環境ドリブンを意図的に活用するには?|手元に置いておきたい情報について考える(3)

カテゴリー: 発見の記録

By: marcusrgCC BY 2.0


手元に置いておきたい情報を有効に活用するにはどうすれば良いか、というテーマで書いているのですが、第1回では対象となる情報をしかるべき条件で振り分けること、第2回では、自分のモードをシフトさせて情報に向かわせるようにすること、についてそれぞれ書きました。

自分のモードをシフトさせる方法としては、「環境ドリブン」と「自分ドリブン」の2種類がありそうなことも確認できました。

主体的に行動を起こす「自分ドリブン」に対して、「環境ドリブン」は文字通り外部環境の変化がトリガー(きっかけ)となって行動を起こすことになるため、確実性の面で不安が残ります。

まず、環境をととのえる

とは言え、日々の生活を振り返ってみると、ほとんどの行動は「環境ドリブン」に支配されているのではないかと思うくらいに、主体性発揮の余地が限られていることに気づきます。

朝起きて、顔を洗って、身支度をして、玄関で靴を履いて、ドアの施錠をして…といった一連の行動は、習慣というベルトコンベアーに運ばれつつ、ところどころ蛇口があったり、タオルがあったり、ドアがあったりという、ある種の“目印”があるからこそ「あ、蛇口だ。ひねろう」とか「あ、鍵穴だ。カギを掛けよう」といった行動ができるのだと考えられます。この場合、習慣もまた環境の一部と言えるでしょう。

もし、毎日蛇口の位置や形状がランダムに変わったり、鍵穴がいつもの場所になかったりすれば、相当混乱するはずです。とは言え、たとえ位置や形状が変わっていても、蛇口と認識されうるものが見つかれば、いつも通りひねることによって水が出てきて目的を果たすことができるでしょう。

ここから引き出せることは、人は常に行動のための何らかの手がかりを手探りしながら生きているのではないか、という仮説です。

それゆえ、ラベリングすることによって、恣意的に環境を作り出し、行動を促す効果を期待するわけです。

適切にラベリングが行われていれば、自分のモードに合致するラベルのついた情報だけのリストに目を通すことで、環境ドリブンが起こり、「あとで活用する」が実行に移されやすくなります。これまであまり意図的に活用することができなかった「無意識」を動員することにつながります。


メールソフト「Thunderbird」による環境ドリブン事例

例えば、Thunderbirdでは物理的にメールを振り分けるフォルダ機能の他に「検索フォルダ」という機能があり、これを使えばメールのうち特定のラベルがついているメールだけを抽出表示させた一覧をいつでも見ることができるようになります。

「GmailとThunderbirdを組み合わせて使う(4)」では、「今日やるべきことの一覧」フォルダに振り分けたメールのうち、「要返信」というラベルがついたメールだけを抽出表示させる検索フォルダを定義した例をご紹介していますが、「メール返信しよう」というモードになった時にはそれに関連するメールだけを見える状態にして、あとは見えなくしてしまう方がいいわけです。

以下は、フォルダで優先順位を分けている、「今日やるべきことの一覧」の例です。

以下は、「今日やること(Action)」フォルダのうち「要返信(Reply)」ラベルが適用されたメールのみを表示する検索フォルダの内容、「今日返信すべきメールの一覧」の例です。

このようにして、仕事に向かう時に「今日やるべきことは?」あるいは「今日返信すべきメールは?」という質問にすぐに答えてくれる秘書のような役割をThunderbirdに託すことができます。

せっかく「メール返信しよう」というモードになっているのに、メール返信に関係のない情報が目に入ってくると、別の環境ドリブンを引き起こしてしまいます。

環境ドリブンを意図的に活用するには?

まとめると、以下の2つの流れのいずれかを採用することになります。

いずれも、環境ドリブンを意図的に活用するための方法と言えます。

例えば、やる気が起きなくても、とりあえず「メール返信」のフォルダを開くことで、そこには返信が必要なメールが並んでいるために、見ているうちに自分のモードが「メール返信」にシフトしていくわけです。

情報活用についても、この方法が適用できるでしょう。

とは言え、これだけでは十分ではありません。なぜなら「手元に置いておきたい」という意図は「返信しなければならない」という要求とは似て非なるものだからです。

「返信」という要求は期限のある緊急タスクであるのに対して、「手元に置いておきたい」という意図には特に期限がないからです(強いて言えば、重要タスク)。

それゆえ、このあたりのことを考慮に入れた「露出管理」が必要になってきます。

これについては、また次回。

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