Evernote と Dropbox の使い分けかたを理解する

カテゴリー: Evernoteの育て方




「Evernote と Dropbox はどのように使い分ければいいのですか?」この質問をこれまでに何度かいただいたことがあります。

Dropbox はいわゆるクラウドのなかのストレージですが、手元にもコピーが残っている点が特徴的です。私は自分のホームフォルダをまるごとクラウドのなかで管理するために利用しています。

この、「どんなファイルでも入れられる」「複数のパソコンと携帯電話で閲覧できる」という点が、Evernote、とくにプレミアム会員になっていてどんなファイルでも添付できるかたには使い方の違いがわからなくてまぎらわしいようです。

しかし、二つのサービスの決定的な違いを意識すれば、両者を使い分ける必要はなくなります。それぞれの強みを生かした「クラウド情報整理」の高みにさらに近づくことができるのです。

 

Evernote 最大の誤解

Evernote にまつわる誤解のなかで最も大きいのが、「Evernote はオンラインストレージだ」というものです。

なるほど、プレミアム会員ならどんなファイルでもノートに添付することが可能ですが、だからといってすべてのファイルを Evernote のなかに入れるわけではありません。

それはまるで、「思い出になる品をとっておこう」と思って、レシートの一枚一枚から、使い終わった紅茶のティーバックで残しておこうとするようなものです。「全てのファイルがあること」=「すべてを覚えていること」ではないのです。

それに対して Dropbox はまさにストレージそのものです。そこには必要なファイルから、無用なファイル、あるいは使い方がわからない設定ファイルにいたるまで、何でも「ファイルシステム」という形で入れておくのです。

言い換えれば、Dropbox はファイルを蓄積するサービスなのに対して、Evernote は記憶を蓄積するサービスなのです。ただ、記憶に関係したファイルを入れられますので、二つは一見似ているように見えるだけなのです。

二つの使い分け

「Evernote はストレージではない」ということが腑に落ちると、使い方の違いも水と油が自然に分かれるように見えてきます。

最後の点はとくに重要です。たとえば、現在ハードディスクにどんなファイルがどんなフォルダ構造で入っているのかを数年後に思い出したいとはあまり思わないはずです。ハードディスクのなかのファイル構造は、いま便利であることが求められているわけで、覚える意味はないのです。これが Dropbox の領分です。

数年後になっても思い出したいのは、ファイルではなくてその中身であり、情報園そのものです。それはウェブページであったり、一枚の画像であったり、ちょっとした記憶の断片であったりします。これこそが、Evernote の領分なのです。

iPhone / iPad のキラーアプリ

こうしてみると、Evernote と Dropbox は相補的な関係にあることがわかると思います。どこでもファイルをアクセスできる Dropbox と、いつでも記憶にアクセスできる Evernote 。この二つは、「クラウド情報整理術」の双璧をなすキラーサービスなのです。

この二つが iPhone / iPad 上で両方とも必須のキラーアプリであるのも、偶然ではありません。



Evernote for iPhone はそのまま iPad 上でも利用でき、iPhone 以上に広いスクリーンが自在に情報へのアクセスを可能にしてくれます。

先日リリースされた Dropbox for iPad も数あるオンラインストレージのなかで群をぬいて便利なアプリになっています。特に、Dropbox に格納されたファイルを iPad 上のサードパーティーのアプリで開くことができる機能は今後さまざまな連携を生み出しそうです。

今週の一冊

本は一冊でも多く読めた方がよいのでしょうか? 本好きとしては、もちろん、と答えたいところなのですが、そうはいっても一生に読める本は限られています。向こう五十年、毎日一冊を読むことがたとえ可能だったとしても二万冊に届きません。逆の意味で、「肉体は悲し」というわけです。

そんな多読に対するあこがれを胸に、松本正剛氏の『多読術』を読むと大いに励まされます。いいえ、ここには「多読ための方法」が直接書かれているわけではありません(ヒントは随所にありますが)。

むしろ氏は、本との向き合いによって自分が「編集」されてゆくこと、自分でわかっているつもりだった自分の「好み」が深められてゆくことをわかりやすく解説し、それだからこそ自分のペースで自分を深める読み方が重要なのだということを説いていきます。

山に登り、麓におりてからもう一度高嶺まで登れといわれても難しいでしょう。読書もそれに似ているのでなかなか続かないことがあります。でも本書に書かれている、多読を通した自己発見という視点が身につくと、一冊一冊のつながりが山脈の尾根をあるくようなものだと気付かされます。

一歩深い多読の世界を拓きたいかたにおすすめの一冊です。

松岡 正剛
筑摩書房 ( 2009-04-08 )
ISBN: 9784480688071
おすすめ度:

 

▼編集後記:

日本での iPad の発売日が決まり、予約も始まった背後で Evernote の iPad 版の日本語翻訳作業も急ピッチで進めています(ボランティアで)。

iPad は画面が広い分だけさまざまな利用法のヒントがそこら中に隠れています。iPad を手に入れて、Evernote アプリを開いたら、ぜひこうした細かいところの作り込みもご覧いただければ幸いです。


▼堀 E. 正岳:
Evernoteエバンジェリスト。「Evernoteハンドブック」の執筆や「Evernote日本語掲示板」のモデレータを通して、愛してやまないEvernoteの育て方を伝道中。Lifehacking.jp主宰。

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