ノートをうまく使えるようになるための3つのコツ

カテゴリー: R25世代の知的生産


最近ノートの使い方に関する本が人気になっているようです。それは裏を返せばノートの使い方に困っている方が多くいらっしゃる、ということなのでしょう。今回は『知的生産の技術』を引きながら、ノートをうまく使えるようになるコツを紹介します。

要点だけ先に書くと、コツは以下の3つになります。

それぞれシンプルなものですが、少し詳しくみていきましょう。


 

メモとノートは分ける

メモとノートはまったく役割が違うものです。それを混同してしまうと情報がうまく扱えなくなります。

メモは「頭に思い浮かんだものを書き留めるため」に使います。人間の短期記憶はかなり頼りにならないので、メ思い浮かんだ事をメモに書き写して保存するわけです。

ノートは「情報を整理し、思考するため」に使います。

メモに書いた事は重要度がまちまちである場合が多いでしょう。また雑多な情報が入り乱れているはずなので、時間が経ってからメモを見返しても「なにがなんやら」という状況に陥りがちです。これを整理するために「メモからノートに転記」という作業が必要になります。

ノートのもう一つの意味は、「じっくり考えるスペース」を設ける事もあります。人の思考は枠組みに縛られやすい性質を持っています。狭いメモ帳よりも広いノートの方が発想が広がりやすいと思います。また、1ページに一つのテーマを設定することで、思考を集中させやすくなります。そのページを見ている間は「今はこれについて考える時」という風に思考に枠組みを与えて、方向性を一点に集中させる事ができます。

『知的生産の技術』の著者である梅棹忠夫氏は「カードは、メモではない」とはっきり言い切っておられますが、それを踏まえて「ノートは、メモではない」と私も言っておきます。
※梅棹氏はノートは使わず全てカードを使っているため、意味としては同じ事。

 

ノートを見返す習慣を身につける

さて、ノートを使ってメモを整理して何かアイデアを思い付いたとします。それで終わりではありません。そのアイデアがすぐに使えるものではないかもしれません。あるいは、もう少し改良の余地があるかもしれません。あるいは自分が考えつかなかったまったく別の事に使えるかも知れません。

ノートはまだそれ自体では「生産物」にはなっていません。それは企画書や原稿のアイデアやまだ見ぬ新商品の「原材料」です。あるいは卵と言ってもいいかもしれません。

大きさもまちまち、成長の度合いもバラバラ、そもそも何の卵かもまだ分からないようなものたち。それは孵化するタイミングを窺っているのかもしれません。あるいはすでに死んでいるのかも知れません。そういった卵をチェックして回る監視員が必要になってきます。

それがノートを見返す習慣の意味です。「あ、確かあのアイデアはノートに書いてあったな」という場合だけではなく、折に触れノートを見返すことで、自分のアイデアを「再発見」することができます。ノートを読み返せば、新しくアイデアが思い付くこともあるでしょう。そういう時は既存のページに書き加えても、新しいページに書いてみても良いと思います。

また、自分が見返したくなるようにノートの書き方を工夫してみることも重要です。丁寧な字で書いたり、3色のペンで使い分けたりしてノートを取るのも「見返すこと」が前提になっているからです。自分の好みのノートを使うというのも同様です。いかにすれば「見返しやすいか」を考えてみるとよいでしょう。

 

ノートを使い続ける

おそらくこれが一番ハードルが高いのかもしれません。今までメモやノートを使ってこなかった人にとって乗り越えるべき最大の関門と言えそうです。

ノートでも同じだが、カードはとくに、長年つづけてやらなければ効果はすくない。いわば蓄積効果の問題なのだから、一時的におもいついてやってみても、なんのためにこんなことをするのか、わからぬうちにいやになる。

_『知的生産の技術』p63

おそらくですがノート1冊を使うか使わないかぐらいではノートが持っている力の大きさというのはあまり実感できないと思います。他の人がやっているからやってみようという気持ちで始めても、それだけでは続かないでしょう。でも、続けるしかありません。

最初のうちは一冊のノートにこだわる必要はありません。例え情報が散らばる事になったとしても、使っているノートに飽きを感じたら、別の面白そうなノートに乗り換えても良いと思います。
幸い現代を生きる私たちにはEvernoteという心強い味方がいます。複数のノートを使っても、それらをスキャンしてEvernoteに入れておけば「一元管理」は実現できます。

何より大切なのは、「ノートを使う習慣」を身につける事です。そのためには、いろいろなノートに浮気をするというのも最初は必要な事かも知れません。

 

まとめ

今回はノートを使えるようになるためのコツを紹介しました。再度書いておきます。

・メモとノートは分ける
・ノートを見返す習慣を身につける
・ノートを使い続ける

今回はデジタルではなく普通のメモとかノートとかを想定して書きました。しかしデジタルの要素が入ってもあまり変わらないのではないかと思います。

道具はつかうものであって、道具につかわれてはつまらない。道具をつかいこなすためには、その道具の構造や性能をよくわきまえて、ちょうど適合する場面でそれをつかわなければならない。
 _『知的生産の技術』p62

「メモ」とは何のために取っているのか、「ノート」は何のために使っているのか。一度じっくりと考えて自分の環境に合わせた、ノート術を構築してみて下さい。
 

▼参考文献:

この連載のバイブル的存在です。

梅棹 忠夫
岩波書店 ( 1969-07 )
ISBN: 9784004150930
おすすめ度:

▼関連エントリー:

思考を整理する「メタ・ノート」習慣を始めよう! 

▼今週の一冊:

上にも書きましたが、一冊のノートを使うことにこだわるよりも、最初はいろいろ移り気でOKだと思います。そういった考えを勉強法に応用したのが以下の一冊。

具体的な勉強法というよりも、社会人が勉強とどのように付き合っていくかのアドバイスが込められた一冊です。最近人気の勉強会についても触れられています。IT業界とありますが、一般的なビジネスパーソンに広く応用できるものだと思います。

奥 乃美, 渋川 よしき
技術評論社 ( 2010-05-07 )
ISBN: 9784774142593
おすすめ度:

 

▼編集後記:

どうやったら、一日に書ける原稿量を最大化できるかを目下模索中です。生活のリズムから見直しているのですが、いろいろな発見があります。やはり基本は朝起きてから昼ぐらいまでにばーんと集中して書いた方が良いようです。ただ、午後から急激にテンションが落ちるのが問題。もう一段階アクセルを踏めるようにならないと・・・。

 
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

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