拙著『クラウド時代のタスク管理の技術』を書いてからずっと問い合わせられるのが、
「プロジェクト管理ツールとタスク管理ツールを分けるのはいいが、転記が面倒くさい」
というものです。たしかに書き写すとなったら面倒ですし、私はコピーアンドペーストですが、やらなくてすむならもちろんやりません。そこでずっとやらなくてすむ方法を考えてきました。
やらなくてすむ方法は2つあります。
スロットからプロジェクト管理ツールを参照する
1つはプロジェクト管理ツールからタスク管理ツールに転記せず、「スロット」という概念のタスクを1つ作り、それを繰り返し設定にすること。そのタスクでやることは「プロジェクト管理ツールを参照し、見積もり時間の間そこで作業を処理していくこと」です。
例えば次のような「スロット」があります。オレンジ色のタスクが「スロット」の一例です。
見積もり時間は24分。参照先はEvernote。Evernoteには同名の「ノートブック」があり、検索すれば「プロジェクトノート」が登場します。24分の間、このノートブックのチェックリストに肉付けしていくのです。
TaskChute2のRepeat設定は多様ですから、好きな頻度で繰り返しプロジェクトシートを参照して、必要だと思われる時間、作業します。もし作業がはかばかしく進展しなければ、見積もり時間を増やせばいいのです。
Evernoteの「プロジェクトシート」にあるチェックリストは、ここのところ話題にしている「ミニマムリスト」です。このチェックリストに全てチェックが入れば最低限の作業はこなしたこととみなします。
参照先のプロジェクトシートはいうまでもなくEvernoteでなくてもOKです。マインドマップでもOmnifocusでも好きなものを使えばいいのです。ただ何を参照すればいいのかはTaskChute2に記しておかなければダメでしょう。
この方法がいいのはプロジェクト管理ツールとして好きなものを使えることと、TaskChute2側ではあたかもルーチン管理しているだけのようなやり方で、プロジェクトを進行させていくことが出来る点です。やることはもちろん毎日変化しますが、毎日同じプロジェクトを見ていくところがルーチンです。
この方法の欠点は、先の見積もり時間がやや粗雑になるところです。毎日違う作業をやるのですから、実際には早く終わったり、時間がかかったりします。時間だけでプロジェクトの作業を調整できないとき、この方法による「見積もり」はかなり粗いものとならざるを得ません。
したがって見積もりをもっと精緻にしたいとき、もう一つの方法を用います。
TaskChuteに直接入れる
この図で表している方法は、プロジェクトの全行程を最初からTaskChute2に入力しきってしまう方法です。もちろん他にやることがでてくれば、そのつど投入します。
この方法、いささか面倒ですし、階層化がまったくできないTaskChuteでは全貌が見にくいという欠点はあります。
しかし、時間の見積もりがかなり精密にできるという点と、手順が上から下まで一意に決まり、それを全部TaskChute2で管理できるという点では抜群です。
この方法を提示するとだいたい評判が良くありません。入力が面倒だとか(これは誤解ですが)階層化できないと全体像がわかりにくいなどいろいろな問題点を指摘されます。
私自身そんな不満をつい申し述べたくなります。ただ、実のところ本当に進めたい物事に関しては、この方法が一番だという気がしています。結局仕事をしなければならないとき、タスクが階層に整理されていることや、適切なコンテクストに分類されていることは、二義的な問題です。
計画を立てるのは意味があることですが、立てたら後は実行するしかありません。TaskChuteのすごいところは実行を強力に後押しすることです。上の図のようにやるべき事がやる順に、かかる時間とともに並んでいるだけのリストは無骨というようなものですが、作業をやるときにはこんなものです。
よく思うことですが、TaskChuteにタスクを入れたくないと思うときがあります。それは「入れたが最後やることになる」と私が骨身にしみてよく知っているからです。Omnifocusにタスクを入れるときの心の声は「これはやりたいけど骨は折りたくない。そう、いつかやりたい」なのです。
心理学入門一歩手前―「心の科学」のパラドックス | |
道又 爾
勁草書房 2009-03-19 |
この本は大学の心理学部に入学したいという方にはぜひ読んでいただきたい本です。もっともそういう方がどのくらいシゴタノ!を読んでいらっしゃるのか疑問なしともしませんが。
タイトルはとても謙虚かつ実はよく考えられているのですがそれでも誤解を振りまいています。このタイトルではどうしても「この本読んで入門の入門がわかる程度なのか」と思われかねません。
実はそんな本では全然ないのです。一般に、心理学の主要な教科書を10冊くらい読むと(そうすると5000ページくらいは読むことになるのですが)、わけがわからなくなってしまいかねないのです。
そこをわけがわからなくならないようにしてくれるのが本書です。心理学は「心理術」でもなければ「心理の学」でもなく(ちょうど「金融工学」が「お金をうまく借りる術」ではないように)、「心の科学(理学)」なのです。この説明にまったくわけがわからないという人で、かつ、それでも心理学に興味のある方にオススメです。