本選びの嗅覚を上げる「実験」

カテゴリー: R25世代の知的生産

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マイク・モラスキーさんの『日本の居酒屋文化』では、居酒屋に関する「実験」が紹介されています。

» 『日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る』(光文社新書)


ひとり呑みに慣れてしない読者にとって、この小さな冒険はかなり度胸が要るように感じられるかもしれないが、数回実行するだけでも、居酒屋に対する嗅覚が格段と上がると思う。

居酒屋への嗅覚をアップするこの「実験」は、本選びの嗅覚アップにも応用できるかもしれません。

実験:ステップ1

実験は二段階に分かれています。

まずは「ひとり呑み」段階。

以上の手順を踏み、お店を選びます。

お店に入ったら、なぜそのお店に惹かれたのかを、なるべく細かく思い起こしてください。「なんとなく選んだ」の、なんとなくを分析するのです。

あるいは、このお店は失敗だと思ったら、どこが気に入らないかを考えてみてください。記憶を巻き戻して、入店する前にその「兆し」がなかったかを思い出してみてください。

つまり、直感でお店を選び、それを検証するのがこの「実験」です。

以上の「実験」を三、四回繰り返すと、次のステップに入ります。

実験:ステップ2

ステップ2では、ステップ1と同じことを「呑み友」と行います。

新しい街で、嗅覚だけで居酒屋を選ぶポイントは同じですが、今度は選ぶ際に「相棒」と相談するのです。

お店選びは相棒と相談しながら、お互いに気づいた点を細かく挙げることがミソである

これによって、相手がどんなポイントをチェックしているのか、そこから何を読み取っているのかがわかるわけですね。それを知ることは、自分の居酒屋選びの引き出しを増やすことにつながるでしょう。

ステップ1

で、この「実験」を本選びに応用してみます。

居酒屋選びと同じように、できるだけ「外観」だけで選びましょう。

目次を確認するのは、ギリギリセーフです。あれは居酒屋の外に提示してあるメニューみたいなものなので、「外観」に含めても問題ないでしょう。しかし、それ以上の立ち入った内容は確認しないまま、本を選んでみてください。

くれぐれも言っておきますが、これは「実験」です。つまり、失敗する可能性があるということです。全然面白くない本を買ってしまうことになるかもしれません。だからこそ、嗅覚が磨かれることにもなります。失敗と成功の両方を体験しないと、その間に潜む差異を見極めることができません。

本を買い、中身をパラパラと確認したら、振り返りを行いましょう。どこに惹かれたのか、あるいはどこが気に入らないのかを考えます。居酒屋と同じように「兆し」を確認するのもよいでしょう。

そうやって、自分の「ツボ」を押す本を見分ける嗅覚を磨いていくのです。

言うまでもありませんが、これは「自分が面白いと思える本」を見分ける力を鍛えるための方法であって、隠れたベストセラーを発掘する方法ではありません。それにはそれの訓練が、また別にありえるでしょう。

ステップ2&さいごに

基本的に読書を好む人は、一人で書店を歩き回るものだとは思いますが、「読み友」と連れだって書店を巡ってみるのも面白いかもしれません。

実験のステップ2と同じように、雑多なジャンルの書棚を巡りながら「この本面白そう」「いやいや、この本が」といったやりとりを行うのです。きっと、本の選び方の引き出しが広がることでしょう。

もちろん本選びの「嗅覚」を鍛えたところで、失敗本に遭遇する確率がゼロになるわけではありません。それでも、ずいぶん数は減らせるはずです。たとえば「こういうタイトルの付け方をしている本は、自分のセンスとは合わない」ということがわかるわけです。また、誰にも紹介されないような本を「発掘」できるようになるかもしれません。

普段買い慣れている書棚から抜けだして、何一つ事前情報を持たないで本を買ってみる体験は、なかなかスリリングです。それに新しい出会いの可能性もあります。

本を買い慣れていない方は、一度「実験」してみてはいかがでしょうか。

▼今週の一冊:

まったく関係無い文脈で紹介しましたが、「居酒屋論」としても__というかそれが本筋__楽しめる一冊です。

単なる居酒屋ガイドブックではなく、日本社会における居酒屋のポジショニングが考察されています。著者が指摘している<第三の場>としての居酒屋、というのは言われてみれば確かにそうだな、と頷けました。

もし、最近の若者がこうした居酒屋に足を運ぶことを避けているならば、彼らは<第三の場所>を何によって代替しているのか。そうしたことにも興味が湧いてきます。

» 『日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る』(光文社新書)


▼編集後記:



小説のリライトを終え、リリライトに取りかかっています。改稿の改稿ですね。結局、細かい部分の調整だけでなく、少なからずの書き直しになりました。思い返してみると、こうして書いたものに何度も手を入れるというのは、小説に関してははじめてです。そして、なかなか大変です。面白くもあるわけですが。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

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