難しい問題に取り組むときには小学校で教わったように(!)集中モードになってがんばるだろう。
しかし、ここが肝心なところで、じつは拡散モードも問題解決で重要な役割を果たしている。ことに難問を解く場合に拡散モードが必要になる。
ところが、皮肉にも問題に意識を集中している限り、拡散モードの状態に入ることはない。
いまでは文庫版の方の『スピードハックス仕事術』(KADOKAWA)のほうが入手しやすいと思いますが、その中に次のような一説を盛り込んであります。
寝かす時間を間に差し込むことによって、一気に考えた場合には思いつけなかったようなアイデアを盛り込んでいくことができるようになります。
仮にトータルでは同じ時間がかかっていたとしても、スケジューリングの方法の違いによって、アウトプットの質が大きく変わるということです。これはある意味では「裏の時間」すなわち「無意識」を活用していることになります。
「締め切り効果」ばかりに頼るのはもったいない
昨今では『スピードハックス』を書いたころよりもいっそう人々の労働条件に余裕がなくなっているせいなのか、こういうメリットが顧みられなくなる傾向があります。
仮にトータルでは同じ時間がかかっていたとしても、というところがこの一節のキモで、時間計画を早めに立てることのメリットは、このように目に見えにくいところにも様々あるわけです。
面倒なタスク管理などしなくても、締め切りギリギリになって締め切りのことを思いだし、追い込まれるプレッシャーを頼りに、一気に仕事を片付けてしまう、ということはできます。
そのようにすれば、結局「前々から計画を立ててコツコツやる」のと、締め切り前に終わらせるという結果と変わらないのだから、どちらも価値は変わらない、と思う人もあるでしょう。
ギリギリに手がけるのは、締め切りに間に合わせるという条件自体を保証できないものにしてしまっているというデメリットがそもそもありますが、間に合う限り「間に合っている」という点では等価かもしれません。
しかし、仕事を終わらせて、時間をおいてから再評価するためには、締め切りギリギリに終わらせるというのはいいやり方ではありません。そういうことができなくなるからです。
拡散思考は、仕事に取り組みながらも、集中していない時間帯にこそ進む思考です。そのメリットは存外大きいので、締め切り効果ばかりに頼るのはもったいないと言うこともできるのです。
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