「文章力を鍛える本」というと、必要以上に厳しかったり難しかったりするものですが、本書にはそういうところがありません。言わんとするところはシンプルで、しかも丁寧です。
ここで77のテクニックを紹介したりはしませんが、代表的なものをいくつかピックアップすれば、本書の概要はつかめるでしょう。
» 文章力の基本
短く書く
まずは「短く書くこと」です。小学校時代には「長く書ければ褒められる」傾向があるためか、文章につい、余計なことを含めたくなりますが、余計なことを読みたいという人は少ないのです。
最初の章で言われていることは、じつにわかりやすいものです。これだけで必ず文章はわかりやすくなりますから、何かを書くときには心がけましょう。
- 1.短く言い切る勇気を持つ
- 2.一度にたくさん運ぼうとしない
- 3.幹を一本一本立てていく
1は、「。」を多めに打つということです。本書では次の例が挙げられています。
最近、あるコンビニは、店舗内で焼き上げたパンの販売を始め、自然志向・健康志向の製品を中心とした品揃えは、従来のコンビニとは一線を画したものであり、20代、30代の女性をターゲットに新機軸を打ち出している。
さほど問題はありませんが、どこか読みにくい。こういう文章をよく目にします。本書の改善案は次の通り。やっていることは簡単です。
最近、あるコンビニは、店舗内で焼き上げたパンの販売を始めた。自然志向・健康志向の製品を中心とした品揃えは、従来のコンビニとは一線を画している。20代、30代の女性をターゲットに新機軸を打ち出している。
明らかにこう書かれた方がわかりやすいのです。なぜならこの改善案には、先に挙げた「1〜3」の方針が含まれているからなのです。まず「短く言い切って」います。「一文で一つのこと」しか運んでいません。だから「幹が一本一本立っている」のです。
削れる言葉は削る
「短く書く」方針にしたがうなら、「削れる言葉は削る」のは当然のことです。削れば短くなります。短くなれば、読みやすくなります。ブログなどの電子媒体に載っている文章はなおのことです。
「という」を削る
私もついやってしまって反省することがあります。「~という」という言葉を必要ないのに使ってしまうのです。つい先ほど書いた文章に「という」を加えてみましょう。次のようにうるさくなります。
「短く書く」という方針にしたがうなら、「削れる言葉は削る」というのは当然のことです。
この例でもわかるとおり、入っていても意味は通じます。しかし、なくても意味は通じます。それであれば、ない方がいいわけです。例外もありますが、一般的に「あってもなくても文意が通るなら削る」方針を貫きましょう。
余分なつなぎ語を削る
好みもありますが、「削れる言葉を削る」なら「余分なつなぎ語」も削るべきです。今度は、本書からの例を引用しましょう。
うつ状態の時期を、ようやく乗り越えることができた。そして、私を救い出してくれたのは、周りの友人たちだった。
削るべきは、「そして」。あっても読者は混乱しませんが、ない方がすっきりします。
うつ状態の時期を、ようやく乗り越えることができた。私を救い出してくれたのは、周りの友人たちだった。
まとめ
ここまで見てくれば明らかなように、本書の主張は明快です。
- 短く書くこと
- 削れる語を削ること
テクニックは77紹介されているものの、突き詰めれば上述の2点に集約されてしまうのです。しかし、文章をシンプルにする原則を徹底すれば目に見える効果となって現れます。
文を書くたびに、「短く切っているか?」と自問してください。「削れる語はないか?」とさがしてみてください。そうするうちに、いつか無意識でも「簡潔な文章」が書けるようになります。
» 文章力の基本
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