▼倉園佳三さんのプロフィール
「ZONOゼミ」とは僕が勝手に呼んでる呼称で、倉園佳三さん(以下、ZONOさん)が受講者全員の質問(現在の悩みや課題など)に一人ずつ、対話を重ねながら答えていく形式のセミナーです。
ZONOさんが受講者の一人の質問に答えている間、残りの受講者はそのやり取りを見守ることになるのですが、受講者一人ひとりのバックグラウンドはそれぞれに違えど、ZONOさんの回答は個別具体的でありながらも、ほかの受講者の問題意識にもフックする普遍性を帯びており、決して他人事とは思えず、全員が聴き入る時間となります。
ZONOさんは事前に発表内容を準備して臨むという、いわゆるプレゼンは行わず、手ぶらで会場入りした上で、当日の受講者からの質問にその場で即興で答えていくというスタイル。さながらライブ・パフォーマンスのようです。
昨年8月にこのスタイル(ZONOスタイル)に出会い、魅了され、僕が2015年から続けているオウンスタイル養成講座のゲスト講師としてお招きすることができ、当日を迎えました。
当日の「ZONOゼミ」は、特に示し合わせたわけでもないのに、受講者から寄せられた質問群がお互いに接点を持っており、必然的にZONOさんの回答もその接点を辿るようにして展開され、まるで事前に入念に練られたシナリオがあったかのようでした。
あまりにもマジカルな展開だったため、より多くの方にもシェアしたいと考え、ZONOさんご本人はもちろん、当日の受講者の方にもご許可をいただけましたので、当日の「ZONOゼミ」の内容の書き起こしを本記事にてご紹介します。
録音音声をもとにした書き起こしではありますが、読みやすさを優先し一部加筆修正している部分があります。あらかじめご了承ください。また、受講者の個人名はイニシャルにて表記しています。
「ZONOゼミ」はトータル2時間13分ありますが、今回の書き起こしは冒頭の26分ぶんが対象です。
「計画を立ててから始める」を実践したいが、うまくいかない
いま、CHANGESという有料ブログを週に1回書いているんですが、明日が締め切りで、実はまだ書いてなくてですね(苦笑)、今週はテーマが決まっていまして、それがまさに「計画」だったんですよ。こういうシンクロが起こるんですね。
頭の中にはもう書きたいことが全部入っているんで、そのへんの話からしていきますね。
私は「計画を手放すやり方」というのをおすすめしてるんですね。ただ、すべての計画を手放しましょう、と言っているわけではないんです。
車のヘッドライト、わかりますよね。夜に走っていたら、ライトを照らしたところだけ明るく見えて、ライトの当たらない部分は闇になります。
ライトを照らしたところが前に動いていくわけです。これが僕のやり方なんです。
▼ZONOさんの板書をもとに大橋が作成。
この(ライトが当たっている)見えている部分は計画を立てても良いんです。具体的にどれぐらいかというと、2日か3日くらい。僕の中では3日くらいですかね。
3日先くらいまでは何となく予想がつきます。もし、それよりも先のことまで全部予想しないといけないとしたらどうでしょう。
未来は見通せない
僕はよく、ベンチャー企業の起業家になりたい高校生の集まりとかに呼ばれるんです。高校生の15~18歳のうちから起業家社長を目指している子どもたちで、たぶん、親もそうだと思うんです。英才教育なんでしょうね。
僕はその集まりの中でファシリテーターを頼まれるわけです。テーマはすでに決まっていて、「20年後の自分を思い浮かべて、その日のタイムテーブルを書いてみてください」と言うんですね。
つまり、37、8の自分が一日どんな行動しているか、を書くんですけど、まったく絵に描いた餅なんですよ。僕自身は、37,8はもう通り過ぎているので。
それを目指して日々行動しなさいという考え方なのでしょう。ただ、重要なのは、ここ(ライトが当たっていない部分)は見えないということを認めることだと僕は思ってるんです。
学校に行くと、優等生と劣等生に分かれますよね。そして真ん中も含め3つぐらいに分かれる。ちびまる子ちゃんで言えば、ちびまる子ちゃんが真ん中くらいで、永沢くんが一番下で、一番上は花輪くん。
優等生と呼ばれる人たちは何が優れているかというと、学校で行われていることを先回りして何かするのがうまいんです。先生が何を期待しているかとか、テストにはここが出る、ヤマを張ると言いますね、とか、先を読むとトクをすることがあるわけです。
こういう感じで高校、大学までいくと、ここ(20年先)が見えると思い込んじゃうんです。
確かに学校だと見えるんです。なぜかというと、やっていることがシンプルだからです。行く時間も決まっているし、メンバーも同じだし、行事も同じ。突発的な何かは起こらないんですね。学校が潰れそうになるということもないわけで。
ところが、世の中に出ると、会社が傾くとか、突然入ってきた新入社員がとんでもない人だったとか、自分の上についた、ヘッドハンティングされた上司が何か自分と合わないとか、学校では起こらないイレギュラーなことがいっぱい起こるわけです。
これがこの(ライトが当たっていない)暗闇だと僕は思うんですね。だから、ここを読もうとしてはいけない、というのが第一歩なんです。
ここを読もうとすること、つまり未来の予測には大きく分けて2つしかないんです。
- すごく明るい未来を描く
- すごく暗い未来を描く
このどちらかしかなくて、真ん中という予測はしないんです。予測する意味がないですから。「何も起こらない明日が来るだろう」みたいな。
僕は昨日、このオウンスタイルが明日開催されると思っていたので、「あぁ、きっといい時間になるんだろうな」と思ってました。
もし、僕が「実力以上の場に呼ばれたんじゃないかな」という気がしていたら、不安が襲ってきますよね。「明日突然みんなが難しい質問をしてきたらどうしよう?」とか。
つまり、不安かハッピーか、どちらかしかないわけです。
Fさん、多くの場合、僕らはどちらに行きがちだと思いますか?
