「あっ、この本つまらない」と感じたときの対応

カテゴリー: R25世代の知的生産

みなさんは、「なんだか、この本つまらない」と感じたとき、どのように対処されているでしょうか。

時間効率を謳う読書法ならば、「即座に読むのを止める」というアドバイスが出てくるでしょう。

立花隆さんも『「知」のソフトウェア』で次のように書かれています。

読んでいるうちに、これは読むに値しない下らない本であるとわかるものがあったら、その本はただちに読むのをやめて捨てる。せっかく買ったのだからなどとケチな根性を起こして、無理して読むようなことは絶対にしないほうがよい。お金を損した上に、時間まで損することになる。

私も、基本的にはこの考え方に同意です。

ある程度本を読み慣れてくると、ハズレな本に出会う確率は下がってきますが、さすがにゼロというわけにはいきません。「ん?これは……」という本に出会ってしまうこともたまにあります。

そういう本に固執するのは確かに無駄です。でも、「即座に読むのを止める」ようなこともしません。

とにかく最後まで

実は立花さんは上の文章に続いて、こんな風にも書かれています。

もちろん、前に述べたように、読まないで終わりまでページだけはめくっていくということはしておいたほうがよい。

しっかりと「読む」ことはしないまでも、最後まで「見る」あるいは「眺める」といったことはしたほうがよい、ということです。

私も同じように、読んでいるうちに「ん?これは……」と思っても、一応最後までページをめくるようにしています。

その読み方は一様ではありません。それまでと同じようなペースで読んでいくこともあれば、見出しだけを拾って読むようなこともあります。後者の場合であれば、細かい話は分からないけれども、おおよそ著者が言いたいこと・伝えようとしている内容は拾う。そんな感覚です。

そうしたことをやっておくと、何かしら得られるものがあるのです。

安易にジャッジメントしない

そもそも、「つまらない本」とはどのような本でしょう。

著者の文章力が足りていない。扱っているテーマと視点が面白くない。自分に理解する力がなくて、退屈に感じている。

いろいろなパターンがありえます。

もしかしたら、大半は面白くないけど、一部分だけ面白い本、ということもあるでしょう。あるいは全体の一部分だけつまらない本、というのも考えられなくはありません。とりあえず最後まで読んでおくことは、全体の評価を歪めない効果があります。

また、全体として著者が何をいいたいのかを知るためには、ぼんやりとでもその全体像を眺めておかなければいけません。こういう話の展開で、こういう素材を、こんな順番で出してきている。それだけでも見ておくと、文脈を捉えやすくなります。

さらに、とりあえずめくっていくだけも、その分野のキーワードらしきものに遭遇できます。それを鍵にして、別の本に当たることもできるでしょう。

効果はさまざまですが、最後まで読むことには意義があります。

「みた本」への態度

しかし、とりあえずめくっていっただけの本は、とても「読んだ」とは言えません。立花さんが「その本はただちに読むのをやめて捨てる」と述べられているのも、その意味合いにおいてでしょう。そういう本は「読んでいない」のです。

梅棹忠夫さんは『知的生産の技術』の中で、「よんだ本」と「みた本」を区別されています。

まず、はじめからおわりまでよんだ本についてだけ、わたしは「よんだ」という語をつかうことを自分にゆるすのである。一部分だけよんだ場合には、「よんだ」とはいわない。そういうときには、わたしはその本を「みた」ということにしている。そして、あたりまえのことだが、「みた」だけの本については、批評をつつしむ。

主張の一部分だけを恣意的に取り上げて、あれやこれやと攻撃するのは生産的な議論ではありませんが、本についても同じことが言えるでしょう。

さいごに

著者の主張を理解したいならば、どうあれ最後まで読んでみるというのが一番です。

しかし、付き合っていられない本というのも確かにあります。そういう本でも、軽く流し読みでページをめくってみるのは良いでしょう。

もちろん、はなから読者をバカにしているような本は、すぐさま閉じて構わないと思います。お金と時間と、精神力の無駄遣いになりますので。

▼参考文献:

対象への取材を行い、アウトプットするスタイルの知的生産が紹介されています。


こちらは、どちらかといえば「考え」を展開していくスタイルの知的生産です。


▼今週の一冊:

読書術関連、ということで以下の一冊。

とにかくアナログで管理したい、という方には最適かもしれません。私の場合は、デジタルをベースとして、アナログツールを組み合わせて使っていますが、以下の本は、徹底的にアナログ手法です。

以前発売された本の完全版で、大きなテーマは同じです。一冊のノートに、読書に関する情報をすべて集める。複数の使い分けなんて面倒、という方ならとっつきやすいスタイルでしょう。

デジタルボーンの電子書籍はどうするのかなという疑問もありますが、まあそういうのを読まなくても済むぐらい世界には本がありますからね。


▼編集後記:




とりあえず初校の確認は終わりました。毎回、最初に読む度に自分の文章の下手さ加減に打ちのめされます。まあ、手を加えて読みやすく直すしか道はないわけですが。12月の後半に発売予定。詳しくはまた書きます。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


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