タイトルの通り、漫画家の荒木飛呂彦先生が何を考えながら漫画に取り組んでいるのかを紹介する一冊なのですが、この中にメモの話が登場します。
いつも自分の周りで見聞きしたことで「おもしろいな」と思ったことをメモしておき、アイディアノートにまとめる習慣を続けています。
さて、いったいどのようなことをメモされているのでしょうか。
三つの分類
メモの内容は、大きく三つに分類されています。
- 自分がよいと思ったこと
- 自分とは違う意見や疑問に思う出来事、理解できない人
- 怖い出来事や笑える出来事、トラウマになりそうな出来事
基本的にはどれも「自分の心が強く動いたこと」と言えるでしょう。
それぞれをもう少し詳しくみていきましょう。
自分がよいと思ったこと
一見単純なことです。「あっ、あれは面白かったな」と思ったら、メモするわけです。
ただし、ただ書き記すだけではありません。掘り下げも行います。どういうことかというと、「どんなところが面白かったのか」「なぜ、面白いと感じたのか」を自問するのです。つまり、面白さの分析を行うのです。
この分析を経ることで、単なる外部的な出来事のメモが、内部的な心理状態のメモに変化します。
本書内では映画が例にあげられていますが、もちろんそれだけには限りません。
たとえば何かツールを使ったときに「これは使いやすい。便利だ」と感じたら、「どんなところが使いやすいのか」「なぜ、そう感じたのか」を自問することもできます。もし、自分のアウトプットに利便性を持たせる必要があるならば、こうした自問は非常に役立つでしょう。
その他の分野にでも十分応用が利くメモです。
自分とは違う意見や疑問に思う出来事、理解できない人
荒木先生は、こうした対象を「アイディアが生まれる気配がぷんぷん立ちこめている」と述べられています。
なぜならば、自分が持ち得なかった視点のヒントがそこにあるからです。言い換えれば、自分の視野を広げる効果があります。
アイデアとは、「既存の要素の新しい組み合わせ」だとジェームズ・W・ヤングは言いました。「自分と違う意見」は、その両方に作用します。自分が知っていることを新しい視点から眺められたり、あるいは自分の視点から、これまで知らなかったことを眺められるのです。こういうところから、アイデアは豊富に生まれてきます。
これも先ほどのメモと同様に、単に事実を書き記すだけでなく、「なぜこの人は、そんな風に思うのか?」「どうしてそんな現象が起きるのか?」「そうした意見を聞いて、自分はどう思ったか?」といったこと自問します。
逆に言えば、そうした自問を通さないかぎり、新しい視野を自分の内側に取り込むことはできません。
怖い出来事や笑える出来事、トラウマになりそうな出来事
これも同様に「なぜ怖いと思ったのか」「なぜ笑えるのか」を考えます。これらの要素はもちろん漫画家さんならではですが、ビジネスの世界でも似たようなことはできます。
たとえば、「すごく納得できたプレゼンテーション」「ついつい買ってしまった商品」があれば、「どの点がその納得感を生み出したのか」「なにが原因でついつい買ってしまったのか」を考えることができます。逆に「なんとなく買わなかった商品」であっても、なにが購買行動を阻害したのかを考える材料になります。
さいごに
以上のように考えると、アイデアのヒントは特別な行為だけでなく日常生活のあちこちに落ちていることがわかります。あとは、それを拾い上げ、自問を通して分析するかどうかだけの話です。
簡単にまとめれば、
自分の心の動きに敏感になり、それを分析する癖を持つ。
ということになるでしょう。
メモは、それを保存しておく効果もありますが、そもそもとしてそうした行為(自問)を行うきっかけとしても機能します。
ただし、本書にもありますが無理矢理ネタを探すようなことはいずれ限界がやってきます。上記のような三つのメモも、基本的に「そういうことに興味がある」からこそ、自発的な観察が行われるわけです。だからまずは、興味・関心の扉を開いておくことが肝要です。
他にも面白い話が山盛りですので、アウトプットを行っている人はぜひご一読を。
Follow @rashita2
GWなんて都市伝説__と言いたいぐらい平常営業でした。まあ18歳ぐらいからそんなものは一度も体験したことがないわけですが。最近違う種類の仕事が並行で走っているので、考えなければならないことが結構多いです。仕事があるのはありがたいですが、慣れないと結構しんどいです。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。