» 前回:記録管理について | Aliice pentagram
前回は、知的生産における記録の重要性を確認しました。人間の記憶は優秀であるにせよ限界を持っているので、それを補佐するために記録の力を活用したいところです。
今回は、その記録にはどのような種類があるのかを考えてみます。
記録の種類
よくある記録を箇条書きで並べてみましょう。
- 着想メモ
- スクラップ
- 読書メモ
- 作業日誌
- アーカイブ
- テンプレート
- チェックリスト
それぞれ見ていきます。
着想メモ
別名「アイデアメモ」。頭に閃いたものを書き留める記録です。
頭を働かせて何かを生み出すのが知的生産なのですから、頭を働かせなければ始まらないのは自明です。しかし人は、一度働かせた頭の出力を忘れてしまうことが往々にしてあります。それを記録して保存し、後から使うのが着想メモです。
この着想メモにもさまざまな粒度があるのですが、ここでは深入りしないでおきましょう。ともかく頭に閃いたことを書きつけ、保存するための記録です。
スクラップ
別名「資料」。誰かが書いたものを保存するための記録です。
現代で一番身近なのは、EvernoteのWebクリップでしょうが、Pocketのアーカイブでも、新聞の切り抜きでも、なんでも構いません。本のページをカメラで撮影するのも資料作成だと言えます。
自分が何かを生み出すときに、それらの資料を参考にして考えたり、あるいは引用したりして使うことになるのですが、一字一句正確に覚えていられる方のことが稀なので、記録化しておく必要があります。紙の本ならば買って家に置いておけば良いのですが、それ以外のものについては二、三手間必要かもしれません。
読書メモ
上記二つのハイブリッドがこの記録。自分が考えたことなのだけれども、何かの資料に基づいているのがこの記録です。
そうした記録を作る際、自分が考えたことだけを保存してしまうと片手落ちになりかねません。できるだけ、資料+着想の形で記録しておくのがベストです。そうしないと、あたかも完璧に自分のオリジナルな着想だと思って発表してしまう危険性あります。人の記憶は、そのくらい曖昧であることは覚えておいた方がよいでしょう。
アーカイブ
自分が作り出した成果物、提出したアウトプットも、役目を終えれば一つの記録となります。
この記録は、過去のアウトプットを参照したり、あるいは同じことの繰り返しを避けるためにも役立ちますが、もちろんそんなものすべてを覚えていられる人間などいません。私なんかは、一週間前に書いたブログの記事ですらほとんど思い出せないことが多々あります。
時間をかけて知的生産を続けていくためには、こうした記録も必要となります。
作業日誌
案外軽視されがちなのが、この記録です。どちらかと言えば、知的生産よりはタスク管理に比重がある記録かもしれません。
自分がどんな作業をしたのか、次にどんな作業をしようとしていたのかの覚え書きだと思ってください。前日分までの原稿を読み返せば、たちどころに次に何をやろうとしていたのを思い出せるならこうした記録は必要ないのですが、おそらくそれは超人の所行でしょう。私たち凡人には記録が必要です。
「あの部分には追記をしておこう」「ここは論理の補強が甘い」など、着想メモに近い内容が書かれることもあります。
テンプレート
汎用性の高い成果物の基盤。それがテンプレートです。
知的生産の内容面というよりは、効率面で効果を発揮する記録です。よく使うメールの文面が好例ですが、型どおりで良い、あるいは型どおりが望ましい他のアウトプットにでも役立ちます。
チェックリスト
こちらもタスク管理および効率面で役立つ記録です。
たとえば、「本の企画を考えるときに押さえておきたい10のポイント」や、「企画案を提出するときにチェックしたい5つの項目」などのチェックリストを作っておけば、ミスが減り、クオリティの平均的な底上げにつながります。もちろんチェックリストを満たしたからといって、偉大な作品が生まれるわけではありませんが、ミスは少ない方が良いでしょう。
さいごに
以上、おおざっぱな記録の種類を分類してみました。これらの記録が、知的生産活動を大きく補助してくれます。中には欠かせないものもあるでしょう。そうしたものにはたっぷりと注力しておきたいものです。
次回は、いかにそうした記録を作成するかについて考えてみることにします。
▼今週の一冊:
この記事を書いているときはまだ入手できていませんが、記事が公開されるころにはゲットし、熟読していることでしょう。
おそらく一記事かけて紹介することになるかと思いますが、フライング気味にここでも紹介しておきます。私の動物的直感が、面白くないことはまずないだろう、と予想しているので__この直感はめったに外れません__、おそらく面白くないことはないはずです。
» アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール
Follow @rashita2
好きなブログの中の人が本を出すというのは、なかなかの楽しみであり、いっそ祭り的な雰囲気すらします。セルフパブリッシングでもいいので、どんどんみんなが本を書いてくれたらいいのになと願う今日この頃です。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由