だから夢遊病の症状が出ているときでも、湯を沸かしてお茶をいれることができる。眠ったままモーターボートを操縦したり、あるいは電気のこぎりで木を切ったあとベッドに戻ったというケースもあるが、一般的に、夢遊病患者は自分や他人に危険を及ぼすようなことはしない。眠っているときでも、危機を避ける本能が働くのだ。
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「モーターボートを操縦」するとか「電気のこぎりで木を切る」といったことが必要になったとき、人が「でもめんどうくさいという気持ちに打ち勝てない」などといったりしますが、それは何か訴える先が間違っていると思われます。
眠っている人がいったいどのような「やる気」を発揮したというのでしょう。寝ながらできるようなことを「やる気」を持ってしなければならないというのは、何かが変です。
もちろん、モーターボートの操縦は、そもそもそれをする技術が必要ですが、電気のこぎりで木を切ることなら、たぶんたいていの人にやれるでしょう。(うまくないというのはここでは関係ありません)。
でも、やる気になれない。外は寒い。雪が降っている。
これは、なんなのでしょう?
できない理由は「やる気が足りないから」ではない
やる気になれないと人が言うとき、そこでむしろ主張されていることは、「それは当然できるけど、積極的にやらずにいたい理由がある」ということなのです。「やる気が足りなくてできない」のではなく「やらずにいたいから動かない」のが本当のところです。
やる気というのを「覚醒レベル」と考えてしまったら、習慣化できているというだけの理由から、夢遊病者がいろんなことをできる(してしまう)理由が、全然説明できなくなります。繰り返しになりますが夢遊病は特殊な現象です。
ただ、目を開けて料理をしたり、ベッドメイクをしたりといったことが、眠っていてもできるのに、それより明らかに「覚醒レベルだけは」高い意識状態にありつつ、しかも技術的にはできることを、「やる気がしない」という理由「できない」としたら、それはむしろ心理的抵抗が強く働いていると考えないとつじつまが合わないでしょう。
今度、何かやる気がしないことや、非常に面倒だと思うことがあったら、1度自問してみる価値があります。それをせずにいたい積極的な理由は何なのか、と。
一般にやる気や行動力の話になると、それをするべき積極的理由や目的、目標、そして動機づけといったキーワードがあふれがちです。それは、前進しようという気持ちが足りないという問題とされているわけです。しかし、むしろその場にとどまっていたい、できれば後退したいという理由がなくなれば、やる気などなくても自動的に実行できることなのかもしれません。
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『すごい手抜き』、各所でわりと好評いただいております。
「手抜きの方法というよりは、脱完璧主義の本」と評されることもありますが、両者は完全には分けられないのです。
なぜなら、「完璧にやり遂げないなら、ある意味では手抜き」なのであって、しかしそれは主観的に決まってしまうものだからです。
ということは、この本にふんだんに書いておきました。ともかく、「なんだか仕事が苦しい」という方に一読いただきたいと思います。
「一読いただきたい」などというのは、著者の言うべきことではないと思いますが、本書の性質は「一読してみて、そういう考え方もあるかと思ってもらう」のが筆者の意図だからです。
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