どのように使っていくかはまだ模索の途上ですので、今回はこの感慨についてまず書いてみます。
Scrapboxで現在Evernoteで行っていることのいくつか(あるいは大半?)ができそうな予感。「同期」を待たなくてもいいのがすごい。
— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) 2017年4月4日
橋本商会さんのScrapboxがめちゃくちゃ参考になる。 https://t.co/vQMkC33pi5
— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) 2017年4月4日
「クリック・クリティーク」の衝撃
かつて「クリック・クリティーク」というウェブサイトがありました。
僕が初めてこのサイトに訪れたのは 1997年10月。いわゆる「ウェブ日記」のサイトだったのですが、当時の自分の目を惹いたのは、このサイトにはいっさいの静的コンテンツがなく、どのページもクリックされたタイミングで動的に生成されていることでした。
「クリック・クリティーク」は当時まだ僕自身が勉強中だったCGIという仕組みで動いているようでした。その仕組みが「全文検索システム Namazu」であったことも後で分かりました。
例えば、ある日の日記に「ジェラール・フィリップ」という言葉があり、この言葉にはアンダーラインが引かれていてクリックできるようになっています。
これをクリックすると「ジェラール・フィリップ」を含むページ一覧が表示されます。
また、このサイトには「索引ページ」が存在し、数多の言葉が整然と並んでいます。英単語はアルファベット順、日本語は五十音順にソートされ、それぞれの言葉の後ろにはその言葉が含まれる個数がカッコ書きで記されています。
日記は毎日更新されるため、この「索引ページ」は(おそらくその都度)同期されて、最新化されていたのでしょう。
日記を1本アップするたびに、その日記本文を横断検索して、索引に登場するすべてのキーワードとのマッチング(突き合わせ)を行い、マッチしたものがあれば、索引ページにその日の日記ページへのリンクを追加する、という同期処理です。
個人の日記でこれほどシステマティックなものに初めて出会い、衝撃を受けました。
仕組みだけにとどまらず、このサイトの管理人のKさんは映画や文学にも造詣が深く、日記に混じって、しっかりと時間をかけて書かれたであろう映画評や書評がアップされていました。ちなみに「ジェラール・フィリップ」はフランスの俳優です。
プロフィールページには過去に議員秘書をしていたという経歴が見えましたが、そんなKさんは実は当時の自分と同年代。
まだ会社員2年目の、何者でもない自分にとって、Kさんは即座に憧れの対象となりました。
幸運なことに、何度かメールのやり取りをさせてもらい、いつしか「クリック・クリティーク」のようなサイトを作りたいと熱望するようになりました。
ところが、ほどなくしてこの「クリック・クリティーク」は忽然と姿を消してしまいます。
Kさんは実名で運営していたので、その後も折に触れてその消息を追い続けていましたが、果たせず…。
↓以下、辛うじて残っていた、同じく影響を受けた方による「クリック・クリティーク」評です。
96.4.23
クリッククリティークというページの「走り書きコーナー」を見て、この「航海日誌」をつくることにした。なかなか忙しくて、本来のウェブ雑誌というものに手が付かず、なかなか更新されないまま、自分の気持ちも離れていってしまうという悪循環になっていたところで、このクリッククリティークのページに出会った。こういう形で早めに更新していけば自分にとっても、読んでくれる人にもいいのではないかと思いまねをした次第だ。
それにしてもこのクリッククリティークの越田さんはすごい。洞察力。文章力。明晰さ。それよりなによりインターネットを「個人の意見を発信する」場と捉えるスタンスがうちだされていることに、はっとした。頭の中ではそう感じていながら、そういうふうに自分の考えを切り出す勇気が僕にはなかったと思い知らされたのであった。そういう意味では僕は「走り書きコーナー」というスタイルをマネしたいのではなくて、彼のスタンスに学びたいのだと思う。
Kさんの影を追ってサイトを開設
「クリック・クリティーク」の消失と時を同じくして、多忙な日々で燃え尽きていた僕は、4年間勤めた会社を辞めることになりました。
会社を辞めた9ヶ月後の2001年1月5日、ふと思い立ってサイトを開設することを思い立ちます。
まだブログのない時代でしたので、無料配布されていたCGIスクリプトを使ってウェブ日記をスタートします。
頭の中に思い描いていたのはもちろん「クリック・クリティーク」。サイト名も「クリック・クリティーク」でKさんの日記につけられていた「走り書き」というタイトル(コーナー名)を拝借し、そのまま「走り書き」としました。
到底その域には達しませんでしたが、僕なりにスクリプトを改造しながら、自分独自の見せ方を追求していました。
結論から言うと、このサイトは1年半後の2002年8月をもって閉鎖し、僕なりの「クリック・クリティーク」再現プロジェクトはいったん先送りとなりました。
そして、Scrapboxへ
その翌年の2003年にブログが登場し、ウェブの世界が一気にひらけてきます。
そんなある日、仕事の忙しさのあまりすっかり忘れていた「クリック・クリティーク」への情熱を、突然思い出すことになりました。
きっかけとなったのは「たつをのChangeLog」というサイトです。
僕の中で「クリック・クリティークの再来!」と一気に心拍数が上がりました。
こういうことがやりたかったのだ、と。
しかし、当時はすでにこのブログ「シゴタノ!」を始めていたので、タイミングが合わない感じでした。改めて仕組みの研究とサイト構築にエネルギーをふり向ける余裕がなかったからです。
かくして、熾火(おきび)のごとくずっとくすぶり続けていた情熱が、Scrapboxの登場によってようやく解放されるような気がしています。
↓Scrapboxについては、昨日の「のきばトーク」で話題になっていたので、参考まで。