仕事とかになったら、ほぼ不安が98くらいなんです。
Fさん、もう1つ質問なんですが、98の不安のうち、実際にそれが的中するのはどれぐらいだと思いますか?
この2分の1の確率を98%不安に思っているというところが僕らの逃れざるメカニズムなんですね。
そうすると、このメカニズムをもとに計画を立てる、不安をもとにアクションを洗い出すことになりますよね。
そうなると、余計なリスクヘッジとか、自分の不安を取り除くための何かがいっぱい入ることになります。それを僕は要らないものだと思ってるんです。
「目標をはっきり決める」のはやめる
不安に傾けば傾くほど、やることが増えてきます。
たとえば、本来歩いて駅に行けばよかったのに、雨が降るかもしれないので、傘とカッパを手に持っている。なおかつぬかるみに足をつっこむかも知れないので、長靴もカバンの中に入れている。
さらに突然花粉が飛んでくるかも知れないので、花粉症の薬とマスクも、そしてもしかしたら天気が一転して超暑くなるかもしれないので、熱中症にならないようにペットボトルを3本くらいカバンに入れている。
もう軍隊の行進のように20kgぐらいの荷物を背負って行くことになる。これらの荷物を置いて、身軽に歩いたらどうよ、というのが今回お話ししているやり方なんです。
軍隊の行進でも身軽に歩いて行くのでも結局変わらないんです。予測不可能な未来を予測して出したアクションなので。
では、どうすればいいかというと、ぼんやりと行く先は決める必要はあります。たとえば、北海道に行くということであれば、南に走り始めたらダメですよね。最低限、北か南かの方向だけは決める。
目標は具体的であればあるほどよい、とよく言われます。たとえば、来年の今日までに年収500万になる、という目標を立てていたら500万円分の稼ぎしかできませんが、年収2000万になるという目標を立てれば、人は4倍がんばれる、と。
「お金持ちになる」というあいまいな目標設定ではなく、具体的な数字で目標を、しかも期限も合わせて設定するとよい、と。
でも、これは僕に言わせれば(ライトの当たっていない)暗闇の中の話だと思うんです。いつまでに年収がいくらになっているかなんて分かるわけがないんです。
にもかかわらず、こういった具体的な目標を決めてがんばろうとすると何が起こるか?
「今のままではまだまだ足りない、このペースでは目標に到達できない」という不安から、どんどん背負う荷物を増やしていき、いわゆる「タスクを消化できていない」という状況に追い込まれることになります。
重要なことは、一日にできるタスクの量とか、一つのアクションを片づける時間というのは人によってまちまちである、ということです。これが個性です。
それを1日8時間あるのだったら、これぐらいの仕事をこなせないといけない、と決めるのはまったく根拠がないんです。
「いま何がしたいか?」をイメージしながら日々を過ごす
なので、今後は目標をはっきり決めるということはやめて、ぼんやりと決めるにとどめる。その上で、毎日何を少しずつやっていくのですが、ここで重要なのは「いま何がしたいか?」を自分に聞くことです。「今日何がしたい?」と。
人間にはいろいろな状態があるので、たとえば、すごくクリエイティブなことができる日もあれば、単純作業が合っているという日もありますよね。その日その日のフィーリングによって決めるわけです。
ただ、締め切りがあるので、3日先くらいまでは確認しておいて、その点は考慮したうえでやることを決めます。
とにかく「いま何がしたい?」をイメージしながら日々やっていく。そうすると、暗闇の部分が少しずつ明確になっていきますよね。「あー、私はとりあえず北に向かっていたけど、近づいてみたら東北よりは上かもしれない」といったことがだんだん見えてくるんです。
「いま何がしたいか?」にもとづいて日々やっていけばいくほど、自分が目標だと思っていたものが具体的に見えてきます。その見えた方向に歩いて行く。
ときには間違っている場合もあります。そのときは少し後ろに下がって別の道に行く。
想定したアクションというものには何のリアルもないんです。まだやっていないから。そうではなく、アクションをした後に見える景色が本当のリアル。
今までのやり方は目標を想定して、その目標に達成するためのアクションを組み立てていってました。無理があるんです。頭で想像した予測なので。その通りになんて人間は動けないんです。
だから、2~3日くらいのタームの中で自分の気持ちに正直に「今日はこれをやる」、「今はこれをやる」、なんなら「今日は何にもしたくないから寝る」もぜんぜんアリなんですよ。
で、だんだん見えてきたものがリアルなゴール。
問題は、じゃぁいつそれが達成するのか? 気になりますよね。それだとイヤだ、と思われるかもしれないんですが、これが僕らの人生だ、と思うんですよね。
ここまでいかがですか?
