信頼できる脳の本を読みたい人のために

カテゴリー: ビジネス心理

セミナーが終わったところなどで、「最近いわゆる『脳ブーム』ですが、信頼できそうもない本がたくさん出回っているような気がします。どうしたら、信頼できる本だけを探すことができますか?」というお問い合わせをひんぱんにいただくようになりました。

これは、簡単なようで難しい問いです。厳格な認知神経科学者さんなら、「巷に出回っている本の99%は信頼できない。よって買ってはいけない」と答えるかもしれません。しかし、これもどうかと思います。たいていの人にとって、脳への興味というのはそうしたものではないから、ネイチャーやパブメドばかり読んではいられない、というよりも読む暇もないでしょう。

とはいえ、「どう見てもちょっと・・・」という本もけっこう出てきているのはたしか。極端なところでは、タイトルに「脳」とはあるけれど、中に「脳の話」は一切出てこない、ということもあります。

単純に、「常識で判断する」こともできます。あまりにうさんくさい本は、そういう雰囲気があるものです。どれがそうと言うことはしませんが、うさんくさいと感じたら、その直感に従っていいと思います。

個人的には、脳についてのムックなどをお薦めします。少なくとも日本語で書かれているので読むのは大変でないし、どの程度のことが「分かってきている」のか、読めばつかみやすくなるからです。ポイントは、「●●という実験があった」というところから、「○○すれば、××になる」というところが言えるかどうかを、どう判断するかなのです。

たとえば、「チェスの強者はIQが平均よりちょっと高かった」という統計結果があったとします。(今、勝手に作っています)。ここから、「だから、チェスをどんどん我が子にプレイさせよう。そうすればIQが高くなって、集中力も増すのです!」という本があったら、これをどう解釈するか。そんなことは言えないはずですが、だからといって「チェスはムダ!」とも言い切れない。こういうところは、常識的に判断するしかありません。

「脳科学」について一般的な概略をつかめるムック

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上記2冊はかぶっているところもありますが、何度か読み返してみる価値はあります。そうすれば、これらの知見をもとにして、たとえばビジネス書などで、それらがどういうふうに「使われて」いるのかが見えてくるからです。本としては少し古くなりますが、以下のようなものもあります。

知能のミステリー 別冊日経サイエンス128
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なお、本として少し古いとは書きましたが、1999年を古いと決めつけるのは避けた方が賢明です。一般書の中には、もっと古い知見を、何の断りもなく土台としているケースも非常に多くあります。100年前の知見と、つい最近の知見が混ざっているケースも実在します。

「脳科学」へのうさんくささに敏感になるための本

うさんくささへの警戒を高めるだけ高めると、結局何ともつまらないことになる可能性もあります。あなたが神経科学者であれば、その懸念はまったくありませんが、そうであればそもそも、書籍の信頼性で悩む気遣いもないでしょう。

そこでそれなりに面白く警戒を高めるのに、役立つ本をここで紹介します。ただし、上記のムックと以下の本を読み込んだ暁には、「脳科学の本がたくさんある」という風景は消失し、「脳の本」は実は非常に少ない、ないしはとても高くて読みにくい、という光景を目の当たりにすることになるかもしれません。

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▼編集後記:

毎週木曜日には、シゴタノ!火曜日連載でおなじみの堀正岳さんと、マイコミオンラインで対談連載しております。
タイトルは「ライフハック・トーク」。

先週はEVERNOTE、今週はFriendFeedと、非常に旬で濃厚な話題をキャッチアップしているので、ご興味のある方はチェックしてみてください。

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