成功している人の習慣を真似しようとすると(真似するつもりがなくても知らず知らずのうちに影響を受けていると)、当然その人と同じやり方、同じメニュー、同じ分量をこなせるはずがないので「(まだ成功していない)自分には無理だ」と考えてしまうからです。
今の自分にできるやり方、メニュー、分量で「第一歩」を踏み出せばいいのに、それがあまりにも貧弱ゥに感じられるために、こんなペースでは到底ゴールにたどり着けない、という絶望をいち早く予感してしまう。
イメージとしては「100万円を貯めるために、今日から毎日1円を貯金箱に入れる」ような無力感です。
「絶対みんなにバカにされる…」という穴があったらそそくさと入ってしまいたい感。
しかし、ここを乗り越えされすれば、習慣は安定軌道に乗る。乗り越えるべきハードルは意外と低い。
そんなことをを教えてくれるのが『小さな習慣』という本です。
「小さな目標は大きな目標より優れている!」
いきなり話が逸れますが、最近「シリコンバレー」というシリーズドラマを見ていて、
「Small is new big.」
というセリフが印象に残りました。
「小ささこそ正義」みたいな意味合いです(ドラマの主人公であるリチャードが立ち上げたベンチャー企業が、ファイルの圧縮技術をウリにしているところから、製品発表の際にCEOがこのセリフを口にします)。
そんな「Small is new big.」を思い出したのは、本書で以下のフレーズにぶつかったときです。
小さな目標は大きな目標より優れている!
つまり、目標は小さくしましょう、ということです。
実際、本書の著者は、「腕立て伏せを1回行う」という目標を立ててトレーニングをスタートしています。
汗をかきながら不快な思いをして30分の筋トレをする代わりに、腕立て伏せを1回だけするのはどうだろう?
それ以上を自分に強いることなく、とにかく1回だけ腕立て伏せをすることを目標にしてみては?それこそが私にとって、本当の意味で30分の運動の反対といえるものでした。
このばかげた考えを、最初は自分でも笑い飛ばしました。なんて哀れなんだろう!
たった1回の腕立て伏せぐらいで何が変わるっていうんだ?
もっとたくさん運動しなければならないことはわかっているじゃないか!しかし、それから何度も最初のプランに戻って試してみたものの、どうしてもうまくいきません。30分の運動という目標を達成できないことにうんざりした私は、ついにこう思いました。
もういい、とにかく1回だけ腕立て伏せをしよう。私は床に手をつき、1回腕立て伏せをしました。そして、それが私の生活をがらりと変える1回になったのです。(p.27)
葛藤しつつも、とにかくこの「1回だけ腕立て伏せ」を続けた結果、「スポーツジムでの30分の筋トレ」にまで発展したといいます。
小さな目標なら「つねに成功できる」
習慣が途絶えてしまうのは、「今日はできそうもない…」という失敗の影がちらつくからでしょう。
目標を小さくして、どう転んでもできてしまうくらいにしておくことで、この失敗を防ぐことができます。
2008年の金融危機のころ、銀行は「大きすぎて潰せない」という言葉がありましたが、小さな習慣の場合は「小さすぎて失敗するわけがない」といえます。
そのため、目標を達成できない自分への失望感や罪悪感に悩まされる心配もありません。なんといっても、最初から毎日の成功が約束されているのですから。
つねに目標を達成できることが励みとなり、さらに続けようと思うポジティブなサイクルが生まれます。私は小さな習慣から、立ち止まらずに進み続ける力をもらいました。以前には、始めることさえできないと感じていたのですから、これは大きな変化です。(p.36)
実際にやってみたら確かに続く!
目標を小さくすれば良い、という考え方は、僕にとってまったく新しいものではありませんでした。
でも、新しくないからこそ注目しなかったのでしょう。いつでもできると思ってやっていなかったのです。
本書をきっかけに実際に小さくしてみました。
以下はいずれも「今日は時間がないからパス!」と先送りしがちな習慣たちでしたが、「2ページだけ」とか「1回だけ」と限定することで見え方がガラリと変わり、そそくさと取り組めるようになりました。
やってみると、「2ページ」や「1回」では終わらずにどんどん進めてしまうことも多いのですが、本当にしんどいときは実際に「2ページ」や「1回」で済ませることもあります。それでもOKなところがこのやり方のミソです。
経緯については以下ツイートした通りです。
最近また痛感した。毎日続けようと決めた習慣が途切れるのは、気づかないうちにみずからハードルを上げているから、ということに。
「走るからには最低でも30分は走らないと」 → 今日はそんなに時間がない。
「書くからには最低でも2000字は書かないと」 → 今日はそこまでのネタがない。— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) 2018年1月25日
代わりに目標をミニマムに変える。
「5分だけ走る」
「1行だけ書く」
毎日続けられるサイズにすることで途切れさせない。
積立貯金は地味だけど続く。「余ったら貯金」は派手だけど途切れがち。
迷ったらモテるほうより続けられるほうを選ぶ。— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) 2018年1月25日
早速今日からミニマム化を開始。
いずれも「今日は時間がないからパス!」と先送りしてた習慣たち。いずれも2、3分で終わるものばかりなのに、先送りしてもたいして時間が浮くわけではないのに、気持ち的に負けちゃってて。
2ページだけなら、1回だけなら、やったるやったるって。 #たすくま pic.twitter.com/nMjdhWqzvE
— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) 2018年1月25日
ミニマム化したら途端に小さな習慣たちが回り始めた。認識がガラッと変わり、迷いがなくなった。
思うに、続けるほどに小賢しくなり「これくらいしかやらないのではやったうちに入らない」とか言ってみずからハードルを引き上げて習慣という可能性の苗木を枯らせてしまうのだなー。
— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) 2018年1月26日
まとめ
本書の「腕立て伏せ1回」は習慣継続の入り口として秀逸ですが、その先を読み進めていくと、モチベーションと意志力の違いと使い分け方についてかなり突っ込んで語られていたり、よく言われる「習慣が定着するまでの期間は3週間」を否定していたりと、興味深い内容が多いです。
2018年はまだ始まったばかりではありますが、現時点で間違いなく今年一番の一冊になりそうです。