デジタルノート論考 その1

カテゴリー: R25世代の知的生産


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メモの基本は、ともかく書きつけ、それをまとめておくことです。これはアナログであってもデジタルであっても変わりません。

むしろ、メモをとる状況はさまざまなのですから、アナログとデジタルの両方を駆使して情報を保存しておくことが、現代のメモ事情では必要でしょう。

でもってこれは記録の扱い方の基礎でもあります。言い換えれば、入り口部分です。断片的な情報として固定し、後から利用する。一回性の情報であればこれだけでも十分でしょう。

しかし、情報には違った利用法もあります。それはたとえば、一つのテーマについて継続的に考えていく、というようなものです。これはどちらかと言えば、メモではなく、ノートの領分と言えます。

アナログノートであれば、そうしたときは一冊ノートを新調し、それをテーマノートとして使えば十分です。では、デジタルノートではどうでしょうか。

膨大な情報が扱え、さらにそれらの編集が自由自在なデジタルノートは、案外これが難しくなります。そこで今回は、デジタルツールにおけるテーマノートの設定について考えてみましょう。

Evernote-ノートブック

デジタルのノートアプリならなんでも構わないのですが、ここでは代表例としてEvernoteをあげておきます。OneNoteでもUlyssesでも、その他のアプリでも基本的に同じことが言えます。

まず、テーマを設定したら、そのテーマをタイトルに持つノートブックを作ります。あとは、思いついたことをそこに書き込んでいく。簡単ですね。一つの注意点としては、そのノートブックはリストの上部にくるようにしておきましょう。でないと、時間が経ったときにそのノートブックを作っていたことを忘れてしまいます。存在を忘れると読み返すこともなくなるので、継続的な思考が難しくなります。

アナログのノートであれば、机の上にノートを「置いておく」ことができるわけですが、デジタルではそれができません。だからこそ、普段目に入る場所にそのノートブックを置いておくのがポイントです。

WorkFlowy-項目

続いてアウトライナーです。どんなアウトライナーを使ってもいいのですが、ここではWorkFlowyにしておきましょう。

ここでもやることはEvernoteと同じです。テーマ名の項目を作り、そこに関係することを日々綴っていく。手間でなければ、書き込む日付ごとに下位項目を作ってもいいかもしれません。でもって、そのテーマ項目は上部に配置しておくのがやはり肝です。

アウトライナーを使うとうれしいのは、項目の移動が自由なので上の方に配置するのが簡単なこと。ボリュームが増えてきたときに古い項目だけを隠すことができる点があります。ただし、箇条書きのフォーマットに長文を書き込む点に苦手感を感じる人もいますので、そこは好みに合わせると良いでしょう。

テキストファイル

パソコンの方であれば、まっさきに思いつくのがテキストファイルによる管理かもしれません。Wordなどを使ってもよいのですが、どんな端末でも楽々読み込める点、加工しやすい点などを合わせて考えるとやはりプレーンなテキストファイルは最強です。

テーマひとつにつき一つのテキストファイルを作り、保存しておく。保存先をクラウドストレージにすれば完璧です。

一見簡単な方法で、思いついた瞬間はうまくいくのですが、時間が経ち数が増えてくるといろいろ問題が生じます。ファイルが見つけにくくなってきて、埋没問題が生じ始めます。

だったらとデスクトップ上にフィアルを配置しても、やはり数が増えてくると限界はあります。ファイルにラベル付けする工夫などでも対処は可能でしょうが、完全ではありません。かといって分類のためにフォルダを作り始めると、ますます探すときに混乱しはじめます。

テーマの総数が少ないならば魅力的な方法ですが、そうでない場合は他のツールを検討した方がよいでしょう。

ちなみに、一つのテキストファイルに継続的に書き込んでいく場合、「新規追加を下にするか上にするか」問題があります。一見どうでもよさそうですが、これも一長一短あって、なかなか決められない問題です。

ブログ

まったく別の切り口として、ブログを作る、という方法があります。公開でも非公開でも構いません。自分のノートの代わりにブログシステムを使う、というだけです。

テーマを設定し、それに関することを淡々と記事にしていく。カテゴリは気にせずに、できるだけタグだけは付けていく。それだけで立派なテーマノートになります。そのブログのURLを、ブラウザのブックマークツールバーにでも置いておけば、いつも目にすることになるでしょう。

トップページにアクセスすれば直近の自分の「思考」をリコールできますし、それが契機となって次の思考が引き出されるかもしれません。

加えて言うならば、たとえアクセス数が0であっても、ブログの記事を書こうとすると「外向き」の文章が出てきます。多少は意味の通ったまとまりのある文章が出てくる、ということです。そのテーマについてのちのちまとめるつもりがあるならば、書き殴りよりもそうしたまとまりのある文章の方がよいでしょう。

ただしそれが過剰に機能し、「ちゃんとした文章を書かなければ」となってしまうと、ノートの書き込みが増えません。そういう意識が強く働いてしまう人は、自分のローカルで展開していった方がよいでしょう。ポイントは、どちらの方がすいすい筆が進むか、書く意欲が湧くかで、それを見極めて書く場所を選択してみるとよいでしょう。

ちなみに、上記と同じことはScrapboxでもできます。これも強力な選択肢の一つです。

さいごに

今回は、四種のデジタルツールについてノート的に考えてみました。

現代は瞬間的に断片的な情報を高速に大量に流す人が目立つ傾向にありますが、そうでないタイプの思考を求めている人もいるでしょう。そうした場合には、時間をかけてゆっくり対象について考えいく時間と、そのためのツールが必要となります。

この記事を参考にそうした思考を進めて頂ければ、それにまさる喜びはありません。

▼今週の一冊:

一時期ノート術の本がたくさん出ていたのですが、最近は少し下火になってきましたね。ビジネスにおけるノートの使い方なら、以下の本が簡単にまとまっています。

でもって、2018年3月のKindle月替わりセールの対象です。


▼編集後記:

同じく3月の月替わりセールで拙著『「目標」の研究』が値引きとなっております。目標についていろいろ考えた本なのでよろしければぜひ。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

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