「やる気になるまで、やらない」で本当に大丈夫?



先週はセミナー週間でした。デビッド・アレン氏、大橋悦夫さん、堀正岳さんのセミナーを聞いて回って、一週間が過ぎました。

三者三様で微妙に違いはあるものの、そこには共通して見受けられる、「一歩進んだ仕事術」が見受けられました。その枠組みを取り出すと、だいたい次の通り。

1.やる気になるまで、やらない

モチベーションが高まるには、実はそれなりの理由が必要です。

締め切り間際だとか、これをやると後で良いことがあるなど。

他にも、

それぞれ立派な「動機づけ」として機能します。

しかし、アレン氏にせよ大橋さんにせよ堀さんにせよ、締め切り、お金、賞賛という要因について、動機づけとしては、あまり話をしませんでした。

大橋さんが「楽しむ」という表現で、堀さんが「快感」という言い回しで、それぞれさらりと触れたにとどまりました。

これは、三者ともに仕事をこなすという行為を、習慣という枠組みの中で、徐々にタスクを消滅させていくイメージでとらえているからのようです。

キーワードは「習慣」(ルーチン)でした。

究極的に、「習慣」には特別な「動機づけ」が必要ありません。

「気がついたらやっていた」というのが理想なのです。

しかし、理想は理想であり、常に現実とは乖離するもの。

現実には「やる気」が必要となることもあるわけです。

ではどうやって、「やる気」を奮い立たせるのか?

ここのところで三者の意見は、ほぼ一致しています。

「やる気」を涌かせようとする努力はあまりうまくいかないので、「やる気」が涌くのを待つ、というようなスタンスなのです。

デビッド・アレン氏の次の発想が典型的です。

頭の中がゴチャゴチャになったり、タスクの数が多くなったときにレビューをするようにしている。わたしが我慢できるのは7日くらい。それがレビューを週次でやっている理由なんだ。

デビッド・アレン氏が答える、GTD Q&A

以下は大橋さんから聞いた話なのですが、ある人は家計簿を継続的に付けることに成功しているものの、「毎日付けることはできない」そうです。

しかし「レシートがたまると片付けたくなる」から続いているとのこと。

気をつけて自分の心に注意していれば、「溜める」ことから来るわずかなストレスが、やる気を増してくれるということです。

我田引水のようになってしまいますが、拙著『やる気ハックス』でも、このテーマはずっと流れています。



2.やる気になって、処理する

とは言え、「溜める」ことから来るストレスが「わずか」であるうちは良いのですが、油断しているとあっという間に山のようになる、あるいは、家計簿の場合には、レシートがたまって、もはや処理する気がしなくなります。

つまり、ほどよくやる気がわいたところで、さっと実行処理する必要があるわけです。

思うに、仕事をうまく回すことができ、一見「やる気」があるように見える人というのは、このポイントを見逃さないのだと思います(アレン氏も堀さんも、自分のことを「lazy」とか「怠惰」だと何度か言っていました)。

このタイミングを確実につかむには、どうしたらいいでしょう。

言葉で説明するなら、やりがいがちょうど感じられるけれど、取りかかることに負担は感じない、ぎりぎりの蓄積量ということになります。

そのような「分量」を前にすると、人はどのように「感じる」のか?

見分けるポイントは、「痛み」と「楽しさ」。

『 メンタル ・ タフネス 』前半のまとめ

つまり、「痛み」というストレスと、「楽しさ」という「やりがい」の、双方を同時に感じられるような状況が、作業に取りかかるべきタイミングと言えるのです。

どちらかが感じられなくなり出したら、もはやタイミングは過ぎ去りつつあることになります。



3.一息つく

ブログを書くことがタフネストレーニングあるいはメンテナンストレーニングのレベルにセットできていれば、そこにウェーブが生まれ、文字通り継続のための波動が生まれます。ボートをこいだり、シーソーを動かしたりするときのような書く(負荷)と休む(回復)のリズムに乗ることができるわけです。

『 メンタル ・ タフネス 』前半のまとめ

こうして習慣が形成され、リズムに乗ることができるわけです。

という流れができるのでしょう。

それだったら、誰もがやっていることではないか、と思われそうです。

という流れとどう違うのか、と。

ほぼ全く同じように見えますが、一点だけ違います。

「痛み」と「楽しさ」を同時に感じられるタイミングを、見逃しているところです。

つまり、やる気が出るタイミングまで待つのはいいとしても、やる気が出るのを遙かに超えて、仕事が膨大に溜まってしまっては、いけないわけです。

それでは、「痛み」と「痛み」になってしまいます。

非常に忙しい人の場合にはだから、「一息」が文字通り一息になるはずです。

「すぐに」取りかかることで、ようやっと「痛み」と「楽しさ」が同時に感じられる量で済むからです。

GTDをはじめとする、仕事を処理するシステムを持つことの意味は、「どこでやる気のアクセルを踏み込むか」を把握するのが、容易になることもあるでしょう。

私であれば、カレンダーを眺めて、「1日の分量がこの量なら、やる気になる」という組み合わせを設定します。

多すぎると逃避したくなるし、少なすぎると先送りするからです。

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