「Evernote ハンドブック」の前書きで Evernote CEO の Phil Libin 氏が興味深いことを書いてくださっています。
もちろん、私たちはまだ完璧な「第 2 の脳」を作るには至っていませんが、毎日そこにむけて進歩を重ねています。(ただし)運の良いことに、Evernote が便利であるにはそれが完璧である必要はありません。
いくら Evernote でも完璧なツールであるわけではありません。たとえば 画像認識はまだ日本語を認識しませんし、英語であっても図案化されたフォントなどは認識できないことが多くあります。それ以外にも、Evernote にはまだ改善の余地のある部分がたくさんあるのですが、だからといって Phil の言うとおり、その有用さが減るわけではありません。
その理由は、Evernote の情報ツールとしての強みが膨大なメタデータから来ているからです。こうしたメタデータがあるかぎり、検索に近道を作り出すことは可能で、Evernote の「第2の脳」としての価値はなかなか減らないのです。
今日は Evernote 中・上級者への近道である、メタデータの話題と、それを検索するための属性絞り込みの話題についてまとめておこうと思います。
What’s in a note?
ノートにはなにが含まれてるのでしょう?
ウェブクリッパーを利用してノートを作っても、iPhone から気軽に写真をとって Evernote に送ったとしても、そのノートには膨大なメタデータが追加されています。
メタデータとは、データに付いてのデータ、いうなれば子供の体操着につけた名札のようなものです。これさえあれば、直接その子に聞かなくても、クラスと番号と名前がわかるわけです。
たとえば作成した日付、更新日といった、普通のファイルにも存在するメタデータ以外に、Evernote のノートには「緯度」「経度」「高度」などの位置情報があり、クライアントから編集可能です。
また、それに加えて「ウェブからクリップしたノート」「メールで送信したノート」「添付ファイルがある」「画像が含まれるノート」「PDFが含まれるノート」「画像認識があるかないか」「手書きの画像が含まれているか」といった情報が実はひそかに保存されています。
これを検索で利用しない手はありません。
属性絞り込みで検索を効率的に
Evernote の左カラムをタブ欄の下までスクロールすると、さまざまな属性についての欄が存在します。この部分は大きく分けて「期間」「添付ファイル」「ソース」という分類に分かれていて、それぞれを指定して条件を絞り込んでゆくことができます。
たとえば「去年作成した」、「画像を含むノート」で「メールで送信した」という条件を設定した上でさらにタグの検索や、本文の検索を入力すれば、単純にすべてのノートに対して検索を行うよりも効率良く情報を探すことができます。
また、絞り込むのとは逆にあえて「ウェブクリップしたノート」だけを表示させて、過去に自分が入力したノートから興味深い話題を探しまわるということもできます。
こうした多軸検索を利用することに慣れてくると、ノートがいくらあってもなくす気がしなくなってきます。なくす気がしなくなると、Evernote への信頼がぐんと高まります。この感覚は、初めて GMail に触れた時の感覚に似ているかもしれません。
属性を使った検索の実際
ふだんは属性絞り込みについて忘れていることが多いでしょうから、実際に何かを探している際の手順を以下に示しておこうと思います。
1. まずキーワードで検索する
執筆中に、日本の著名人が語った読書についての名言を思い出したいと思ったとします。でもそれを誰か思い出すことができません。そこで、まず「読書」について検索バーに入力してみます。
2. 日付で絞り込み
キーワードが漠然としていましたので、当然のようにたくさんノートが検索されましたね。でも幸い、思い出したいノートはたしか今年出会ったものであることを覚えていましたので、属性検索で「今年」「以降」を選びます。
3. ソースでさらに絞り込み
もう7つまで絞り込めましたのでノートを1つ1つ探しても大した時間はかかりませんが、どうせですからソースも絞り込んでみます。たしかこの引用はネット上でウェブページで見たものだったはず、というかすかな記憶を頼りに、「Webページ」の属性で絞り込みます。
するとズバリ、先月に吉田松陰の「凡そ読書の法は吾が心を虚しくし…」で始まる引用文をクリップしていたのに絞り込むことができました。
こうした思い出し方は私たちが自分たちの脳で記憶していることを引き出す時ととても似ています。人間の記憶は面白いもので、詳細な日付は覚えていないくせに「たしか去年の秋ごろ」「たぶんあの場所」といった曖昧な印象はなかなか消えないのです。
属性絞り込みは私たちの「第2の脳」である Evernote でなにかを思い出すために自在に調整できる記憶のバルブなのです。ぜひ次回、Evernote で何かを思い出そうとしている時に利用してみてください。
今週の本
Evernoteについては「Evernote ハンドブック」でかなり書いたのですが、それでも初心者から中級者にむけたユースケースなどのノウハウについてはまだまだ書き足りないという気がしていました。
そこでネタフルのコグレマサトさんと、みたいもん!のいしたにまさきさんとともに、『できるポケット+ Evernote 活用編」』という本を一気呵成に書き上げてしまいました。
現在の Evernote の機能で考えられる限りの使い方を3人がこれでもかと書きまくっています。手前味噌で申し訳ありませんが、もしよければご予約お願いいたします!
本業の関係で来週いっぱい、ノルウェーに一週間ほど旅立っています。ブログや執筆ができるように無線 LAN でホテルを選ぶあたり、性懲りもない性格があらわれています。ホテルに帰るたびに見たこと、聞いたことをかためてツイッターに送ることにしますので、乞うご期待!
▼堀 E. 正岳:
Evernoteエバンジェリスト。「Evernoteハンドブック」の執筆や「Evernote日本語掲示板」のモデレータを通して、愛してやまないEvernoteの育て方を伝道中。Lifehacking.jp主宰。