仕事中にふと気になったことについてネット検索をし、見つかったページを読み始め、そこでさらに気になる言葉が目に留まり、さらに検索を重ね、気づけば昼休み目前──。
誰しも一度や二度、こんな経験をしているのではないでしょうか。
- 午前中に仕上げる必要のある重要な仕事を抱えているのに、その仕事に関係のないことにモリモリ時間を使ってしまう。
- 試験前日に、1分でも多く勉強をしないといけないのに、ふと傍らの本棚で目に留まった本を読みふけってしまう。
あとからふり返れば実に愚かなことを、「その時」にはなぜかしでかしてしまうものです。
もちろん、気になったことをすぐにその場で調べてみることで、問題が早期に解決する、ということはあるでしょう。
でも、実行する段になってから「気になる」ということは、事前の計画の詰めが甘い可能性が高いといえます。
これは計画の立て方の問題になりますが、今回はここには踏み込みません。
代わりに「ルール」を1つ、ご紹介します。
それは、
- 午前中に限り「ふと思いついたことを即その場でやってみる」を禁止する
というものです。
午前中に限り「ふと思いついたことを即その場でやってみる」を禁止する
思いついてしまったことはその場でやってみたいと思うのが人情です。
完全に禁止するのは、難しい。
そこで、午前中のみ禁止にします。
午前中はとにかく前日のうちに計画していた重要な仕事を片づけることに専念します。
何か思いついてしまったら、それをサッと手元にあるメモ用紙に走り書きして、すぐに重要な仕事に戻ります。
午前中だけでいいのです。
最初は「やってみたい」衝動を抑えるのに苦労するかもしれませんが、しだいに「メモに残しておけば大丈夫だ」という、メモに対する信頼感が持てるようになります。
これは、衝動買いを防ぐ方法と同じ理屈です。
すぐその場で買ってしまわずに、「欲しいものリスト」に書き込むことにとどめるのです。
あとになって読み返してみて、それでもなお「やりたい」「欲しい」と思えるなら、そこで改めて実行に移すようにします。
衝動買いを抑えることで、お金が増えるのと同様に、「思いついたことを即その場でやってみる」を禁止することで、確実に時間が増えます。
その結果、午前中のうちに重要な仕事が終わり、すがすがしい気持ちでランチに出かけることができるようになるはずです。
「ふと思いついてしまう」のはなぜか?
今回、「ふと思いついたことを即その場でやってみる」という“問題”を取り上げましたが、これが問題になるのはなぜでしょうか? さらに言えば「ふと思いついてしまう」のはなぜなのか。
ここで思い出されるのがマーク・フォースターさんの以下の言葉です(『できる人は5分間で仕事が終わる』より)。
私達には、嫌な仕事を避ける口実として、新しい仕事に手をつける傾向があります。しかし、最初から抵抗している仕事に取りかかってしまえば、そんな回避行動は要りません。「忙しい仕事」は自然に消滅してしまうのです。そして、回避する抵抗の対象がなくなると、新しい仕事を取り込もうとする気持ちも減衰します。
ここで言う「新しい仕事」こそが「ふと思いついてしまうこと」です。「抵抗の強い仕事」から逃れたいために「ふと思いついて」しまうのです。
これを防ぐには、上記引用中に書かれている通り、その「抵抗の強い仕事」から取りかかるしかありません。
マーク・フォースターさんは「抵抗」を次のように分析しています。
本来、抵抗は、ある行動がその他の行動より難しいと感じた時に発生します。難しい仕事でも、好きな分野だったり、積極的に引き受けた仕事なら、集中して出来ますが、簡単な仕事でも、抵抗感が湧くと、心理的に難しくなります。
この抵抗こそが、日常を細かい仕事で埋め尽くす元凶です。どうでも良い仕事をしているほうが、重要な課題に取り組むよりずっと簡単なのです。
「逃げれば逃げるほど抵抗が大きくなる」という法則があります。つまり、問題を先送りすればするほど、仕事がやりにくくなるということです。先送りすることで、抵抗が弱まるなら良いのですが、実際はその逆で、掴みどころのない雲のような悩みが、どんどん立ち込めてきます。
しかし、幸運なことに、逆もまた真です。抵抗を克服して仕事を始めれば、今度は仕事が楽になってきます。今度は仕事を止めることへの抵抗が発生するわけです。
ここから導き出せる結論が「抵抗が一番大きい仕事から取りかかる」ということになります。
とはいえ、言うほど簡単なことではありません。そこで今回の記事では、
- 午前中に限り「ふと思いついたことを即その場でやってみる」を禁止する
という方法をご紹介しました。これが「抵抗が一番大きい仕事」という本丸に攻め込むための“外堀”を埋めることになるからです。
参考文献:
10年以上前の本(原書は2000年に刊行)ですが、いま読み返してみてもハッとさせられる、仕事を効率よく進める上での洞察に満ちた一冊です。
- すべての仕事を3つのタイプに分類する
- どんな時にも機能するシステムを作る
- 効果的な休憩の取り方
- 「あとでやる」はやらないということ
- プロジェクトを少しずつ進める方法
などなど、混乱した状況を改善するための“補助線”を提供してくれます。読んだそばから即問題が解決する、ということはありませんが、少なくとも解決の糸口が見つかるでしょう。何が問題なのかに気づくことができるのです。たかが糸口、されど糸口、ここが突破口になります。
同じマーク・フォースターさんの『マニャーナの法則』は、『できる人は5分間で仕事が終わる』の考察をさらに深化させ、「タスク・ダイアリー」や「WILL DOリスト」など具体的な手法に落とし込んでいるところに特徴があります。