6月30日に発売された以下の新刊で、「発想法自体もアイデアの対象だ」と書きました。
ほんの少しのアイデアがあれば、紙とペンだけでも独自の「発想法」を作ることができます。
本の中では、その簡単な例としてフキダシによる発想法を紹介しました。ごく単純な方法ですが、やってみると意外に効果があるのに驚かれるかもしれません。
白紙を目の前にして「う〜ん」と唸ってしまう状態でも、フキダシという補助線を用意することで、アイデアの芋づるの先っぽを捉えることができるようになります。
今回は、もう少し違った__でも紙とペンと少々のツールだけでできる__発想法を紹介してみましょう。
その名も「ホットコーナー法」です。
準備するもの
必要なものは以下のツール。
- A4サイズの用紙
- ボールペン(シャーペンでも)
- カラーペン(5〜6色あれば)
- 白っぽいマスキングテープ(付箋やラベルシールでも)
ステップ1.セッティング
まず、用紙にホットコーナーを設けましょう。といっても、隅にかかるように扇形を書き込むだけです。
四隅を書き終えたら、マスキングテープ(あるいはそれっぽいもの)を扇刑よりも少し中央寄りに貼り付けます。
マステであれば、横幅は適当にランダムな感じにしておくのがよいでしょう。あまりきっちりしてない方が発想的には良い結果が出てくるような気がします。
とりえあず、このテープを「フェンス」と呼ぶことにしましょう。あと、中央の部分を「セントラル」と名付けておきます。
準備はこれ終了。あとは実際のアイデア出し作業に取りかかります。
ステップ2.ワード・イン
まず、アイデア出ししたい対象に関係する言葉を右上のホットコーナーに書き込みます。文章ではなく、単語にしておくのがコツです。
書き終えたら、その反対側(左下)のホットコーナーにもう一つ対象に関係する言葉を書き入れます。ここでは右上に「ノート」、左下に「Evernote」と書き込みました。
後は、右下と左上のホットコーナーです。ここには、対象にまったく関係しない(と思われる)言葉を書き入れます。これが少し難しいところです。回りを見渡して目に付いたものを直感的に選ぶのがよいかもしれません。
私の場合、白い机の上にコーヒーがのっていたので、右下に「コーヒー」、左上に「白い」と書き込みました。
これで「とっかかり」ができました。これをもとに発想を広げます。
ステップ3.フレーズ・エクステンド
それぞれの隅にある言葉から、連想する言葉をホットコーナー付近に記入していきます。まずは右上から始めるのがよいでしょう。あまり深く考えずに、思いついた単語を記入していけばOKです。
一通り書き終えたら、視点を移動します。左下でも、右下でもどこに行ってもかまいません。とりあえず、同じ手順を繰り返し、それぞれの四隅の近くに言葉を埋めていきましょう。
その際、なるべくホットコーナーとフェンスの間に書き込むようにしてください。どうしても書ききれない、という場合を除いてセントラルへの進出は控えておきましょう。
こうして連想する言葉を書き出していくと、いずれそれぞれの隅から伸びてきた言葉と言葉がぶつかります。ここが頭をひねるポイントです。
ステップ4.フェンス・イン
近くにある言葉を眺めて、何か共通点を見出すことはできないかを考えましょう。多少の強引や無理矢理でもOKです。
たとえば、「コーヒー」のホットコーナー付近に、<しこう品>(嗜好品)という言葉を書きました。嗜好品には日常的に楽しめる価格帯のものもあれば、ちょっと手を出しにくい高級品もあります。よくよく考えれば、日本のノート市場にも似た要素があるでしょう。
すると、<嗜好品としてのノート>というフレーズが思いつきます。あるいは<趣味としてのノート>と言い換えてもよいかもしれません。
こうしたフレーズが思いつけば、それを手近な(近い言葉がある)フェンスに書き込みます。強調するために、カラーペンで書き込むのがよいでしょう。
では「Evernote」と「コーヒー」ではどうでしょうか。「コーヒー」のカフェインに注目して、<ログの中毒的楽しさ>というフレーズを思いつきました。これもフェンスに書き込みます。
ステップ5.フェンス・アップ
ある程度フェンスに書き込みが加わると、今度はその内容からまた新しい言葉なりフレーズが頭に浮かぶようになります。そうしたものは、セントラルに書き込んでいきましょう。
こうして、少しずつアイデアが発展していきます。
おおよそ「使いもの」になるのは、フェンスとセントラルに書き出されたものです。フェンス外のものは、土台あるいは出がらしみたいなもので、アウトプットに直接使われることはないかもしれません。ただ、書き出しておくことで、アイデア出しを進めやすくなる効果があります。
全体を見通して、「タイトル」が思い浮かべば、中央に大きく書き込みましょう。思い浮かばなければ、放置しておいても構いません。時間をおいてこの紙を見返せば、また何か思いつきがやってくることもあり得ます。
無理してまで一気に全体を埋める必要はありません。あくまでアイデア出し作業であり、詳細を詰めるのは別の工程で行えばよいだけです。
さいごに
この「ホットコーナー法」は、
- 異質なものを結びつける
- ボトムアップ式
- 制約を活用する
といった要素が含まれています。
特に難しい作業ではありませんが、連想思考を刺激するポイントがちりばめられているので、白紙でのアイデア出しが苦手という方は一度活用してみてください。
▼今週の一冊:
目下取組中の一冊です。内容はとても刺激的なのですが、ゆっくりとしたペースでしか読めていません。私の数学的素養が不足しているのが原因でしょう。本全体が詩的で数学的な空間で満たされていて、足早に通り過ぎてしまうのはもったいない感触があります。じわじわと理解の階段を踏みしめながら、読み進めていきたいところです。
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ちなみに、このホットコーナー法を新刊の中で紹介しなかったのは、本を書き上げた後に思いついたからです。けっして出し惜しみをしたわけではありません。本を書くことで、自分の中の情報が整理されて、新しい発想につながった、ということだと思います。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。