家事の1つに「ゴミ出し」があります。これをきちんと行うコツは次のポイントを守ることだと考えています。
1.ゴミの種類に応じて決められている曜日を覚えておく
2.ゴミを出す日の前の晩から準備を始めておく
3.ゴミを出す朝に忘れずに出す
いずれも当たり前のことばかりですが、どれか1つでも欠ければ「ゴミ出し」は失敗のリスクにさらされます。例えば、「燃えるゴミ」を出す日を忘れていれば、タイミングを逃して部屋にゴミを留まらせてしまいますし、
出す日の前の晩に袋にまとめておかなければ、当日の朝のバタバタに紛れて「今日は時間がないからまた次回!」という先送りに甘んじてしまうかもしれません。
さらに、出す準備ができていても、コロッと忘れてしまえばそれまでの努力は無に帰します。
この中で、1と3については以下のようなリマインダーツールを使うことで「覚えておく」という仕事を“外部委託”できます。
・Remember The Milk
・R*PAD
・Googleカレンダー
問題は2の「ゴミを出す日の前の晩から準備を始めておく」という“仕込み作業”です。
次の仕事の準備作業に一時的にリソースを割り当てる
学生時代に某ファーストフード店でアルバイトをしていたのですが、もっぱら夜から閉店(クローズ)までの時間帯を担当することが多かったため、通常の調理業務に加えて閉店業務も経験することができました。言わば、ルーチンを回すだけでなくこれを収束させる仕事の進め方についても学ぶことができたわけです(その後、早朝の開店業務についても経験する機会があっため、その店の一通りの業務を把握できました)。
その店は、23時が閉店だったのですが20時になると“プレクロ”と呼ばれる、閉店に向けての準備作業が通常の調理業務と並行して走り始めます。言わば、閉店に向けた“仕込み作業”です。
“プレクロ”の正式名称は聞きそびれてしまいましたが、おそらく「プレ・クローズ業務」、すなわち「クローズに先立つ準備作業」といった意味だと思います。
端的に言えば、進行中の仕事の手を緩めて、次の仕事の準備作業にリソースを一部割り当てることです。
閉店時間が近づいてくれば客足も減ってきますから、調理スタッフのリソースは空き気味になります。そのアイドルタイムを利用して、閉店にまつわるたくさんの作業を少しずつ進めていくわけです。例えば、2面ある鉄板のうち1面は火を落としたり、その日の調理を終えたフライヤー(揚げ物をするところ)の網や換気扇を取り外したり、洗い物を集中して片づけたりします。
こうして23時に店が完全に閉まると、すでに店内の片づけはあらかた進んでいるため、そこから残りの作業を仕上げて、終電までに完全撤収できます。
もし、“プレクロ”をしていなければ、店が閉まるまで片づけ作業を一切しないわけですから、閉店後は膨大な作業を前にパニックになってしまうでしょう。スタッフは終電で帰ることができなくなりますし、それだけの仕事量を短時間でこなすためにスタッフを増員する必要が出てきて、経営サイドとしても深夜割増の人件費負担増は無視できないものになるはずです。
“プレクロ”という閉店業務負荷の平準化により、コストを抑えることができるわけです。
ゴミ出しも、前の晩のうちに袋にまとめておき、できれば玄関まで出しておけば、出し忘れることはなくなるでしょう。
その時になってからでは手遅れになる
仕事においても、“プレクロ”のような考え方は有効です。例えば、締め切りがかなり先にあるような仕事でも、
「その時になってから考え始めればいいか」
と油断して先送りしていると、たいてい直前になって慌てるものです。
「その時」になってから考え始めるということは、あらゆることを「その時」にしなければならないことを受け入れることになります。野球で言えば、盗塁するときにまったく「リード」をせずに走り出すようなもので、盗塁の成功率は格段に下がるでしょう。
「その時」になるまで手をつけていけないというルールはないはずですから(契約上、先行着手が認められていない仕事でもない限り)、「今」できることがあれば、先に手をつけてしまうことで「リード」を稼ぐことができるわけです。これが、仕事における“プレクロ”です。
「リード」を稼いだ上で「その時」を迎えられれば、すでに進捗はある程度稼ぐことができているため、取りかかりもスムーズになり、終えるための負荷も小さくて済むでしょう。
その結果、余裕が生まれます。この余裕は、締め切りに追われて「本当に終わるだろうか」というプレッシャーのもとで感じるストレスとは対極にあるものですから、快感として記憶されるでしょう。そうなれば、次なる“プレクロ”に手をつける後押しにもなるはずです。「またあの快感を味わいたい」と思うからです。
仕事における“プレクロ”を習慣づけるには、ほんの数行でもいいので、まだ締め切りまでに日数のある仕事に取りかかっておくことです。その仕事を本格的に着手しようとした時に、その数行を目にすることによって、スムーズにその仕事に入っていけるようになります。たとえほんの数行であっても白紙の状態とは比較にならないほどのアフォーダンスが発揮されます(=途中まで進んでいるのを見れば何となく取りかかりたくなる)。当然、終わるまでの時間も、まっさらな状態から始めるよりも短くて済むはずです。
▼関連:
・1週間分の仕事を前倒しして終わらせるための3つの条件
以上をまとめると、
1.「ついでにパワー」が発揮される環境づくり
2.「締切に追われたくない」という感情
3.「仕事ストック」の見える化の3点が満たされれば、前倒しの動機付けが得られる、ということになります。
ブログにおいて、曜日ごとにテーマを決めることは、どんな“調理具”を使うかを先に決めてしまうことと言えます。これは、ある意味でアフォーダンスの応用と言えるかもしれません。
あとで思い出したい、もっと言えば、未来のある特定のタイミングに思い出したい、ということがあります。このような時に役に立つのが、リマインダーですが、使い込んでいくと「単に指定した日時に間違いなく思い出させてくれる」だけでは物足りなくなり、「もっと少ない手間で設定ができるといいのに」などと思うようになります。
さもなければ、
「リマインダーをセットするのは面倒だし、その時になれば思い出すだろう」
と高をくくって、結局「その時」を迎えるころには忘れてしまう、かもしれないからです。
例えば、以下のようなルール。
●締め切りまでにまだ余裕があっても、その仕事を今日やり終えることができれば、締め切りまでの残り日数分をポイントとして付与。
・金曜日が締め切りの仕事を火曜日(3日前)にやり終えたなら3ポイント。
・水曜日(2日前)なら2ポイント。
・そして、締め切り前日にやり終えたら、マイナス5ポイント。少し厳しすぎるような気もするので、やり終えなくても、とにかく何かしら手を付けることができたら、ということでも良いかも知れません。少なくとも締め切り前日になって初めて手を付けるという危険な行為を抑止でききれば、事態はかなり改善されると考えられるからです。
エアーの予約で言えば、「早割」のような特典を用意することになります。早く着手すればするほど、仕事が楽になるわけです。
つまり、締め切り直前まで手がつけられないのは、「やらなければならない」という「現実の切迫感」が薄いから、ということになります。
「現実の切迫感」が薄いなら、人工的に濃くしてしまえばいいのではないか、と考え、僕が最近実践している方法をご紹介します。