取りかかりにくい仕事は分割する、その分割点の見つけ方



エンジニアのための時間活用術、第16回です。

一見するとうまくいきそうなのに、実際にはあまりうまくいかない方法の1つに、その日にやる仕事をリストアップする、という仕事術があります。

たとえば、以下のようなリストです。

確かに、このようにリストアップすることで少なくともその日に自分がやるべきことややりたいことを把握することはできます。

でも、リストの項目を1つ1つ見ていったときに、すぐに取りかかれそうなものもあれば、改めて手順を考える必要があるものもあります。

改めて手順を考える必要があるものは、当然ひと手間増えることになるので、「ちょっと面倒だからこれは後にしよう」と先送りの対象になりがちです。

その結果、このリストはそのまま翌日に持ち越され、最悪の場合、期限前日まで同じ持ち越しが行われ、追い詰められることになります。

必要なことは、やはり「改めて手順を考える必要があるもの」をまず何とかすること。

具体的には、よく言われることですが、分割することです。問題はどのように分割すればいいか、その分割点の見つけ方でしょう。

フェーズに分けてボトルネックを見極める

僕自身、今から18年前の2001年冬に初めてウェブの連載を持たせてもらったとき、まさにこの問題に直面していました。

書く内容は毎回違いますが、締め切りは毎週変わらずやってきます。一定のスピードで動くベルトコンベアを前にしているような心境です。うまく書ける時もあれば、何を書くかすら思いつかずに時間ばかりが過ぎていくこともあります。

一定スピードの“締め切りコンベア”と変速スピードの自分のコンディション。この2つを同期させるには、自分のスピードを一定に近づけるほかありません。

そこで、「文章を書く」という仕事を複数のフェーズに分割することで、どこがボトルネックになっているのかを知ろうとしました。

最初は次のような構成でした。

たいへんシンプルですが、それまでは「○○の原稿を書く」という大きなカタマリでしか捉えられなかったことを考えれば格段の進歩です。

3つのフェーズに分けたことで、自然と「月曜日は資料集め」、「火曜日は挿入画像を作る」、「水曜日は原稿作成」といった具合に、複数の日に分散させるようになりました。

こうすることで、「今日は資料を集めるだけでいいのか」ということで気が楽になります。それまでは「とにかく原稿を書かなくては」という焦りが先に立って、それだけでストレスになっていました。

あとで気づいたことですが、資料を読んだり、必要な画像をキャプチャしたり、といった作業をじっくりと時間をとって行うことで、原稿作成がスムーズに進むのです。

逆に、焦っていきなり原稿を書き始めると、書いては消して、書いては消してを繰り返すなどして、時間をかけた割には満足のいく成果が得られないことが少なくありません。

もちろん、それぞれのフェーズの区切りは便宜上のものです。資料を集めるといっても、実際にやり始めればキリがありませんし、挿入画像の作成も、原稿を書き始めてみたら足りなかった、ということで、追加で作成することもざらにあるからです。

それでも、フェーズに分けることには意味があります。何であれ沿うべき道筋というものが得られるからです。

最終的に納品可能な原稿を作る、という大きなゴールを見据えた時に、

の両方を把握できるからです。

車で慣れない場所を訪れる時に、カーナビが役に立つように、慣れない仕事に取り組む上ではルートの確認(フェーズの明確化)と現在地の確認(どこまで終わったか)が手がかりになるのです。

地図通りに走ったものの、「実は工事中だった」という想定外の事情によってリルートさせられることはあるでしょう。仕事でも、こうした不測の事態はあるもので、それでもゴールが明確になっていれば、“リルート”も難しくないはずです。

避けるべきは、最終的なゴールが見えないままに走り出したばかりに、途中で行き詰まってしまい、そのまま立ち往生してしまうことです。こうなると、リカバリーは非常に困難といえるでしょう。

また、フェーズに分けることで、自分にとってどのフェーズが鬼門なのかも分かるようになります。何をすべきかは分かっていても、どこから取りかかるべきかでいつも悩んでしまう。自分のことながら、むしろ自分のことだからこそ気づきにくいといえます。

そこで、フェーズをより詳細に分割します。

例えば、僕にとっては「原稿作成」という最終フェーズがネックでした。資料も集まったし、挿入すべき画像も準備ができている、あとは書き出すだけだ、というお膳立てがかえってプレッシャーになってしまい、「きちんと書き上げなければならない」という強迫観念にとらわれてしまうのです。

ボトルネックを解体する

そこで、「原稿作成」をさらに3つのフェーズに分けました。

細かい部分はさておき、原稿に盛り込むべき内容を整理して、箇条書きにまとめるのが「原稿ラフ」。

それをベースに、不完全でも変でも良いから、とにかく最後まで書き上げる「原稿作成」。

そして、時間をおいて改めて原稿を読み返し、表現の調整や必要に応じておかしなところを書き直す「推敲&納品」。

仕事が増えたように見えますが、取りかかりのプレッシャーはぐっと下がりました。

さらに、それぞれのフェーズを同じ日に配置しないことで、全体として無理なく1つの仕事を進めることができるようにもなりました。まとめると、次のような感じです。

大きな山を5つに分けてならしているわけです。こうして、「無理のないペース配分」が得られるわけです。



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参考文献:

2010年に読んで、その後の僕の「タスク管理」に影響を与えた一冊。それまでに実践してきた「タスクシュート」の考え方と一致している部分が多く、共感を覚えつつ繰り返し読みました。短くシンプルでありながら実に的確な指摘の数々に唸らされます。

以下はそんな指摘の一部。

2006年刊行の本書ですが、未だにAmazonに在庫がしっかりあり、長く売れ続けていることがうかがえます。



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