのが以下の一冊です。新年を始めるにあたって、タスク管理も見直してみると良いかもしれません。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。