「見える化」したら「見えなくする化」というエントリーに対して以下のようなコメントをいただきました。
スターとラベルの両方を付ける意味は何ですか?片方だけでもできそうな気がしますが。
これだけでは初めて読んだ方には意味不明と思いますので、改めて簡単におさらいしながら考えてみます。
●Gmailの構造
スターとラベルというのはGmailの機能のことを指しています。いずれもメールに対して付与できる印のことです。
スターは、クリックするとONになり、もう一度クリックするとOFFになります。ラベルは、予め自分で設定しておいた名前群をプルダウンから選んで適用あるいは解除するものです。
ラベルは、従来のメールソフトが備えていたフォルダに代替される仕組みと言えるでしょう。フォルダは、メールを「従」としてとらえる前提ですが、ラベルは、メールを「主」としてとらえます。
言い換えれば、フォルダ管理はメールを複製しない限りメールとの関係は一対一になりますが、ラベル管理は、多対一になります。フォルダ管理の悩みの種の1つは、複数のフォルダに所属しうるメールの扱いでした。ラベル管理はこの悩みを解消してくれます。つまり1つのメールに複数のラベルをつけることができるのです。
1.受信トレイ
2.送信済みメール
3.下書き
4.迷惑メール
5.ゴミ箱
の5種類です。「迷惑メール」と「ゴミ箱」は処理上の末端ポイントなので、今回は脇に置きます。「送信済みメール」と「下書き」はそれぞれ文字通りの意味なのでこれも良いでしょう。気にするべきは受信トレイです。
受信トレイは届いたメールがまず到着する滑走路のようなものです。滑走路ですから後から届くメールのために空けておく必要があります。でも、受信トレイ以外には迷惑メールかゴミ箱しか「フォルダ」がないので空けるには新たなフォルダを作りたい衝動に駆られます。
その衝動に応えるのが「アーカイブ」という仕組みです。アーカイブされたメールは、受信トレイからは見えなくなります(「見えなくする化」)。でも、「すべてのメール」をクリックすることで再び見える化されます。
一読してとりあえず再読の必要がないメールはアーカイブしておきますが、返信が必要だったり何らかの作業をするきっかけとなるようなメールであれば、印をつけておきたい衝動に駆られます。
その衝動に応えるのが、スターでありラベルです。「スターあり」をクリックすることでスターのついたメールの一覧に切り替わりますし、ラベル一覧から任意のラベルをクリックすれば、該当のラベルがついたメールの一覧に切り替わります。
ちょうど、Excelでオートフィルタをかけているのと同じ状態です。データはすべてそこにあり、必要に応じて条件抽出をする、ということになります。
従来のフォルダの欠点は、一度振り分けてしまったらそれが固定化されてしまうということでした。例えば、確かに受信したはずだが、どのフォルダに振り分けたか忘れてしまった、という事態が起こりえます。
一方、ラベルの場合は、メールは届いた通りの順番を保持していますので、どれだけたくさんのラベルがついていても、「すべてのメール」を見ることで時系列を追って容易に見つけ出すことができます。
ラベルの考え方は、住所録ソフトをイメージするとわかりやすいかも知れません。住所録ソフトでは個人データはすべて五十音順など任意の順番で格納されており、必要に応じて「友人」や「会社」といったラベルをつけてデータを識別します。これによりどこに誰が格納されているかを知らなくても「友人一覧」や「会社一覧」といったリストを簡単に取り出すことができます。大まかに言えば、Gmailはメールを住所録のように管理していると言えるでしょう。
とはいえ、ラベルにも欠点があります。
それは、
1.適切なラベルを考える必要があること
2.振り分けの手間が発生すること
の2点です。特に2点目の手間。ラベルを適用する際には、対象のメールを選択した上でプルダウンからラベルを選択する、という2つの作業が必要になるのですが、メールの数が多くなってくると面倒なものです。プルダウンで別のラベルを選んでしまって「イラッ」としたりもします。
一方、スターの場合は、ワンクリックでON/OFFができますからラベルの適用/解除よりも手順が少なくて済みます。
●フィルタ
従来の多くのメールソフトに搭載されている「フォルダ自動振り分け」という機能にあたるものがGmailではフィルタと呼ばれています。送信者や件名などに特定の文字列が含まれていれば、自動的に指定されたラベルをつけたり、スターをつけたり、あるいは直接アーカイブさせる(=受信トレイには姿を見せない)といったことが可能です。
例えば、Yahoo!カレンダーや各種グループウェアからの定型的な書式で届く通知メールがあります。これらのメールは、何かアクションを起こすためのきっかけとして届くリマインダーメールですから、処理したか否かがわかるようにしておく必要があります。そこで、例えば以下のようなフィルタを設定しておきます。
1.「要返信」ラベルをつける
2.スターをつける
この段階で、リマインダーメールの内容に対応できるのであれば
1.その場で対応する
2.スターをはずす
3.アーカイブする
似たような処理作業はまとめてやりたいので後回し、ということであれば単に
1.アーカイブする
だけです。こうすることによってとりあえず受信トレイからは「見えなくする化」できます。言い換えれば、滑走路の見通しが良くなります。
一方、「後回し」としたメールは、メールの返信タイムの際に「要返信」一覧に現れるようになりますから、このタイミングで対応します。
このとき、対応済みのメールについてはスターがはずれているはずですので、一覧の中でもスターのついたメールだけが要返信または要対応ということになります。
もちろん、受信トレイの段階で対応が完了した場合はその場で「要返信」ラベルをはずせば良いのですが、前述の通りプルダウンでラベルを削除するという面倒な作業が発生しますので、なるべくやりたくありません。そこで、思いついたのが、スターのON/OFFでまとめて処理する、という方法だったわけです。
ポイントは、フィルタによって自動的にラベルやスターが適用されるところだと考えています。すべてのメールについて手動でラベルとスターを管理していれば確かにスターは不要ですが、勝手についてしまうメールがあるのであれば、処理したかしていないかを「目で見てわかりやすくする化」する上でスターは打って付けです。
メールが増えてくると、本当に返信したかどうか、処理したかどうかに自信が持てなくなることがありますので(情けない話ですが…)、スターという信号がメールの交通整理の役に立つわけです。