「イフ(もし~したら)」が外部の環境にあるとき(アラームが鳴ったら、バーに入ったら……)だけではなく、内面的な状態がキューのとき(何かがどうしてもほしくなったら、退屈したら、不安になったら、腹が立ったら……)にも有効だ。
ずいぶん簡単な話に聞こえるかもしれないが、事実そうなのだ。
実行プランを立てて練習すれば、キューに遭遇したときにはいつも、ホットシステムに望ましい反応を反射的に引き起こさせるようにできる。
就寝前に歯を磨くのと同じで、時間を経るうちに、新しい連想や習癖が形作られるのだ。
これが事実であれば「お酒がどうしても欲しくなったら、飲んではダメ!と強くアラームすればお酒はやめられる」ことになりますし、「甘いものがどうしても食べたくなったら、食べちゃダメ!と強くアラームすればやせられる」ことになります。
そうはいかないと即座に反対する人もあるはずです。
でも、やめられれば幸せになれるということであれば、試す価値はあります。
何事も、やる前から決めつけていい話はありませんし、ある方法がうまくいくかどうかについて、個人差は必ずあるからです。
たいていの人にとって効果がない方法でも、それでうまくいく人もいるのです。この種のことは、自分がうまくいけばそれでいいでしょう。
@コンテクストと、し忘れ
GTDの専売特許でもないのですが、GTDをはじめとするタスク管理には@コンテクストという概念が導入されてきました。
- □薬を飲む@毎食後
というものです。
タスクには、可能もしくは適切な、実行タイミングというものがあります。
食後に飲むべき薬を食前に飲むのは良くないですし、毎週月曜日に出す生ゴミも、月曜の夜に出してはダメでしょう。
この実行タイミングという問題は、GTDや@コンテクストという概念が導入される以前から、ちゃんと問題になっていました。
人と会うついでにハガキをポストに投函しようと思って家を出たけれど、帰宅してからカバンにハガキがあるのを見つけた!といったあたりが、よくある事例です。
「食べる前に、のむ」つもりだったのに、気がついたら食べていた、ということもよくあるから、CMになっているわけです。
@コンテクストは合理的な方法に見えますが、これで実行タイミングにタスクを実行するのは、そう簡単ではない気がします。
ポストが目に入ったからといって、@ポストというコンテクストでリストを検索するでしょうか? それができるくらいなら、そもそもリストを作らなくても投函を忘れたりはしないでしょう。
食べる前に@食前というリストをチェックするとも、思えません。あのCMが優れているのは、思い出させるという機能を相当数の人に果たしているからなのです。
タスクの並び順というコンテクスト
タスクシュートではだいたいのところ「セクションがコンテクスト」であるとみなされています。
私もそういうことを本に書きました。
ただそれを書いた時から私は、大ざっぱに言えばそうだろうけど、厳密には少し違う気がする、とも思っていました。
そんな厳密さはあまり人の耳目を引かないとも言われるのですが。
たいていの人はセクションを「2時間おき」くらいで区切っています。
するとたとえば、朝の8時〜10時というセクションがあるとして、2時間というのは幅が広いのです。
- □薬を飲む@食前
- □薬を飲む@食後
この2つの意味はかなり違います。でも、朝の8時30分頃に朝食を食べる人にとって、両方のコンテクストは同じになってしまいます。
- □薬を飲む@8:00~10:00
ここで「タスクの並び順」というのが大事になってくるのです。というよりも、タスクの並び順こそが「@コンテクスト」を決定するのです。
たとえば食前に薬を飲むのであれば、タスクシュートでは次のように表現されます。
- □朝食準備
- □薬を飲む
- □朝食
しかし食後なら次のように変わります。
- □朝食準備
- □朝食
- □薬を飲む
もちろん、このような@コンテクストの決め方に実用性を保たせるには、タスクをするつどタスクシュートをチェックしなければいけませんし、並び順も正しくしておく必要はあります。
タスクシュートとは、それをするからタスクシュートなのです。確実にやるタスクはすべてリストアップしておく必要があり、その順番は、正しく実行される順番でなのです。
そうでないと、コンテクストが変化してしまうからです。
コンテクストいうのは小さなところでどんどん変化していきます。
お昼頃に駅に行く途中でハガキを出すにしても、そのタスクは@お昼でも@駅でも失敗しそうです。
- □家を出る
- □ハガキを出す
- □電車に乗る
この順番しか、ないのです。
そしてそういうことに限って、失敗しがちなものです。
なぜなら実行タイミングのコンテクストが狭く短いからです。
瞬時レビューで「@ネットサーフィンしたくなるコンテクスト」を知る
「たすくま」などでタスク終了時にいちいち「タスクはどうでしたか?」という問い合わせがあることがわずらわしいという意見が散見されます。
しかしこのような問い合わせに「いちいち答える」ことで得られる大きなものもあります。他の方法ではまず得られないようなことがらです。
自分について盲点というべきポイントを明るみに出せるのです。
私はこれを「瞬時レビュー」と呼んでいます。
最近瞬時レビューで「いったいいつ、私はネットサーフィンがしたくなるか?」を確定しようとしました。
そしてできるようになりました。
それはある並びのタスクを終わらせたあとで必ずといっていいくらい、やりたくなるものでした。
具体的に言えば、人間関係がからんだタスクをしたあとで休憩を取って、その後さらに人間関係がからんだ休憩か仕事をする付近、では、必ずネットサーフィンしたくなっていたのです。
こういう並びです。
- □仕事(対人面談的な)
- □休息(対人関係で気を張るから)
- □家族との時間
- □ネットサーフィン
以来私は、意識的にこのような並びを作った上で、その後にはネットサーフィンをしないように予定を入れました。
するとネットサーフィンの時間が目に見えて減ったのです。
あるいは、こういう並びになりそうなタスクが並んだら、休憩を増やして並びを壊してみました。
それも効果がありました(ストレスがたまらないという意味ではこちらの方が効果がありました)。
冒頭の引用の問題への私なりの解決策は、これです。
「ネットサーフィンがしたくなったら」というコンテクストで、自制心を働かせることはできます。
でもそれには、「ネットサーフィンがしたくなったら」というコンテクストを明らかにしなければならないのです。
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最近になって、ようやくこのタイプの本が、邦訳されて出そろってきています。
ビジネスパーソンに直接役に立つ分野の心理学書で、今後こうした本があふれるようになって欲しいと思います。