整理のコツは、最初にすべてをゴミ箱に移すこと。そこから必要なものを一つずつ戻していく。戻されなかったものはそのままゴミ箱に残るので改めて捨てる手間も決断も省ける。
— しごたのん (@shigotanon) 2016年11月16日
どんなことでも、一気に変えると必ずリバウンドするので、少しずつ進めるのが良い、と僕は考えていますが、こと「モノを減らす」については、「一気に」が効果的です。
このことは前々からいろいろな人に言われてきましたし、いろいろな本にも書いてありましたので、頭では分かっていました。
でも、その「一気に捨てる」という最初の一歩からして難易度が高い。
頭で分かっていても気持ちが付いてこないと動けないのです。
こういうときに役に立つのが物語。
「365日のシンプルライフ」という2014年公開のフィンランド映画がまさにこの「気持ち」を動かしてくれます。
以下、予告編です(01分33秒)。
持ちモノをすべてを貸し倉庫に預ける
主人公のペトリ青年(26歳)は失恋をきっかけに、人生をリセットするべく、ある試みを始めます。
モノであふれかえった自分の部屋からモノを一掃しようというのです。
手順は以下の4ステップ。
- 1.自分の持ちモノすべてを貸し庫に預ける
- 2.1日に1個だけ必要と思われるモノを倉庫から持って来る
- 3.1年間、続ける
- 4.1年間、何も買わない
引っ越すときのように部屋の中をまるっきりカラにするところから始めるわけです。
着ている服も「持ちモノ」にカウントされるため、映画の冒頭、ペトリは全裸の状態からスタートします。
ヘルシンキ(フィンランド)です。
雪が積もっています。
全裸です。
「そこまでやるか!」と思わせますが、こういうところで「気持ち」が揺さぶられるわけです。
さて、1日につき1個だけ倉庫からモノを持って来ることができるルールなので、まずは全裸の状態で倉庫に走ります(走って行ける距離なのです)。
1個目のモノとしてコートを選び、さっそく身にまとって帰ります。
部屋に帰ると、ベッドも枕もありませんから、このコートにくるまって眠るペトリ。
こうして、1日に1つずつモノを取り戻していきます。
毎日さまざまなモノを取り戻していきますが、その過程でペトリにさまざまな発見が訪れ「本当に必要なモノ」が少しずつ明らかになっていきます。
同時に、いかに不必要なモノに囲まれて生きてきたかを思い知ります。
これはとりもなおさず観ている我々にも突きつけられる無言のメッセージです。
カラにするからうまくいく
部屋にモノがあふれた状態ではどれが必要でどれが不要かを一つひとつ判断して処分するのは手間がかかります。
「これを処分するなら、あれも処分すべきではないか?」といった迷いが次々とわき出てきて、収拾がつかなくなるからです。
そうであれば一切合切を一時的に部屋から取り除き、ゼロリセットした状態から始めれば、迷いも一掃できるので合理的、というわけです。
1日に2つのモノを取り戻す方法
ペトリがいったいいくつのモノを持っていたのかは定かではありませんが、「1年間、続ける」ということから少なくとも365個はあるのでしょう。
毎日1つずつ、順調にモノが増えていくのですが、途中でペトリは、あるアイデアを思いつきます。
深夜0時に倉庫に行けば、今日と明日のモノを持ってこられる。
つまり、一日の終わりギリギリ(例えば、23時50分とか)に倉庫に行き、その日のうちに1つ取り出し、日付が変わったらもう1つ取り出す、という、まぁ、ライフハックですね。
このようなアイデアが浮かぶのは、早いところモノを取り戻したいという気持ちがあったからでしょう。非常に共感できます。
幸福度がどんどん増していく
この時点で、ペトリは次のような感想をもらしています。
毎日1個ずつ、モノを取り出していくたびに、幸福度がどんどん増していく。
何もかもが揃っていて、満たされている毎日。でも、それが当たり前になっていると、そこから「幸福」は感じられません。
それどころか「まだ足りない」という気持ちがつのるばかりで、買えば買うほど心が荒んでいくようにさえ感じられる。
服というモノを取り戻して「服に身を包むのは気持ちがいい♪」などと、にんまりとした笑顔で実に素朴な感想を漏らすペトリを見ていて、つくづくそう思いました。
食器類はまだ取り出していないようで、食生活は「手」が基本です。パンを片手に指でバターを塗って食べています。歯ブラシもないので、指で歯を磨いています。
それでも、実に幸せそうなペトリなのです。
もう何も欲しくない
このまま、すべてのモノを取り出していき、最終的には元の生活に戻るのかな、と思いきや、ペトリは予想外の“境地”に到達します。
最初の50~60個以降、何も欲しくない。
この先、どうすればいい?
本当に必要なものがこれ以上あるのか?
ここで、ペトリの祖母、つまりおばあちゃんが登場。ペトリに実に本質的なことを教えてくれます。
きっと同じようなことはこれまでにもペトリに何度も教え諭してきたのでしょう。でも、モノがたくさんあったときのペトリには届かなかった。
それが、モノがなくなった今、はっきりと悟った。
まさにここで「ああ、そういうことか」と観ている我々も腑に落ちるわけです。
あまり書くとネタバレになってしまうので、このあたりで…。
まとめ
この映画を観ていて、ふと気づいたのは、新しい習慣を身につけるときにも、この方法が効果的なのではないか、ということです。
新しい習慣とは、自分という“部屋”にとっては新しいモノです。そのままでは、すでにある習慣が邪魔をして、うまく入りません。“置き場所”がないからです。
そこで、いまある習慣はいったん全部やめて、空っぽの状態にしたうえで、そこに1つひとつ習慣を収めていく。
このとき、これまでやっていた習慣も、新しく始める習慣も、分け隔てなく自分の中に収まっていきます。
最終的に、「やろうと思ったけど、結局見送った新しい習慣」や「ずっとやっていたけど、今後はもうやらないことにした習慣」といったものが“倉庫”に残ることになるでしょう。
これらを見極めるのに、習慣が詰まった状態では難しいのです。
というわけで、「いつかモノを減らしたい!」あるいは「新しい習慣を始めたい!」とお考えの方は、ぜひペトリのチャレンジとその後の顛末を覗いてみてください。「気持ち」が動かされると思いますので。