それから「気が散る」とおっしゃいました。「気が散る」ことが悪いことだということですよね。一般的に気が散るのは注意力散漫で、何かに集中できないので効率が悪い、だから悪いと。
人の個性というのは、僕はこういう風になっていると思うんですね。一箇所を押すと、反対側が飛び出す。
▼ZONOさんの板書をもとに大橋が作成。
Fさんの「気が散る」はここなんです。「気が散る」の反対側に何かトンガリが出てくる。これは言ってみれば、興味があればすぐに動く、腰が軽いということですよね。
逆にここがへこんでいない人もいます。この人は集中力がすごく高いかもしれない。でも、興味があったらすぐ動くということは相対的に少ないでしょう。
もしかすると、一つのことをずっとやり続けるというのがこの人の強みなのかもしれません。
こういうことをしっかりと自分の中で認めてあげると、余計な心配をする必要がなくなります。
自分に合わないやり方を本やセミナーで得てきて、それをやらなければならない、と思う必要もなくなります。
それが最も楽でフラットで、Fさんらしい状態だと思うんです。
「いま何がしたいか?」を考えるときに「こうしなきゃいけない」ではなく、素直に自分の気持ちの中にある「やりたい」という衝動のほうに耳を貸す。
相対的なものなんです。人と比べたときに劣っているもの、人と比べたときに自分が持っていないもの、いわゆる隣の芝生は青く見える、という状態。
これは理屈に叶った仕組みになっていまして、人が誰かを見るときというのは、トンガリのほうしか見ないんですよ。その人の優れているところしか目に入らない。その優れたところが自分の中になければ気になりますよね。だから、隣の芝生が青く見えるんです。
周囲に自分と同じような人がいれば安心するけど、自分よりちゃんとしている人ばかりだと不安になる。
一方、「いま自分はこうしたい」は絶対的なんです。誰が何と言おうと私はそれがやりたいんです、と。もしかしたら、このやり方では損するかもしれません。
周囲に合わせたほうがお金がたくさん稼げていたかもしれない。もっといろいろな仕事ができていたかもしれない。でも、周囲に合わせていると、きっと「ちゃんとしないといけない」とか「気が散る」といった思いを抱かないといけないので、実はあんまり心地よくないんじゃないか、と。
結果として、周囲は気にせず「いま自分はこうしたい」でいくほうが自分の能力が高く発揮されるはずです。Fさんがもっともできるであろうはずの仕事が最高の品質でできる、ということです。
こういう話をすると、「やりたいことだけをやれ」と言われたら、「やらなければいけないこと」をやらなくなるんじゃないか、と思われるかもしれません。
でも、そんなことは絶対に無いんです。目の前に締め切りがあれば、早く終わらせたいじゃないですか。それはすなわち「やりたいこと」なんです。だから心配しなくても大丈夫です。
自分の気持ちに素直に、「今日は、いまは何をやりたい?」と聞きながらやっていけばOKです。
(書き起こし終わり)
ZONOさんの新刊『グッドバイブス ご機嫌な仕事』
2月15日発売ですが、すでに「早読み版」をいち早く入手し、読ませていただいています。まさに「ZONOゼミ」の熱気が詰まった内容です。
「早読み版」の表紙は赤でしたが、最終版は緑になりました。
編集後記
今日の記事を書くのにかかった時間:214分。https://t.co/GWWN3UdHjv
大半は26分ぶんの音声の書き起こしにかかった145分(音声の時間の5.5倍)。一気に145分ではなく毎日15分くらいずつ進捗。やはり「小さな習慣」がカギ。 pic.twitter.com/dLSUWwjIl1— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) January 31, 2019