普段の作業で、1秒を惜しんで作業をしているでしょうか? 文字通り、1秒1秒の時間を意識して。
Mac OS X であれ、Windows であれ、操作に慣れて、複雑なことができるようになるのはいいのですが、それとともに大量の繰り返し作業が私たちの日常に入り込んできています。
デジカメで写真を大量に撮ってきて、Mac OS X で読み込み、iPhoto で整理して Flickr にアップロードして…。こうした作業ができるのはよいことです。でもすでに 100% 理解している作業を毎回毎回手で行う必要が本当にあるのでしょうか?
この連載で繰り返し何度も「オートメーション」について取り上げてきたのは、「すでに思考の入り込む余地のない作業はなるべく自動化する」のをポリシーとすることで、仕事に近道を造ることが非常に大事だからです。
これまでとりあげてきた Mac OS X の フォルダアクション、
TextExpander、
スマートフォルダ、
Hazel といった機能やアプリケーションは、すべて「数秒~数分」の近道を作り出すためにあります。
ほんの短い時間ですが、1000 回、2000回とつみあげていけば、ただクリックしたり、ウィンドウをドラッグしたりしているだけの時間が有益な時間に変換できるのです。
さて今回は、前回に引き続いて Snow Leopard で新しくなったサービス機能を実際に作ってみて、システムワイドに利用できる「近道」を作ってみることにしましょう。
新しいサービスを作成するときには、「自分がいつも行っている作業のうち、思考を差し挟む余地なく実行できるものはなにか」を突き止めるのが最初のステップになります。
たとえば私はちょっと気になった語句を Wikipedia で調べることがたくさんありますので、Safari であれ、Pages の上であれ、選択したテキストを Wikipedia で一瞬で調べられるようにしておくのは時間の節約になります。そんなサービスを作ってみましょう。
1. Automator を立ち上げる
Snow Leopard で Automator を立ち上げると、新しく「サービス」と書かれたテンプレートを選択できるようになっていますので、これを選択します。
2. AppleScript を使って検索 URL を作成
今回の例では、簡単に日本語版 Wikipedia を検索するサービスを作ってみます。そこでまず、左側のメニューから「Applescript を実行」というアクションをドラッグしてワークフローに追加します。
検索するための URL を作成するために Applescript を編集しておきます。this_URL という変数を作成して、「Wikipedia の URL + 検索語」という内容を格納しておきます。ここで input という変数は、Safari などで選択したテキストが挿入される変数です。
作成した変数をワークフローの次のステップに渡すために、「return this_URL」という風に作成した変数を返すようにスクリプトを書いておきます。
3. Safari を開いて表示する
次に、この URL をブラウザで開くために左側のアクションから「Web ページを表示」というものを選んでワークフローに追加します。このアクションは先の「this_URL」を受け取って開いてくれます。
4. キーボードショートカットを登録
新しく作成したサービスに適当な名前を与えてセーブすると、それは「Library/Services」というフォルダにセーブされます。
今度はこのサービスをキーボードショートカットで利用できるように設定しておきましょう。前回紹介したように、「システム環境設定」→「キーボード」→「キーボードショートカット」を選択して、「サービス」の項目を調べてみると新しくセーブしたサービスがすでに登録されています。今回は Wikipedia を調べるサービスでしたから、「^W」あたりを登録してみましょう。
サービスの利用・さらに応用
作成できたら、Safari で適当な語句を選んで、ショートカットを実行すれば、Safari の新しいタブが開いて Wikipedia でその語句が検索されます。現時点ではこうしたサービス機能を意識したコーディングがされている Safari などではこうしたショートカットが有効ですが、まだ Firefox では起動できません。こうしたサービス機能への対応は今後進んでくるものと思われます。
「便利だけど、Applescript を覚えるのはなあ…」「もっと複雑なことはできないの?」という人は、august.lilleaas.net で公開されている「任意のファイルを Amazon S3 にアップロードするサービス」をご覧いただくことをおすすめします。
このサービスの実態はまったく別の目的で作成された Ruby スクリプトで、このスクリプトにファイルを渡して、結果を受け取るために短い Applescript で挟んだだけのものです。
つまり、もしチーム内で共有しているスクリプトや資産、よく利用するワークフローがあるなら、これまでの資産をそのまま利用して Mac OS X のサービスを作成することが可能なのです。
ここから先は想像力との勝負です。これまではいかに手際よく仕事をするのかがスキルの一端でしたが、こうした自動化を利用して「どれだけ普段の作業から手数を減らせるか」がその一歩先に見えてくるのです。ぜひ試してみてください!
(今回のサービスは Mac OS X Automation で配布されているものを参考にして作成しています)
▼最近気になっている一冊:
読書を「ダウンロード」だと考えていませんか? 「字を読み上げて脳にインプットしてゆくダウンロード」だと。とんでもありません。読書は意味をときほぐす「デコード」であり、著者との勝負であり、意味を自分自身のなかで再創造する、おそろしく高度な作業なのです。
より深い読書ができるようになるためには、これまで利用してこなかった思考の小道を開拓して、相手を疑ったり、論理的に分析する「思考力」が不可欠です。
そんな思考力を養う本としてちょっと気になっているのが、齋藤孝氏の『頭がよくなる思考法 天才の「考え方」をワザ化する』(ソフトバンク新書)です。
漢字が多くて恐縮ですが、物事を分析するときに必要な論理的な思考法、説得するとき・相手の説得を見破るときに必要な弁証法的思考法、捉え方のプラットフォーム作りに必要な現象学的な思考法などは、通常長い特訓で身に付けてゆかなければいけないものが多くあります。
それを本書ではまるで学校の授業のような平易な形で、それなりに深い部分まで光をあてて説明しています。それぞれの思考法についてはもっと正確で深淵な「専門書」が数多くあるのでしょうけれども、そうした「考え方」を自家薬籠中のものにするためのヒントがちりばめられていて、頭がやらわかくなってきます。
先入観を抱かせる書名がちょっと残念ですが、そうした先入観なしに読むことで大きなメリットを得られる本です。
ずっと続けていました「iPhone 情報整理術」をやっと脱稿して、次になにをしようかと休息を取りながら考えているところです。放り出したままの iPhone アプリの開発もしたいし、別の趣向の本の原稿も書きたいし…。でもそれにもまして、そろそろ生後2ヶ月になる娘とごろごろしている時間を作るのが最近の優先課題。ごろごろ大事ですよ!
▼堀 E. 正岳:
「これからMacを始めたい人」を徹底ガイド。Lifehacking.jp主宰。