結果、求めていた曲が見つかりはしましたが、それはカバーであったりオルゴールであったりで、求めていたアーティストによるもの、ではありませんでした。
以前はApple Musicのサブスクリプションを契約していましたが、2018年5月からSpotifyに乗り換えたため、Spotifyで見つからなければ、iTunes Storeで探すことになります。
実際、iTunes Storeでも探してみましたが残念ながら見つからず。
こうなると最後の手段はCDを求めること。Amazonで検索してみたら、普通に売っており即座に注文。
翌日には届き、ようやく求めていた音楽に浸ることができました。
それにしても、なぜこれほどまでに音楽を求めるのでしょうか?
ちゃんとした形で聴きたい
不意に聴きたくなったアーティストの歌というのは、20年前に好んで聴いていたものです。その後もときどき聴くことはあったのですが、2000年代に入り、音楽がデジタル化した頃からいつの間にか聴かなくなっていました。
それが、最近になって不意にどうしようもなく聴きたくなり、最初はYouTubeで検索して見つかったPVを観たりしていました。
でも、やはりちゃんとした形で聴きたいということで、「YouTube Music」への加入も検討・・・するも、聴いているうちに、
「ちゃんとアルバムに収録されている順番でぜんぶ聴きたい!」
という気持ちがふつふつと湧いてきて(YouTubeで聴けるのはヒット曲中心で、いわゆるB面の曲は聴けないことが多い)、iTunes Storeでも見つからなかったため、最後の手段のCDを買うことになりました。
ここまでして音楽を求めるのには、理由があります。
音楽が大切な理由
音楽は、それを聴いていたときの記憶と密接にリンクしているからです。
20年前も今と同じく記録をつけていましたが、当然すべてを記録しきれるものではありません。
記録しきれなかった部分は音楽が補完してくれるのです。
聴くことで聴いていた当時の記憶が蘇ります。
記録のミゾが埋められる感覚です。
ちょうど、古代の昆虫が琥珀に包まれることで、その姿を現代にまで伝えることができたのと同様に、音楽に包まれた記憶が生きながらえるわけです。
重要なことは、当時考えていたことが音楽によって文字通り“再生”されうることです。
当時の自分の脳と今の自分の脳とが音楽を介して同期することで、新たな切り口が浮かび上がることが期待できます。並列化と言ってもいいかもしれません。
たとえば、
- どうして当時はこのことに気づかなかったのだろう?(今なら当然なのに)
- どうして今は楽しく感じられないのだろう?(当時は楽しくて仕方なかったのに)
といったギャップの存在に気づきます。
ギャップを前にすると、おのずとこれを埋めたくなりますから、それが創造の起点になるわけです。
なお、僕の「20年前に聴いていたアーティスト」については今回はあえて書きません(改めてこのアーティストについて調べてみているのですが、調べれば調べるほどに唸らされる生き方をした方であり、そのように感じるのは今の自分だからということもあり、そこに面白さを感じています)。
これを読んでくださっているあなたも「昔はよく聴いていたのに最近は聴かなくなった音楽」というものがあると思いますので、ぜひこの機会にもう一度聴いてみてください。
ギャップに出会えるはずです。
不意に思い出した一冊
音楽つながりで、7年前に読んだ本のことを不意に思い出しました(これもまたギャップの効用です)。読書メモで以下のくだりを抜き書きしていました。
僕の目から見ると、音楽業界では、今の時代では当たり前と言えることを、ちゃんとやっている人たちが少ないように見えます。僕はその人たちを横目で見て、「なんでこの時代にそんなことをやっているんだろう?」と疑問に思うことも多いのです。
反面、非常に理にかなっている部分も多いのですが、それは日本の音楽業界の歴史と共に作られてきた伝統なのかもしれません。
良い部分は参考にさせていただきますが、それ以外の部分は残響の中では常識とは考えません。時々、「音楽業界では当たり前だ」というような発言をする人がいます。僕はそういう人に対して、「勝手に言っていればいい」と思うことが多いのです。
音楽はクリエイティブな世界です。その世界にいるのであれば、従来の仕事のやり方やシステムには疑いを持たなければならないと思います。
一般の会社も同じです。従来の仕事のやり方を続けている会社は、伸びていないと思います。自分たちの過去の歴史や伝統、慣習を改善し、改革していくことがこの時代に生き延びる道だと思っています。(p.176)
いろいろな人にいろいろな聴き方をしてもらえれば、音楽はよりいっそう広がっていけるでしょう。残響では、音楽を売るというよりは、リスナーの人たちにまだ感じたことのない世界観を音楽から感じてもらい、今までに体験したことのない音楽の楽しみ方を知って欲しいという考えがあります。
自分たちの想いや生き方などを、リスナーの皆さんに理解してもらえるようなところまで伝えていければ、音楽の世界を広げられると思います。
この時代、作り手は単純にモノを売るだけでなく、その背景にある想いやメッセージを読みとてもらうような努力が必要なのだと思います。そして、そういった努力が、販売に結びついていくのではないでしょうか。(p.187)
僕は、自分がやっていることや会社でやっていることは正しいと信じていますが、反面、今やっていることが本当に正しいのかを疑っていることも多いのです。特に仕事は正解がないものです。「売り上げを上げられることが正解なのだ」と言われたらそれまでなのですが、それはうわべだけのものだと思っています。
たとえ売り上げを上げていても、それによって失うものがあるようであれば、それは正解だとは言えないと思います。深くものを考え、自分の仕事を常に疑い、周りの人に自分は正しいのかを確認しながら進むことを心がけています。(p.193)