本の情報交換パスワーク

カテゴリー: R25世代の知的生産

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ブログ「ライフハック心理学」を拝見していたら、いきなり自分のツイートが目に飛び込んできて、驚きました。

» 欲しい情報を人からもらうための活動

『脳のなかの天使』

という本の情報をツイッター上で交換しています。

この記事で取り上げられているツイートだけを見ると、「あなた、まだこの本読んでないんですか?」とか「この本読んだほうがいいですよ」という文脈にもとれます。

が、私はそんなに傲慢な性格ではありませんし、やたらめったら人に本を薦めたりもしません。単純に、本の感想を聞きたかっただけです。

しかし、この一連のやりとりは、現代ならではの本の情報交換パスワークだなと思った次第です。

スタートは書店

そもそもの出発点は、私の書店ウォーキングでした。

学術系に強い書店をぶらぶらと歩いていたら、新刊コーナーに「担当者のおすすめ」のPOPが。手に取ってみると『脳のなかの天使』というタイトル。著者名を確認する前に、「もしかしたら」と連想が働きます。

以前読んだ本に『脳のなかの幽霊』というタイトルの本がありました。とても面白い本で、私の本棚のGoodポジションに収まっています。タイトルの「なか」が漢字ではなく、ひらがなになっているのも印象的でした。もしかしたら、同じ著者の本かもしれない。

そう思いながら、確認するとラマチャンドランの文字が。That’s right. この段階で買う意欲がぐんと高まります。ぱらぱら中身をめくるたびに、その意欲ゲージは上昇していきました。

が、とりあえずそのときは購入せず、アマゾンの「お気に入りリスト」に放り込んで事なきを得ました。ただ、その時、軽くツイートしたのです。



で、このツイートが佐々木さんから「お気に入り」を頂きました。

そのとき、「佐々木さんは、この本にどんな感想を持たれたのかな?」と疑問が湧いてきました。

もし、「前作通り面白かったです」なら、私の購入意欲は「購入意志」に進化することでしょう。「今作はちょっと・・・」ならば、買うのは後回しにした方がいいかもしれません。

そう思いついて、「読まれました?」というつぶやきを発したわけです。

その前の物語

頂いた答えは、「読んでいません」という旨のものでしたので、私の購入意欲変動値はプラスマイナスゼロでした。

単にここだけを注目すれば、「私が書店を歩き回って出会った本の情報を、ツイッター経由で佐々木さんがゲットした」、というだけのものです。これもある意味では、Shareがもたらすハイブリッドと言えるかもしれません。しかし、話はもう少し複雑です。

というのも、私がこの本に興味を持った一因である『脳のなかの幽霊』は、その佐々木さんからゲットしたものなのです。きっと佐々木さんのブログで紹介されていなければ、その本に興味を持つことは(ないし見かけても買うことは)なかったでしょう。

さらに言えば『脳のなかの幽霊』を面白いと評した人でなければ、わざわざ「読まれました?」と尋ねることもなかったはずです。

私が知りたかったのは、その本の絶対的な評価ではなく、私の評価軸と近いであろう人の評価です。「~~ランキング」の上位にあっても、面白いと感じるかどうかは人それぞれです。ただし、そこにはある種の傾向(好み)があるので、自分と近い人の評価は、その日の天気予報程度には信頼できます。

拙著新刊のなかで、「本選びは、書店選びから」と書きましたが、SNSでもブログでも同じようなことが言えそうです。自分が面白いと感じる本を紹介してくれる人とつながっておくこと。それが良い本との遭遇確率を上げるポイントです。

さいごに

実は、もう一つポイントがあります。

今回のやりとりを、(すごく雑に)図式化すると以下のようになります。



重要なのは、それぞれが情報を出しているところですね。ツイッターやブログを使い、何かしら本の情報を発信する。それも、批判やこき下ろしではなく、「面白い」と感じた本の情報を出していくこと。

これが情報のパスワークに不可欠なことでしょう。


▼今週の一冊:

投資分野に興味がある方ならば、とても楽しめる本です。著者のマイケル・ルイスは「マネーボール」の著者としても有名ですね。

あのサブプライムローンの悲劇を乗り切っただけではなく、むしろそれを機会に大きな利益を上げた人たちのストーリー。彼らがどのようにしてその発想に至ったのか。実際にどのような手法を使って利益を上げたのか。そんな舞台裏が、軽快な文体で語られていきます。

が、多少投資関連の知識がないと読むのに時間がかかるかもしれません。何しろ仕組みが込み入っていてややこしいのです。もちろん、込み入っていてややこしいからこそ、あんな事態が訪れてしまったわけですが。


▼編集後記:




このエントリーが公開されているころには、おそらく私の本棚には『脳のなかの天使』が並んでいることでしょう。佐々木さんが面白いと言っておられたのを、つい先ほど見かけたのが決めてです。今から読むのが楽しみです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


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