その時間の節約という部分に絞ると、なぜそれが可能になるか、実はけっこう誤解されています。
時間の節約というのは、一般に次の2つの方法で実現されると思われています。
- 1.行動をすばやくする
- 2.ムダなことをしない
以上はもちろん時間を節約するのに役立ちます。しかし、以上の2つがすぐ意識されるからこそ、時間節約は不人気なのです。
1つ目の「スピーディな行動」は、すぐに疲れます。すでにかなりスピーディにできる人は「これ以上速くたくさん仕事をやれっていうの?」となりますし、行動をすばやくするのが生まれつき苦手という人もあって、そうした人は「時間を節約する」という言葉が、自分を非難しているもののように聞こえてしまうのです。
2つ目の「むだなことをしない」となると、たちまちエンデの『モモ』を連想する人もあります。そうした人が言いたいことは「おばあちゃんとの長話はムダではないし、イヌの散歩もムダではないのに、時間の節約は人間味に欠けている」ということになるのです。
しかしタスクシュートは他にも時間の節約手段を提供します。今回紹介したい方法として「適切なタイミングでタスクを実行する」という手法があります。
いつやっても変わらない? 本当?
こんなのは全然効果的ではない、と思う人が多いのは承知しています。つまり、どのタスクでも、いつやっても、そんなに時間の節約にはならない、変わらない、と思われるわけです。
しかしそうでもないのです。少しずつ行動をする時間帯を適切な方面に入れ替えるだけで、自由な時間が確実に増えていきます。
たとえば私は書籍を刊行するに当たって、契約書の交換というものをしなければなりません。私にとってはこれがけっこう面倒です。いちおう契約書だからわかりきったことでも読み返すし、あまり好きではないけれど、名前を書いたり判をおしたりします。
これを私は妻との無駄話の中で、可能なら妻にしてもらうようにしています。
いままでは、自然と自分の書斎でやっていました。書斎でやるとなると、朝の10時頃に、書斎で仕事をしている最中にやるわけですが、それはムダだと思いました。
それで、書類整理時間のようなときにやるようにしたのですが、それもダメだとわかりました。書類整理時にやるのは、書類のスキャンであって、あるいはシュレッダーにかけるのであって、ペンでなにかを書く気になれないのです。この時間帯に契約書を書こうとすると、いつまでも先送りになります。
残っていたのは、食後や妻と話をしている時間でした。
妻との無駄話の時間は、『モモ』流に言えばムダではないにしても、仕事は進みません。しかしそのとき原稿を書きだしたら、さすがに感じが悪い。でも、契約書についてやりとりするぶんには、問題ないのです。おそらく「家計」がからんでいるからでしょう。
そういうわけで、契約書となれば常に妻と食事をとった後にダイニングテーブルでやるようにしました。これはタスクシュートで見つけた時間帯です。どの時間帯にやろうとしてもあまりうまくいかず、しかしやらないわけにはいかない仕事です。
こういうふうに、タスクごとの「最適な時間帯」の置き場所がわかると、タスクを急いでやらなくても(妻との時間に契約書を書いてもらうようになって、「無駄話」の時間自体は長引いています)、ムダを省かなくても1日に処理できるタスク数は増えるという、結果が得られるわけです。
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電子版とあわせると、順調な滑り出しのようで、大変嬉しいです。ありがとうございます。
これからビジネス心理学的な知見はいろいろ広がっていくと思われます。そういうものに興味があるという方はぜひ、お手にとってクイズに挑戦してみて下さい。
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