もし、そのアウトプットがどこからからの依頼(要求)であれば話は簡単です。アウトプットが完成した時点で、作業は完了。それでお終いです。
しかし、自分発のアウトプットの場合であれば、そうはいきません。もう一つのステップを踏む必要があります。
それがプロモーションです。
セルフパブリッシングなど、自分から積極的に生み出していく知的生産活動では、何かしらのプロモーション活動も必要になります。無料・有料問わず、作品が乱立する現代では、その重要性は特に増しているといってよいでしょう。もはや必須の活動です。
しかし、プロモーションという言葉は、やや大げさな響きがあるかもしれません。大々的な告知活動、といったニュアンスです。もちろんそうしたニュアンスを持つものもありますが、それだけがプロモーションではありません。実体は多様です。
それについて少しだけ考えてみましょう。
プア・プロモーション
やや自慢めいた話になりますが、先月発売したセルフパブリッシングの新刊『Evernote豆技50選』は、AmazonのKindleランキングで一時10位まで上りつめました。「コンピュータ・IT」「クラウド」「工学」のカテゴリーでは1位を獲得し、現時点で「24日間100位以内」を達成しています。なかなかな売れ行きといえるでしょう。
しかし、本作のプロモーションには、まったくお金を使っていません。実質0円です。
広告の掲載依頼も出していませんし、プレスリリースも出していません。本を作り、自分で告知しただけです。それが「外」に広がって、ある程度人気につながった、という結果になっています。
もちろん自分で告知したからといって、それだけで本が売れるはずがありません。
この本以前に発売した本でも、同じようなプロモーションを行っていましたが、ほとんど目立つような売り上げにはなりませんでした。プロモーションは魔法の杖ではないのです。告知・宣伝したからといって売れるわけではない。しかし、告知・宣伝しないと、売れるものもまったく売れなくなる、というのが本当のところでしょう。
打率が4割ある打者でも、バッターボックスに立ってバットを振らなければヒットが生まれないように、成功率がどうであれ実際に行わなければ効果がでないのが告知・宣伝というものです。
3つのツール
私が普段利用しているプロモーション手段は3つあります。
- ブログ
- SNS(Twitter,Facebook,Google+)
- ランディングページ
どれも利用・及び作成は無料でできます。専門知識も(日本語で文章を書くことを除けば)特に必要ありません。敷居自体はおそろしく低いので、あとはやるかやらないかの差があるのみです。
それぞれのツールには異なった特徴があるのですが、ここで詳細に論じるのはやめておきましょう。聞き慣れないかもしれない、
ランディングページについてのみ少しだけ触れておきます。
二つの相手
インターネット広告用語辞典では、「ランディングページ」は次のように説明されています。
インターネット広告や、検索エンジンの検索結果からのリンク先となるウェブページ。広告を見る人にとっては、広告(又は検索結果)をクリックすると最初に表示されるページ。必ずしも自社サイトのトップページである必要はない。
セルフパブリッシングの場合、告知・宣伝すべき情報は「本の情報」になります。当然、ランディングページには「本の情報」を記載します。本を探している人が、そのページにたどり着き、どんな本なのかを知った上で、買うかどうかを判断する。そういう役割がランディングページには期待されています。
その構図を頭に入れて考えてみると、「本の情報」を伝えるべき相手は二つ存在することがわかります。一つは、想定読者(あるいは期待読者)。もう一つは、検索エンジンです。
現代において人が情報を探す際、もっとも気楽に利用するものの一つが検索エンジンでしょう。セルフパブリッシングに限らず、自分のアウトプットを他に人に届けたいと願う場合、検索エンジンに目を向けてもらうことは重要です。
検索エンジンの方でも、ある程度情報を把握しようとはするでしょうが、「このページは、これについて書いてあるページですよ」とこちらから伝えた方が、提供する側にとっても受け取る側にとっても満足いく結果が生まれやすいことは想像に難くありません。
つまり、単にウェブサイトを作ればそれでOK、というわけでもないのです。
検索エンジンに目を向けてもらうための方法はSEOと呼ばれ、専門知識に属します。Webデザイナーやブロガーなど、日常的にそうした情報に触れている人ならばともかく、そうでない人は一から勉強する必要があるでしょう。
その点、以下のランディングページテーマは、SEO対策がきちんと盛り込まれています。
必ずしも上のテーマを使わなければらない、というわけではありませんが、「想定読者向けの情報」と「検索エンジン向けの情報」の二つに意識を置く点は留意した方がよいでしょう。
さいごに
ランディングページなんて作らなくても、本の販売プラットフォームのウェブサイトがあるんだから検索対応もそれでいいだろう、と考える人がいます。ある部分では、それは間違っていません。おそらく知名度がある人ならば、ランディングページなどなくてもそれなりの売り上げを作れるでしょう。
なぜなら、すでに本と(あるいは著者と)読者の間に、関係性が築かれているからです。
この場合の関係性は、コミュニケーションがあることだけを意味してはいません。関心・興味・信頼といったものが作用している状況、ということです。
もし、そうしたものがまったくない場合は、関係性を築くところから始めなければなりません。そして、関係性を築くためには、情報が必要です。そのために、いろいろな情報をこちら側から出していくわけです。
関係性を気づく上では、「情報」の他に、もう一つ「時間」も重要なファクターとなるのですが、これはテクニックでなんとかなるものではないので、本稿での言及は避けておきます。とりあえずやってみて、続けること。それに尽きます。
▼今週の一冊:
漫画に限らず、エンターテイメント作品のクリエーションを目指す人には、ためになることが盛りだくさんの一冊です。
もちろん、ジョジョが好きな人もストレートに楽しめるでしょう。
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月末だというのに、新刊の制作作業に追われていないことに、若干の寂しさを感じる今日この頃です。といっても、ボチボチは進めているのですが。きっと5月の月末ごろには慌てていることでしょう。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。