対策はシンプルにこの裁量権を返上してしまうこと。
たとえば、仕事の関係者に「明日の15:00までにお送りします」とメールを打ってしまいます。この瞬間、“自由”が失われます。
でも、それでいいのです。
自分の信用を担保に差し出す
この「明日の15:00」という締切は自分で勝手に設定しただけなので、実際に15:00までに送れなくても支障はありません。でも、相手に宣言してしまった手前、これを破るのはばつが悪い。何度か繰り返せば信用を失うでしょう。
「また“時間指定メール”来たけど、今まで守られた試しがないんだよね(笑)」などと小馬鹿にされては逆効果です。
従って、現実的な期限設定が欠かせません。自分で自由に決められるのですからカッコつける必要はないのです。
つまりは『走れメロス』の以下のくだりです。
「ああ、王は悧巧(りこう)だ。自惚(うぬぼ)れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」
メロスは自らの信用を担保に王から時間的猶予を引き出します。さらに無二の友人であるセリヌンティウスの命を担保物権として差し出します。
#ただ、個人的にはこれはやり過ぎだと感じていて、セリヌンティウス的にはいい迷惑。担保としてはメロス自らの信用だけで十分だったのではないかと思うのです…。
ともあれ、「自分の都合でいかようにもできてしまう状況」をなくしてしまえばいいわけです。
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この考え方を応用すると個人のタスク管理、特にタスクの先送りを抑えるうえで役に立ちそうです。
そこで、ここは潔く、例えば、
「週明けの朝10時までにお送りします」
と伝えてしまいます。
こうすることで、自分の裁量範囲がぐっと限定されます。一見すると不利な立場に立たされたように感じられるかもしれませんが、実はその真逆です。
なぜか。
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