「発想スポット」、お持ちですか?

カテゴリー: R25世代の知的生産


「ノマド」という言葉がビジネスでも馴染むようになってきました。ビジネスパーソンのオフィスはIT機器の高機能化・低価格化、ネットインフラの整備などによって変化し続けています。

第一の変化はPCの導入によるOA化。第二の変化がPCを前提としたファイルのやりとりがもたらすデジタル・オフィスの出現。そして第三の変化がデジタルオフィスを前提としたノマドワーキング・スタイルの登場。現在はこの3つめの変化の始まりに位置するのではないでしょうか。

本書は、そのノマドワーキング・スタイルを実現させるためには何が必要なのかを実践的な視点から紹介してくれている本です。

中谷 [健一
ダイヤモンド社 ( 2010-06-04 )
ISBN: 9784478012963
おすすめ度:

 

ノマドとは何か

『仕事するのにオフィスはいらない』の中で佐々木俊尚氏はノマドが持つ4つの特徴をあげられています。私なりにその4つの特徴はまとめると

  1. どこでも仕事ができる
  2. つながりを選ぶ
  3. セルフコントロールができる
  4. 情報強者

 
となります。ノマドが持つこの「どこでも仕事ができる」にフォーカスを当てて、普通のビジネスパーソンでも活用できる方法を提案しているのが本書の特徴だといえるでしょう。

著者の中谷氏は「はじめに」の中で以下のように書かれています。

 そもそも、フリーランスにならなくても、パソコン片手に街をオフィス代わりに働くというワークスタイルは、十分に実現できます。
 むしろ、会社に勤めるビジネスパーソンが「ノマドワーキング」というワークスタイルを上手に活用することにより、フリーランサーには真似のできない自由度の高いキャリアアップを実現することもできます。

では、ノマドワーキングスタイルを実現すればどのようなメリットがあるのでしょうか。
私が考えるそのメリットは二つあります。

 
前者は本書を直接参照してもらうとして、今回は「場所の力」について少し考えてみましょう。

 

アイデアは場所を選ぶ

発想と場所の関係性は昔から語られてきました。欧陽修の三上(馬上、枕上、厠上)はすでに有名ですし、ジョン・C・マクスウェルもその著書の中で「考える場所」を持つことの重要性について語っています。

集中する環境と時間の確保はアイデアを考える上では欠かせないものだと思います。現在のオフィスや自分のデスクは発想しやすい環境でしょうか。そうでなければオフィスにこだわらず「発想向き」の場所に移動しましょう。

そんなときに、環境を変えて自分を物理的に追い込んでいくと、集中力が否応なく高まります。オフィスから一歩抜け出して、近くの公園を散歩したり、本屋で立ち読みをしたりするだけでも、身体を動かす効果から、いいアイデアは生まれやすくなります。

どのような場所が「発想向き」なのかは個人差があると思います。ノマドワーカーの視点で「仕事場所」を求め始めるとその可能性の多さに驚かれるかも知れません。オフィス以外であればどこでも良いというわけではなく、そこには考慮に入れるべきいくつかの要素があります。

カフェを例に挙げれば、電源のあるなし、無線LAN、椅子やテーブルの作り、照明、BGM、他のお客の雰囲気、値段といった様々な要素が組み合わさってきます。これらを加味しながら自分のベストポイントを探していく必要があります。

私もよく「オフィス・マクドナルド」を利用します。電源もあるし、比較的広い机が使える店舗が近くにあるのでよくそこで原稿を書いたりしています。しかし、休日の昼間に行くとあまりの家族連れの多さにすぐに場所を変えるはめになります。同じ場所でも曜日や時間帯によって状況が変わってくるのが「オフィス選び」の面白い所です。

ベストポイントを見つけて、そこに通うようになると徐々に「脳のスイッチ」ができはじめます。その場所に行けば脳がそのモードに切り替わる、そんな感覚が「脳のスイッチ」が押されたと呼べるものです。こうなるとしめたもので、作業にかかるための集中力がずいぶん早く得られることになります。考えてみるとオフィスではさまざまな仕事をこなさざる得ないので特定のモードに入るのは難しいのかも知れません。

アイデア不足でお困りの方は、オフィスで頭を抱えている状況から一歩抜け出してみて、自分なりの「発想スポット」を作れば状況が変化する可能性があります。

 

まとめ

スマートフォンが普及し、iPadが発売された事でオフィス以外で作業をする人はこれからどんどん増えてくることでしょう。そういった「場所を選ばないで仕事をする環境作り」に興味があるならば、一読しておく価値がある本です。

こういったノマドワークスタイルを実践する人が増えてくれば、なかなか面白い未来が待っているかも知れません。メイドカフェや猫カフェあるいは最近ではハンダ付けカフェなるものも登場しています。であれば、「発想カフェ」なんてものがあってもよいかもしれません。

一人で考え事したい人には個室を、何か新しいアイデアを求めている人には野良ブレスト用のスペース(+有能なファシリテーター)を提供するカフェがあればビジネスパーソンのアイデア不足に大きな恵みの雨を降らせてくれる事でしょう。

 

中谷 [健一
ダイヤモンド社 ( 2010-06-04 )
ISBN: 9784478012963
おすすめ度:

▼参考文献:

デジタルオフィスの入門書。

野口 悠紀雄
講談社 ( 2008-09-18 )
ISBN: 9784062149488
おすすめ度:

 
ノマドはここから始まった。

佐々木 俊尚
光文社 ( 2009-07-16 )
ISBN: 9784334035150
おすすめ度:

 
アイディアについての深い考察。

外山 滋比古
筑摩書房 ( 2010-02-09 )
ISBN: 9784480426857
おすすめ度:

 
何を、どう考えたらよいのかについての指針。

▼今週の一冊:

穴に落ち込んでいるな、と感じたときによく読み返す本です。本といっても七つの習慣のテーマに合わせて格言が並んでいるだけなのですが、こういった言葉は時々樫の杖ようにしっかりと歩みを支えてくれます。例えば以下のような言葉。

この世で一番大事なことは、
自分が「どこ」にいるか
ということではなく、
「どの方向に」向かっているか、
ということである。
 ──オリバー・ウェンデル・ホームズ

フランクリンコヴィージャパン
キングベアー出版 ( 2003-12 )
ISBN: 9784906638253
おすすめ度:

 

▼編集後記:

今回ご紹介した『「どこでもオフィス」仕事術』は出版社さまよりご献本いただいた本です。こういった新しい本と出会えるというのもBlogを続けている事の醍醐味ですね。特に今回のこの本は自分の方向性とぴたり合致していたので大変面白く読ませていただきました。ありがとうございます。

 
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

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