なぜそうなってしまったかというと、書くのがおっくうでない代替手段が出てきたからです。
それは、TwitterのDM。
「○○様」に始まり「お世話になっております」とか「おつかれさまです」といった挨拶は、メールにおいてはもはや慣例となっているわけですが、TwitterのDMを始めてみると、こういった“前奏”は余計なものに思えてきます。
140字という制約があるために、最も伝えたい“サビ”の部分から入らざるを得ない。制約のおかげで堂々と単刀直入に話を切り出せるようになるわけです。もちろん、これまでのメールでも同じことはできますが、相手との関係が浅い段階ではやりづらいことでした。
そんなわけで、最近は仕事の連絡ももっぱらTwitterのDMを多用しています。最初こそ、宛先を間違えたり、誤ってタイムラインに流してしまったり、といった恥ずかしいミスもあって、かなり慎重に送っていましたが、最近では操作にも慣れてきて、お箸や受話器のごとく使えるようになりました。
で、今回の主旨は「TwitterのDMって便利!」ということではありません。
なぜ、これまでのメールは面倒で、TwitterのDMは面倒ではないのか。そのように感じる理由としては次の3つが考えられます。
- メールは字数無制限、TwitterのDMは140字
- メールはおなじみ、TwitterのDMは珍しい
- メールは多機能、TwitterのDMは単機能
真っ先に気づくのは、先にも書いた通り字数制限でしょう。上限が決まっているために割り切って書けますし、おのずと一番言いたいことに注意が向きます。
続いて、ツールとしての新鮮味です。どんなツールであれ──つき合う人しかり、身を置く環境しかり──最初は良く見えるものです。
最後に機能の豊富さ。メールはファイル添付、転送、CC・BCC、署名、改行位置の工夫などなど、凝り出すとキリがありません。一度自分なりの型を決めても、いずれ飽きてまた新たな型を求めます。その点、TwitterのDMはテキストメールのやり取りという機能に特化し、ほかに工夫の余地はほとんどありません。
まとめると、1)制約があって、2)新鮮味があって、3)迷わず使える、という3点です。
これらは、仕事に役立つツールを選ぶときの判断基準でもあります。
ケータイやiPhoneにもタイマー機能がついていますが、実際の仕事には、このデジタルタイマーを使います。新鮮味はありませんし、最大99分99秒しかカウントダウンできませんが、「5分後に出発しよう」とか「3分後にお風呂の水を止めよう」といった時に迷うことなく時間のセットができます。セットしたらすぐに仕事に戻れます。
ケータイやiPhoneの場合は、まずタイマー機能を呼び出すための操作が必要になります。でも、呼び出す前にケータイに届いているメールに気を取られるかもしれません。目にした壁紙が気に入らず、別のものに変えたいと考えるかもしれません。
ちょっとした感情のさざ波ではありますが、それによって心の風向きが変わってしまうことはよくあることです。時間を計ろうとしていただけなのに、気づくとケータイに来ていたメールの返信を書いている。アドレスごとに別の着信メロディが鳴るように設定を変更している。使ったことがない機能を一通り試している…。
こういうことが重なると自己嫌悪に陥ってしまいます。問題は意志の弱さではなく、ツールの機能の豊富さです。
残念ながら万能なツールはありません。おそらくTwitterのDMへの熱も時期が来れば冷めるでしょう。でも、その時までには、TwitterのDMに代わる新しいツールが登場し、そちらにおそるおそる乗り換えているような気がします。
大事なことは、ツールではなくやりたいことを軸に据えること。「このツールを使ってさえいれば大丈夫」と考えていると、ツールが軸になってあなたが振り回されることになりかねません。
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究極のツールは、実は自分の脳です。これを最大限に使いこなすことができれば、ツールは最小限で済むはずです。でも、現実には脳を最小限にしか使っておらず、足りない分をツールで補おうとしているところがあります。
そこで役に立つのが以下の一冊。具体的なツールの話はいっさい出てきません。代わりに脳というツールをいかに活用するか、その実力を引き出すための方法が紹介されています。タイトルは『人を動かす技術』ですが、そのために必要な「自分を動かす技術」からきちんと解説されています。
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