「ふつうにできる」仕事術

カテゴリー: Journal

記録をとって、改善する。PDCAサイクルをまわす。週次レビューが大事、などなど、仕事において記録を残すことと、残した記録を活用することの重要性はよく説かれます。

しかし記録を活かすということはけっこう難しい。そもそも記録を残すだけでもけっこう面倒くさいものですが、面倒さを乗り越えて記録を残してみても、いざそれをどう活用するかとなると、意外とどうしていいかわからないという人は多いようです。

本書はその、記録を残してどう活用するかについての「手当」が、おそらく類書の中でももっともわかりやすく説明されています。

メモと記録だけでストレスフリーな毎日を続ける仕事術 マニュアル通りじゃないから続けられるタスク管理のコツ26箇条 (impress QuickBooks)
とゆ

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分かりきったことが分かっていない

記録をとると、「驚く」ことが様々あります。驚きというのは常に、疑う余地もないほど正しいことが、実は間違っていたと気づくことと関係がありますが、現実に「記録」してみると、それまで「現実だ」と思っていたことが存在していなかったりして驚くのです。

この本ではまず「作業にかかる時間の記録」を奨めていますが、これはよく言われるように間違います。人間はなぜ、こんなにも作業にかかる時間を間違って把握しているのか、不思議にすら思えるほどです。毎日やっていて、大きく間違っているとは思えないような「想像と現実のズレ」が至る所にあるのです。

時間を記録する前は、そもそも髪を乾かすのにどれくらい時間がかかるなんて気にしたことがありませんでした。起床時間や就寝時間を逆算する必要がある場合は、「だいたい5分くらいだろう」と考えて計算していていました。しかしTaskchuteで記録してみたところ、平均はなんと10分。5分ですんだことは1度もありませんでした。

こういうところはとても面白いと思うのです。私達は少なくとも時間に関する限り、ありもしない「事実」を「記憶して」生きています。その「事実」を元に計算したり、予想したり、あまつさえ「計画を立てて」みたりもします。もちろん確実に間違うわけです。

ここでは5分が10分といった程度の話ですが、それでも2倍です。以前私は、仕事の見積もりが「理想的」すぎてうまく回らない理由と記事を書いたのですが、国家規模の計画に関する時間や予算の「見積もりと現実のズレ」ともなると、2倍はおろか、10倍にもなるのです。

「自由時間」は何時間?

・仕事の場合、昼休み時間を除いた7・5時間
・休日の場合、24時間から睡眠時間をひいた残り時間

著者はびっくりするくらい正直な方なので、こんなふうに「自由時間」を算出していたことを臆面もなく書いてしまっていますが、こんなに自由時間があるわけがありません。仮に24-8だとして、16時間。そこから睡眠時間を除いても、8〜9時間は「自由時間」ということになっていたのでしょう。

しかし、著者はかなりのリアリストです。本を読めばそのことは明らかです。そういう人でも漠然と「仕事がある日でも自由な時間が8時間はあるはず」と思っているのですから、それ以上に楽観的な人もかなりの数に上るはずです。

現実には、仕事がある日は良くて90分が自由時間で、その中でも本当に心おきなく好きなことができるのは、60分もないはずです。そういう人がほとんどのはずです。怖くて計測するのもイヤだということもあるでしょうが、勇気のある方は、自由になる時間から、移動時間、家事、雑務にとられる時間を1日計測してみてください。今の日本でフルタイムで働いている人が、8時間の自由時間を持つなど、あり得ないはずです。

以上から、記録を残してどう活かすのかの、最初のポイントが現れてきます。見積もりを正しくして、「自由時間」を把握すれば、時間を扱うということは「自分の60分」をどうこうするといった話になるのです。

いったい、わずか1時間。人によってはそれすらないというときに、私達は何をするでしょうか? Lineでしょうか? 時間を効率的に使えばいいというものではない? そうかもしれませんが、もともと「なけなしの時間」なのに、そんなに湯水のごとく使えるわけがないのです。その「なけなし」がどれほどひどいものなのかと、その「なけなし」をいったい何に使っているかを知ることこそ「記録を活用する」ということに他ならないのです。

▼編集後記:

というわけで、と言うわけでもありませんが「仕事のスピードを高めるセミナー」を、今週日曜日(!)に行います。

習慣化コンサルタントの古川武士さんと一緒です。かなりの少人数セミナーになりそうですので、この際、突っこんだお話をしようと思います。

ご都合よろしい方はぜひ、色々問題点などをあげつらってやってください。

▼習慣化コンサルティング
http://www.syuukanka.com/contents/seminar.html#seminar01


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